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令和4年度書誌調整連絡会議報告

2023年2月17日(金曜日)、「令和4年度書誌調整連絡会議」をオンラインで開催しました。この会議は、書誌調整に関する情報の共有や意見交換を目的として、毎年開催しています。

令和4年度は、「ジャンル・形式用語の意義と実践」をテーマとして開催しました。帝塚山学院大学基盤教育機構教授の渡邊隆弘氏から、ジャンル・形式用語の定義と意義、米国議会図書館(以下、LC)における実践をご発表いただいた後、国立国会図書館からジャンル・形式用語の適用について報告しました。続いて、株式会社図書館流通センターの高橋安澄氏から、TRC MARCでのジャンル名の運用をご発表いただきました。出席者による質疑応答・自由討議では、ジャンル・形式用語の意義について確認し、用語の普及や設計・運用、OPACでの活用などの課題について、議論が交わされました。

以下に、会議の内容をご報告します。当日の配布資料も掲載していますので、あわせてご覧ください。

令和4年度書誌調整連絡会議 出席者

伊藤 美歩
株式会社トーハン図書館事業部データベースグループアシスタントマネジャー
善波 敦子
東京都立中央図書館サービス部資料管理課課長代理(目録管理担当)
高橋 安澄
株式会社図書館流通センターデータ部長
田中 梓
国文学研究資料館管理部学術情報課データベース第一係長
橋詰 秋子
実践女子大学短期大学部図書館学課程准教授
村上  遥
国立情報学研究所学術基盤推進部学術コンテンツ課学術コンテンツ整備チーム係長
渡邊 隆弘
帝塚山学院大学基盤教育機構教授

(以上、五十音順)

(国立国会図書館)

木藤 淳子
収集書誌部長
藤本 和彦
収集書誌部副部長
川鍋 道子
収集書誌部司書監兼外国資料課長
諏訪 康子
収集書誌部司書監兼収集・書誌調整課長
大柴 忠彦
収集書誌部主任司書
田中 智子
収集書誌部国内資料課長
幡谷 祐子
収集書誌部逐次刊行物・特別資料課長
山田 牧
収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐
村上 一恵
収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐
小林 久美子
収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐

所属および肩書きは、会議開催当時のものです。

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開会挨拶

木藤淳子(収集書誌部長)

近年の書誌調整連絡会議では、10年近くにわたって「新しい日本目録規則」に関する議論を行い、国立国会図書館ではその成果を踏まえて日本目録規則2018年版(以下、NCR2018)の適用を開始することができた。今回は久々にNCR2018から離れ、「ジャンル・形式用語の意義と実践」をテーマとする。
国立国会図書館では、NCR2018適用開始と同じ令和3年1月に、ジャンル・形式用語の運用を開始した。利用者が資料をより的確に探索できるようになることを目指してジャンル・形式用語を導入したが、日本国内では他の導入事例もあまりないことから、ジャンル・形式用語の定義や適用の効果などの理解がいきわたっているとはいいがたい。
今回の会議で、ジャンル・形式用語の意義を再認識し、それぞれの実務の参考になれば幸いである。活発な意見交換が行われることを期待している。

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ジャンル・形式用語:定義、意義、LCにおける実践

渡邊隆弘(帝塚山学院大学基盤教育機構教授)

1. 「ジャンル」「形式」とは

「形式(form)」

「形式」は、日本十進分類法(以下、NDC)の「形式区分」でおなじみの概念である。NDC新訂10版によると、資料は主題だけでなく形式を持ち、NDCの形式区分は、その性質によって、(1)編集、出版の形式、(2)理論的・哲学的論述あるいは主題に関する調査研究法・指導法などの性質によって二分され、(1)を外形式、(2)を内形式と呼ぶことがある。このうち、本日の文脈で扱うのは「外形式」に相当する概念である。

