世界初の本格的な鉄道の開業は、1830年。当時、産業革命によって一躍隆盛していたイギリスに端を発します。日本初の鉄道が開業するのは、それから42年後のこと。
当時世界を変えつつあった多くの技術革新、その代表の一つであり、近代文明の象徴ともされる鉄道。まず、日本における鉄道開業までの道のりをたどります。
江戸時代後期から末期には、オランダからの書物や漂流者の記録を通じて、鉄道に関する情報が伝わる機会がありました。
※中浜万次郎(ジョン万次郎)・浜田彦蔵の解説は電子展示会「近代日本人の肖像」でご覧いただけます。
ペリーが嘉永7(1854)年に再来航した際に、蒸気機関車の模型一式が献上され、横浜で運転されたという記録が残っています。これこそ、日本人が「鉄道とは何なのか」を具体的に知るきっかけとなった出来事とされています。
明治政府は、経済的基盤を強化する殖産興業政策の一環として鉄道の建設に着手します。
その特徴は、欧米諸国の資本や経営によらず、欧米の持つ鉄道の技術・知識を学びながら、あくまで自国でその建設を管轄しようとした点にあります。明治2(1869)年、政府は、東京~京都~神戸間をはじめその他の鉄道の建設を正式に決定しました。
モレルの建言により設置された工部省に鉄道寮が置かれると、ロンドンで鉄道技術を学んだ井上勝が抜擢され、鉄道頭としてその設計に携わることになりました。
ちなみに、鉄道開業前には、想像で様々な錦絵が描かれており、鉄道への期待の大きさがうかがえます。
新橋~横浜間の一部線路は、用地取得の必要のない海上に築堤を造成し軌道を敷設するという大胆な手段がとられました。政府内で鉄道建設に反対した兵部省が管轄する軍用地や薩摩藩邸を避けなければならないという背景があったと考えられています。明治5(1872)年6月12日には、品川~横浜間が全線開業の4カ月前に仮開業しました。
こうして、明治5(1872)年10月14日、新橋~横浜間で鉄道が開業したのです。
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