電信電話
電信
18世紀から、火花式、電解式、磁針式など電気の性質を利用した実験的な電信機が作られてきたが、実用化には至らなかった。電気を用いる電信といえるものは、イタリアのヴォルタ(A. Volta)によって「ヴォルタの電池」が発明されたあとに実用化されはじめ、有線電信、無線電信などの発展に繋がっていった。
1825年にイギリスのスタージョン(W. Sturgeon)が高性能電磁石を開発すると、1831年にはアメリカのヘンリー(J. Henry)がその電磁石を用いた電信機を試作した。その後、イギリスではクック(W. F. Cooke)とホイートストン(C. Wheatstone)が1837年に五針電磁式電信機(5本の針の指す角度で、アルファベット1文字に置き換える仕組み)の特許をとり、1.5キロメートルの距離の通信実験を行った。これがグレート・ウェスタン鉄道に採用され、ロンドンのパディントンとウェスト・ドレイトン間 21キロメートルの実用化に成功した。このシステムはその後、二針式、単針式と改良が重ねられ、1852年ごろにはイギリス内において総延長6,500キロメートルの電信路を完成するまでになっていた。
一方、アメリカでは1837年にアメリカのモース(S. F. B. Morse)が電磁式電信機を開発した。文字・数字を点とダッシュからなる符号にして通信する電信機で、後に「モールス信号」として各国に広まる。開発した電信機をアメリカ政府に売り込んだが失敗したため、モースは独自に資金を調達して磁気電信会社(Magnetic Telegraph Company)を創設した。1856年に実業家シブレー(H. Sibley)によりウエスタン・ユニオン電信会社(Western Union Company)が創設されると、モースは同社に招聘され、その後、同社は全米の電信取扱量のほぼ9割を扱うまでに成長した。
電話
電流によって音声を伝える現在の電話方式は1837年アメリカのペイジ(C. G. Page)が原理を発見、これに基づきフランスのブールスール(C. Bourseul)が1854年に音声による可撓振動板の振動を利用する着想を発表した。ドイツのライス(J. P. Reis)は1861年にこの着想による実験(ソーセージの薄い膜に音声を当てて振動させ、その振動を電流の変化に変える)を行い、電話の実現に向けて一歩を進めた。
実用的な電話機の発明は、1876年3月にアメリカ人のベル(A. G. Bell)により成し遂げられた。ベルの電話機は、振動板と棒磁石に絶縁電線を巻いてコイル状にしたものを用い、音波振動にしたがった電流変化をつくりだし、その電流変化を伝えることによって音声を伝えるという方式であった。ベルはこの発明について1876年2月14日に特許申請をしたが、その2時間後にグレー(E. Gray)も特許申請するという、電話の歴史に残る事件があった。ベルは1876年のフィラデルフィア万博に電話を出展し、自らの電話のデモンストレーションを行っている。
蓄音機
発明王として名高いエディソン(T. A. Edison)も電信・電話の研究を進めており、その研究の中から1878年に「フォノグラフ(蓄音機)」を発明した。これは、円筒にスズ箔を巻き付け、針で溝をつけて音を録音・再生する機械である。これは1889年第4回パリ万博での注目すべき出展品であり、エッフェル塔に次ぐ集客数を誇った。
- 参考文献:
鬼塚史朗 『通信の歴史 : 理科電話の実験的考察』 東京図書出版会 2007 <ND511-H61>
田村紀雄 『メディア事典』 KDDクリエイティブ 1996 <DK311-G4>
ニール・ボールドウィン著 ; 椿正晴訳 『エジソン : 20世紀を発明した男』 三田出版会 1997 <GK428-G2>
橋爪紳也監修 『万国びっくり博覧会 : 万博を100倍楽しむ本』 大和書房 2005 <D7-H48>
山川正光 『図説エジソン大百科』 オーム社 1997 <GK428-G3>