一方、『ALA図書館情報学辞典』[第3版](1983)によれば、「形式標目(form heading)」には創作の類型(文学、美術など)、著作の形式(短編小説集、人物評集など)、資料の一般的形態(地図、辞書など)が含まれていて、定義する範囲がやや広いように思われる。NDCでいうと外形式に加え、「文学共通区分」まで含まれるような考え方である。

「ジャンル(genre)」

「ジャンル」は、比較的最近になって図書館情報学分野の辞典に登場してきた概念である。『ALA図書館情報学辞典』 第4版(2013)によれば、「ジャンル(genre)」はミステリー、ロマンス、歴史フィクションのような文学のカテゴリーと定義される一方、「ジャンル標目(genre heading)」は形式標目と同義とされていて、「ジャンル」と「形式」の区別はあいまいなようである。「ジャンル」は、主に芸術分野に用いられるものと思われる。

「ジャンル(genre)」と「形式(form)」

Library of Congress Genre/Form Terms (米国議会図書館ジャンル・形式用語表。以下、LCGFT)の初期の文書 (米国議会図書館ホームページへリンク)では、「ジャンル」と「形式」をある程度分けて説明していたが、現在のLCGFTや国立国会図書館ジャンル・形式用語表(NDLGFT)では、両者を特に区別していない。

2. ジャンル・形式用語の統制とその意義

目録と「ジャンル・形式」

主題が「何について(aboutness)」を示すのに対し、ジャンル・形式は、「何であるか(isness)」を示す。
主題だけでなくジャンル・形式も古くから重要性が認識されており、例えば、カッター(Charles Ammi Cutter)の『辞書体目録規則』(初版1876)には、目録の機能の中に「文献の種類」による集中機能の記載がある。

件名標目の一部に「形式標目」が存在

『基本件名標目表』第4版(1999)には、件名標目として「百科事典」や「推理小説」などが存在する。これらは、「百科事典に関する著作」に対してのように主題を表す標目として用いられる一方で、事典や小説そのものに対して、すなわち形式やジャンルを表す標目としても用いられる。
「何について(aboutness)」と「何であるか(isness)」は全く異なる区分原理であり、検索ニーズが重なることもそれほどない。件名標目の一部として形式標目を運用することで、「何について(aboutness)」が埋没してしまう恐れもある。

米国での整備

LCでは、主題とは別にジャンル・形式を扱うために、「器」であるMARCフォーマットの整備が1990年代に進められた。一部の分野についてはLC内で語彙が開発されたものの、他の機関が開発した既存の語彙も適用している状況だった。
2007年以降、これらを統合的に整備し、LCGFTが作成された。

ジャンル・形式用語を統制する意義

「何であるか(isness)」による検索は、利用者にとって自然なものであり、書店の分類などでもしばしば利用される、検索の重要なファクターである。主題とは明確に異なる概念であるため、主題に混じっていてよいものではない。また、主題に対して従属的な性格のものでもない。
また、2000年代後半から、OPACに「ファセットナビゲーション」のインターフェースが登場してきたため、主題から独立させたほうが、扱いやすいものとなる。

3. LCのジャンル・形式用語LCGFT

LCGFT

2007年以降、語彙が分野別に整備され、2009年1月には「動画」、「ラジオ番組」(※後に非音楽録音資料に拡張)から付与が開始された。2020年4月に、「地図資料」、「法律資料」、「一般」、「音楽作品」、「文学作品」、「宗教資料」、「美術・視覚作品」を加えて9分野の語彙の整備が完了し、2021年5月にマニュアルが公開された。
LCGFTは、年1回リスト(PDF)が更新されており、語彙は少しずつ増えている。

