第5章 西洋数学の導入

コラム 対数表(難易度2)

対数表はJ. Napier(1550-1617)が作り上げた数表で、掛け算を足し算に変えてしまうための表です。

ax×ay=ax+y ですが、ax=p, ay=q である時、逆にpにxを対応させる関数logaをp↦x (xは ax=pとなるx)と考えます。logap=x,logaq=yと表わすことができ、loga(pq)=z となるとすればaz=pq=axay=ax+yですので、 z=x+yです。つまり、loga(pq)=logap+logaqが成り立つので、あらゆる数mについてlogamをあらかじめ計算して表にしておくと、二つの数mとnの掛け算は表でlogamとloganの値を見つけて足し算をし、その結果を表の中にさがすとm×nの結果がわかるはずです。このアイデアは桁数の大きい計算が必要となる、航海術や天文計算を簡単に行うため考えだされました。10x=pの逆関数log10p=xのことをpの常用対数と呼び、pに対応するxの値を表にしたものを常用対数表と呼びます。

101=10、102=100、103=1,000、104=10,000ですので、log1010=1, log10100=2,log101,000=3, log1010,000=4となります。常用対数表を使って計算をしてみましょう。1,034×2,213を計算したい場合、log101,034=log10(1.034×103)=3+log101.034=3+0.014520539=3.014520539 、log102,213 =log10(2.213×103)=3+log102.213=3+0.344981414=3.344981414を表から見つけ、このふたつの数を足して3.014520539+3.344981414=6.3595501953 を得ます。次にlog10x=0.359501953となるxを表の中で探すとx=2.288242が見つかります。従って1,034×2,213の答えは106×2.2288242=2,288,242となります。

この方法が便利であるのは1,034×2,213×3,256×4,378のように掛け算を何度も繰り返す計算がlog101,034+log102,213+log103,256+log104,378という足し算に置き換わることです。特に桁数の多い三角関数の値同士の掛け算が必要になる天文計算や測量術での利用のため三角関数の対数表x↦log10sin x も作られました。この表を使うと、球面三角法でよく出てくるsinα×sinβ×sinγのような計算を足し算に変えることができます。

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