船舶

標準画像を開く 画像は1889年第4回パリ万博から、蒸気船の断面図。中央に蒸気機関、船尾(左端)にはスクリュー・プロペラがついている。今日でも、船の推進機といえばほとんどがスクリューである。

18世紀に蒸気機関が発明されると、手漕ぎや帆にかえて船舶の動力源とする試みが始まる。1783年フランスで、ボート両船舷の水掻き車輪(外輪)を蒸気機関で廻し川を15分航行したのが、世界初の蒸気船の実用化といわれる。1807年には、アメリカのハドソン川で外輪式蒸気船が旅客運送を開始し、商業的に成功を収める。

河川や湖で活躍した蒸気船は海上輸送へも進出し、船舶の大型化に伴い、1820年代以降、木製にかわる鉄船の建造も始まる。1840年には大西洋定期航路が開設されるなど、外輪式蒸気船が帆船に代わる輸送手段となっていった。そのころには、推進力を加速させるスクリュー・プロペラの開発も進み、グレート・ブリテン号という、スクリューが推進機の外洋航海用の鉄船(初の近代船舶)の登場をみることとなる。

蒸気機関は広い設置スペースが必要なため、軍艦には不向きとされていたが、鉄製商船やスクリュー・プロペラの普及に伴い、蒸気機関採用が検討され、1845年にイギリス海軍は外輪船とスクリュー船の綱引き実験をして、スクリュー船を採用する。1853年に勃発したクリミア戦争は軍艦の性能向上に拍車をかけ、1859年にフランス海軍が木造の船体を鉄板で防護した軍艦グロワール、翌年にイギリス海軍が世界初の全鉄製船体をもつ軍艦ウォーリアを進水させるなど、装甲艦建造が始まる。

南北戦争では初めて装甲艦同士の戦闘が行われた。軍艦の兵器は、砲以外に魚雷などの装備が加速度的に進み、偵察や商船の護衛を行う巡洋艦が発達していく。

蒸気船のエンジンは、2つのシリンダーで高圧蒸気と低圧蒸気を利用する複合機関から、3つのシリンダーで高圧・中圧・低圧の蒸気を活用する三段膨張式機関へと進化した。その後、パーソンズ(C. A. Parsons)が開発した蒸気タービンエンジン(蒸気で羽根車が回転する)の登場でさらなる進化を遂げる。1897年には、ヴィクトリア女王即位60年記念祭に参加した彼のタービニア号が34ノットで走行し、人々を驚かせた(当時の駆逐艦が27ノット)。蒸気タービンは、すぐに駆逐艦に搭載され、商業用船舶にも採用される。そして、20世紀には外洋航海定期船から軍艦に至るまで有名船舶の主動力源となる。

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帆船Queenの半分模型 蒸気船La champagne号の図 アルゼンチンの巡洋艦 9(nueve) de Julio

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参考文献:

アティリオ・クカーリ, エンツォ・アンジェルッチ共著 ; 堀元美訳 『船の歴史事典』 原書房 1985 <NC51-77>
上野喜一郎 『船の世界史. 上巻』 舵社 1980 <NC51-50>
ブライアン・レイヴァリ著 ; 増田義郎, 武井摩利訳 『船の歴史文化図鑑 : 船と航海の世界史』 悠書館 2007 <NC51-H95>