LCGFTの特徴

LCGFTは、著作ないし表現形レベルの「何であるか(isness)」に対応している。物理媒体に対応したものではない。RDAやNCR2018の表現形の属性である表現種別や楽譜の形式とやや重なるものや、著作の「ジャンル」にあたるものもある。
多くの用語が横並びで、多くの場合、用語に特に定義はなく、相互排他的な意識は感じられない。また、参照語(USE, UF)が多い。
やや独特の階層構造を持っており、”Informational works” など「目的」によるやや抽象的な用語を上位語とする階層があり、また、上位語が複数存在する重合階層がかなり多い。
事後結合的な設計であり、「細目」は存在しない。過度に複合的な概念の用語も作らず、複数の用語を付与する運用を行っている。これらは、米国議会図書館件名標目表(LCSH)とは異なった方針の設計であり、また、他の語彙システムとの併用も行われている。

LCGFTの普及

中規模学術図書館のWorldCatデータ約85万件(2020)を分析したBitter&Tosaka(2021)[注1] によると、LCGFT付与率は、2007年以降のデータで3割弱、2007年以前のデータでも2割以上となっている。
資料の種類別にみても、言語資料(図書など)の付与率は18.8%であるが、地図資料(65.8%)、楽譜(53.5%)、録音(音楽)(40.8%)といった資料ではかなりの付与率に達している。
米国議会図書館分類表(LCC)の分類別にみると、多く付与されているのは、分類記号M(音楽)44.5% 、P(言語・文学)41.1% 、K(法律)33.1%となっている。
以上のとおり、LCGFTは、かなり多くのデータに付与されており、普及しているようだ。

[注1] Colin Bitter and Yuji Tosaka, On the state of genre/form vocabulary: a quantitative analysis of LCGFT data in WorldCat. Library resources & technical services, 65(2), 2021. pp. 52-64

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国立国会図書館におけるジャンル・形式用語の適用

村上一恵(収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐)

1. 導入までの経緯(2017~2020年)

IFLA「国立図書館におけるジャンル・形式用語の実務に関する調査」

2017年「国立図書館におけるジャンル・形式用語の実務に関する調査」(IFLA主題分析・アクセス分科会)が行われ、各国の国立図書館77館から回答があった。
この調査で、ジャンル・形式用語を使用している、または使用の予定があると回答した75%の館のうち、1種類のジャンル・形式用語表を使用している館は58%で、2種類以上のジャンル・形式用語表を使用している館は42%であった。
回答の中で、利点としては、「検索やファセット機能の強化」、「資料の識別の向上」などユーザエクスペリエンスを豊かにして利便性を向上させる点が多く挙げられた。課題としては、多くの館が「コスト負担(専門家、資金、時間の不足)」を挙げたほか、「ジャンル・形式の判断の難しさ」、「件名標目との混同」などの意見もあった。
この時点では、国立国会図書館ではジャンル・形式用語の導入を検討していなかったため、導入予定はない旨とともに、検索効率化などの利点はあるものの、知識・人的資源の不足が課題となりうることを回答した。

国立国会図書館書誌データ作成・提供計画2018-2020(2018年3月)

書誌データ提供の強化の一環として「漫画」などのジャンル・形式用語の導入を取組事項として掲げ、2021年1月システムのリニューアルを機に導入した。
導入の利点として、分類記号を知らなくても用語で検索ができること、様々な主題の資料を形式でひとまとめにすることができることが挙げられる。課題となっていたコスト負担を最小限にするため、4つの用語から始め、細分化はしないという、小さな一歩から始めることにした。

2. はじめの一歩(2021年)

4つのジャンル・形式用語を和図書から

和図書(国内刊行洋図書を含む)に対して、「議会資料」、「漫画」、「児童図書」、「LLブック」の適用を始めた。用語は、資料の選択に有用なもの、分類記号などから効率的に付与が可能なものを選び、LCGFTなどを参考にした。

国立国会図書館書誌データ作成・提供計画2021-2025(2021年3月)

書誌データ機能の強化の取組事項の中でジャンル・形式用語の典拠データについて、付与対象資料群の拡大と、2020年12月までに作成した書誌データへの遡及入力を掲げている。

3. 用語の追加と適用範囲拡大

和図書・和の非図書資料に対して、新たに「楽譜」の適用を始めた。また、和の映像資料・電子資料に対して、新たに「アニメーション」「コンピュータゲーム」の適用を始めた。いずれのジャンル・形式用語も国内刊行洋資料も付与対象としている。
和図書に対して適用していた「議会資料」「漫画」について、新たに和の逐次刊行物(国内刊行洋逐次刊行物を含む)についても適用を始めた。
これらの適用によって、資料群が分かれている「楽譜」や、これまでCDやDVDといった媒体ごとにNDLC分類が分かれている「アニメーション」「コンピュータゲーム」について、ジャンル・形式用語からまとめて検索できるようになった。

「国立国会図書館ジャンル・形式用語作業指針 」(PDF: 372KB)(インターネット資料収集保存事業(WARP)へリンク)を公開し、同指針内に「国立国会図書館ジャンル・形式用語表(NDLGFT)」を掲載している。さらに、2023年に入ってから、和の地図資料・非図書資料への「住宅地図」の適用、和逐次刊行物への「児童雑誌」の適用を開始している。

4. ジャンル・形式用語に関係する国立国会図書館のサービス

国立国会図書館典拠データ検索・提供サービスWeb NDL Authoritiesでは、ジャンル・形式用語典拠が検索可能である。典拠の詳細情報画面から国立国会図書館オンラインにリンクしており、その典拠データに紐づく書誌データを確認可能である。
対応するLCGFTがある場合は該当の典拠データから米国議会図書館へのリンクが利用できる。また、ジャンル・形式用語典拠全件がダウンロードできる一括ダウンロード用ファイルも掲載している。

国立国会図書館オンラインでは、書誌詳細画面からジャンル・形式用語典拠のWeb NDL Authoritiesの詳細情報画面へ遷移できる。また、国立国会図書館サーチでは、ジャンル・形式用語「LLブック」が障害者向け資料検索の検索対象に含まれている(ただし、詳細画面にジャンル・形式用語は表示されない)。

5. 遡及入力

2020年12月までに作成した書誌へNDLC、NDC分類などを元に機械的にジャンル・形式用語を遡及入力した。和図書約25万件に対して「漫画」を、和図書約23万8千件に対して「児童図書」を、和図書28件に対して「LLブック」を入力した。

2023年3月までに、和図書約3万6千件に対して「議会資料」を、和逐次刊行物約3,500件に対して「議会資料」、「漫画」、「児童雑誌」を、また、地図資料約8万1千件に対して「住宅地図」を遡及入力予定である。
2023年4月以降も和図書・和の非図書資料に対して「楽譜」を、和の電子資料に対して「住宅地図」を順次、遡及入力予定である。

6. 今後の展開(2024年~)

新たな資料群への適用拡大、新システムに向けて

今までは和の資料の範囲で適用対象資料群を広げてきたが、外国刊行洋図書などへの適用の拡大に向けて検討を進めている。ジャンル・形式用語の種類を増やすことも、今後の検討課題である。
また、2024年1月サービス開始予定の国立国会図書館オンラインと国立国会図書館サーチを統合した新しいサービスシステムでも、ジャンル・形式用語を有効に活用した検索ができるよう検討中である。
ジャンル・形式用語の利点「ユーザエクスペリエンスを豊かにすることができる」に立ち返り、ジャンル・形式用語の導入および拡充に取り組むとともに、ジャンル・形式用語そのものの周知に努め、利用してもらえるよう働きかけていきたい。

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TRC MARCにおけるジャンル名の運用

高橋安澄(株式会社図書館流通センターデータ部長)

1. TRC MARCのジャンル名・資料形式

TRC MARCでは、和書・電子和書に対して「資料形式」「ジャンル名(図書詳細)」、雑誌に対して「ジャンル名(雑誌)」、録音資料・電子録音資料に対して「ジャンル名(録音)」、映像資料・電子映像資料に対して「ジャンル名(映像)」という形で、資料種ごとにジャンルを設定し、統制語彙ではなくコード化情報として入力している。本日は、和書の「資料形式」および「ジャンル名(図書詳細)」について紹介する。

2. 資料形式

資料形式

TRC MARCでは「資料形式」の付与を、ジャンル名の付与開始以前から行っており、和書・電子和書に対しては27の「資料形式」を設定している。
近年では変化がみられるが、TRC MARCを利用している公共図書館では、以前は漫画などを収集対象外としていた図書館が多かったため、当初はそれらの資料の識別に利用したいという需要から、「漫画」は1995年から、「ゲーム攻略本」は2000年から入力を開始した。2005年から、ファセット検索などへの活用を視野に、その他の用語の入力を開始した。これらの用語は、利用館からの要望を集約する形で設定したため、形式を示す用語と内容を示す用語が混じっている。
これによって、NDCによる分類では記号が分かれることのある漫画や、様々な分野で活躍した人の伝記・手記、テーマごとのブックガイド・書評集、資格・検定・職業ガイドなどについて、分類・件名を横断して特定の形式・内容を持つ資料を検索することができるようになった。

資料形式と表現種別

NCR2018適用開始に伴い、2022年から「表現種別」の入力を開始した。TRC MARCの「資料形式」は、NCR2018以前に設定したため、「楽譜」など、「表現種別」と語彙が一部重複している場合がある。「表現種別」と「資料形式」の対応関係を整理した上で、重複している場合も含めて、「資料形式」も継続して付与・提供している。

3. ジャンル名(図書詳細)

「ジャンル名(図書詳細)」は、和書・電子和書に対して付与している。2012年から入力を開始し、2022年から児童書・絵本のジャンルを拡充し、現在、新刊の和書・電子和書全件に付与している。
「文学」、「伝記・手記」、「法律」、「生活・実用」などの25の大ジャンルのもとに、最大4階層で展開しており、合計で1,163ジャンルを設定している。階層例としては、「文学>小説>外国の小説>ラテンアメリカ」、「生活・実用>住まい・インテリア>掃除・収納」などがある。

分類で対応できない検索ニーズに対して:小説のジャンル別検索が可能に

ジャンル名導入の第一のニーズは、小説のジャンル別検索を可能にすることであった。ジャンル「小説」の下位階層として設定した「SF」、「ファンタジー」、「推理・ミステリー」、「ホラー・怪談」、「歴史・時代小説」、「企業・経済小説」を適用することで、小説のジャンル別検索が可能になっている。
また、ジャンル名は、1冊に対して複数のジャンルを付与するといった、分類よりも柔軟な運用をしており、NDCを知らない利用者が書店の棚分類のような感覚でたどれるようにしている。NDCでは分類記号ごとに分かれてしまうような資料を、オンライン書店やブックガイドを参考に1つのジャンルにまとめられるよう設定した。

児童書の検索ニーズへの対応:読み物

TRC MARCは児童書のレファレンスサービスに役立つ項目に力を入れている。児童書のうち読み物について、ジャンル「物語・おはなし」の下位階層として、「ファンタジー・SF」、「推理・ミステリー」、「冒険・探検物語」などを設定している。「ファンタジー・SF」については、2022年からさらに下位の階層として「魔法」、「宇宙」など、より細かいジャンルを新設し、読み物の検索ニーズに対応している。これらは、レファレンスの需要とともに、子どもが自分で探せるようにも設定している。

児童書の検索ニーズへの対応:絵本

児童書のうち絵本について、ジャンル「絵本」の下位階層として、「季節・行事の絵本」などを設定している。「季節・行事の絵本」については、2022年からさらに下位の階層として「春」、「夏」、「秋」、「冬」を新設し、絵本の検索ニーズに対応している。絵本は、年齢層の低い子どもが自分で探すというよりは、大人が利用することを考えて設定している。

なお、2022年から児童書の読み物・絵本の内容に対する統制語彙「読み物キーワード」の付与も開始している。

児童書の検索ニーズへの対応:ノンフィクション

児童書のうちノンフィクションについて、ジャンル「児童書ノンフィクション」の下位階層として、教科のまとまりごとに「社会科」、「国語・日本語」、「理科・自然科学」などを設定している。「理科・自然科学」については、さらに下位の階層として「科学・実験」、「宇宙・地球・気象」、「恐竜・化石」などを設定している。

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質疑応答・自由討議

1. 全般・普及について

  • ジャンル・形式用語は、以前から利用者ニーズがあり重要性が認識されていたものの、近年まで手薄だった分野である。近年のOPACでファセットによる絞り込み機能が一般化したため、件名から切り離した語彙として活用され始めたものと理解している。LCGFTの統制語彙については、普及も含めてある程度成功したという評価がされているようだ。日本でも同様に評価されるよう、今後のジャンル・形式用語の普及、発展を期待している。(研究者)
  • NDLのジャンル・形式用語は、LCGFTよりも粒度が大きい分、「漫画」などの特定の資料群を抜き出す機能があるように思える。今まで集約することが難しかった「漫画」についてNDLのジャンル・形式用語が付与されたことで、研究者としては大変便利になった。網羅性が問題になると思うので、今後進めていく予定の遡及入力や洋図書への適用拡大なども期待したい。また、そもそもジャンル・形式用語自体が知られていないため、周知に課題がある。例えば「漫画」であれば、図書館情報学のほか、漫画に関連する分野の学会等で周知するのも一案である。(研究者)
    • 昨年度からNDLホームページやTwitterなどで典拠データを知ってもらう取組を進めている。ジャンル・形式用語についても、同様に周知していきたい。また、一般利用者だけでなく、研究者に対しても周知していきたい。(国立国会図書館)

2. 用語の設計・運用について

  • TRC MARC「ジャンル名」について、特に児童書のジャンル分けはよく考えられており、実際のニーズに応えられる大変有効な語彙だと思う。どのような体制・仕組みで設定したのか。(研究者)
    • 児童書のジャンルは、1980年代から、学校の先生方が作られてきた児童書ノンフィクション向けの件名(学習件名)と、フィクション用件名を引き継いで維持してきたものがベースとなっている。フィクション用件名はMARCとは別のデータベースとして運用してきたが、2022年に、MARC上のジャンル名・学習件名と、フィクション用件名を統合し、「ジャンル名」と「読み物キーワード」という形で再整理してMARCでの提供を始めた。従来のフィクション用件名は1980年代という古い時代に作られた教育的観点の強いものだったため、時代に合わせて子どもが本当に必要とするものを表すジャンル分けになるよう、利用館からの意見や児童書のブックガイドなどを参照しながら用語を設定している(TRC)
  • 国立国会図書館で、文学作品のジャンルなど判断が難しいものに踏み込むことについて、客観性の担保が難しいなどの議論があったかどうか伺いたい。(研究者)
    • 文学作品のジャンル・形式用語については、まず件名の形式細目との関係整理が必要と考え、ペンディングとしている。現在の用語を安定的に運用できるようになってから検討していきたい。(国立国会図書館)
  • TRC MARC「ジャンル名」については、「何について(aboutness)」を含む新たな分類を作り出しているというような、かなり斬新なもののように思えた。特に文学作品のジャンルについて、客観的に判断することが難しそうに思えたがいかがか。(研究者)
    • 確かに、文学作品のジャンルは迷うことが多い。勝手には判断できないため、文学作品のジャンルについては、図書の帯やシリーズ、あとがきなどから明確に判断できるものだけにつけている。利用者からは「泣ける本」「恋愛もの」などのニーズも多いが、判断できないジャンルは設定していない。(TRC)
  • 国文学研究資料館のデータベースでは、岩波書店から出版された『国書総目録』の分類語(「物語」など)を基本的に当時のまま引き継いでおり、類義語・同義語といったデータベースとしての構造化は出来ていないのが現状である。これから利用者を国文学の研究者以外の一般的な利用者に広げていく上で見直しが必要になる点かもしれない。(研究機関)
  • 実務として、ジャンル・形式用語の付与にどれくらい手間や時間をかけているのか。(公共図書館)
    • 作業の最初に大まかな形式で資料を分け、「漫画」と判断したらジャンル・形式用語があらかじめ入力されている「漫画」用のテンプレートをあてはめ、省力化している。(国立国会図書館)
    • 分類・件名付与と同時に主題分析の一環として付与するためあまり悩まないが、ジャンルについては、1,000以上あるため、入力画面の仕組みとして、分類などの一定の条件を元に候補となるジャンルを提案する機能を設けている。(TRC)
  • LCの実績を見ると、1資料に複数のLCGFTを付与している。フィクションのジャンルなど、客観性の担保が難しいものでもあえて用語を作成し、厳密にはできないことを前提に、いわば「軽やかに」運用しているような印象を受けた。(研究者)
    • 実際に作業をしているとルールが重くなりがちである。(トーハン)
    • 複数名が作業に携わるため、ブレが生じないようにという考えがあり、実際には「軽やか」な運用は難しい面がある。(国立国会図書館)

3. ファセット機能などOPACでの活用について

  • TRC MARC「ジャンル名」について、かなり細かいジャンル分けをしており、これをうまく使えば、OPACの機能向上につながり、「ジャンル名」の有用性を利用者に説得力をもって伝えられると思う。このジャンル分けを実際にうまく使った検索の実装例を教えていただきたい。(研究者)
    • いくつかのパッケージシステムでジャンル名を組み込んでいるところはある。ジャンルを順々に辿っていける機能が実装されているOPACや書誌詳細で表示しているOPACがある。(TRC)
  • 当館OPACでは、ジャンル・形式用語はまだ実装していないが、利用者目線では、資料の探索が常に課題であるため、今後検討していきたい。(公共図書館)
  • NACSIS-CATでも資料種別を入れるコード自体はあるが、ジャンル・形式用語の定義「何であるか(isness)」とは異なるものという認識。「地図」「楽譜」など一部定義が共通するものがあるため、今後、ジャンル・形式用語を取り入れるときには、その点も検討していくとよいかもしれない。(研究機関)
  • TRCのジャンル名の設定は、利用者に寄り添っていてとても良いものと思った一方で、ジャンル名の役割はファセット機能の提供にとどまらないように思った。例えば音楽大学や教育大学などの様々な専門図書館で、音楽や絵画に関する資料を収集するときにも、こうした情報は役に立つだろう。(研究機関)
  • 検索の横断可能性を広げるという意味では、統制語彙としてのジャンル・形式用語が必要なのではないか。TRCの利用者に寄り添ったジャンルの語彙やLCGFTそれぞれを、NDLGFTの異形アクセス・ポイントという形でいかに一つの軸に集約していくかというのが今後の課題になりうる。(研究機関)
    • 実際には、異なる統制語彙を並列して運用していくことになりそうである。ただし、同じような用語が複数ついていると混乱しそうなため、統合するとまでは言えないが、異なる用語同士(NDLGFT、LCGFT、TRCジャンル名)を一つの軸にマッピングなどしていくと利用する側としては使いやすいと思った。(研究者)
  • ジャンル・形式用語を統制語彙として利用するには、多くのデータ作成者が一つのジャンルを同じ概念で使えるようにならなくてはならず大変な面がある。ただ、ファセット自体はもう少し「軽やか」な世界になってもよいのではないか。語彙間の関連性をマッピングしてシステム内部で持つことで、緩やかなファセットを提供できれば、より人間的なレコメンドとして機能して面白いかもしれない。(研究機関)

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