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第17回科学技術情報整備審議会議事録
- 日時:
- 令和6年8月9日(金)午前9時30分から正午まで
- 場所:
- 東京本館総務課第一会議室(ウェブ会議サービスを用いたハイブリッド開催)
- 出席者:
- 科学技術情報整備審議会委員・専門委員 15名、陪席 1名
(委員)安浦寛人委員長、竹内比呂也委員長代理、浅川智恵子委員、池谷のぞみ委員、大隅典子委員、黒橋禎夫委員、小口正範委員、戸山芳昭委員、野末俊比古委員、林隆之委員、松浦重和委員、村山泰啓委員、渡部泰明委員、池内有為専門委員、生貝直人専門委員
(陪席)中島律子科学技術振興機構部長(橋本和仁委員の代理)
館側出席者 16名
館長、副館長
(幹事)総務部長、調査及び立法考査局長、収集書誌部長、利用者サービス部長、電子情報部長、関西館長、国際子ども図書館長
(陪席)総務部企画課長、収集書誌部主任司書、利用者サービス部副部長、利用者サービス部司書監サービス企画課長兼務、電子情報部副部長
(事務局)利用者サービス部科学技術・経済課長、電子情報部電子情報企画課長
- 会議次第:
-
- 開会
- 国立国会図書館長挨拶
- 新委員及び専門委員紹介
- 新幹事紹介
- 委員長選任
- 委員長代理指名
- 議題
- (1)第六期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定に向けた基本方針検討部会の設置について
- 報告及び懇談
- (1)第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画の進捗報告
- (2)懇談
委員からの話題提供
- ① 国文学研究資料館のデジタル戦略
- ② 図書館における情報リテラシー(教育)をめぐるいくつかの論点
- その他
- 閉会
- 配付資料:
-
(参考資料)
- 議事録:
- 1. 開会
- 大場利用者サービス部長:
- 1名の方がオンラインでまだ接続できておりませんが、先に始めていて欲しいという御連絡をいただきましたので、ただいまから、第17回科学技術情報整備審議会を開催いたします。
この度は、委員あるいは専門委員への御就任を御快諾いただきありがとうございました。また、お忙しいところ当審議会に御出席くださいましてありがとうございます。
現在、委員長が空席となっておりますので、委員長選任までの間、暫定的に幹事である私、利用者サービス部長の大場が進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は14名の委員中、13名の委員が御出席いただいており、定足数は満たされております。
まずは事務局からお知らせがあります。
- 福林科学技術・経済課長:
- 東京本館の会場での御出席は、池谷委員、黒橋委員、小口委員、竹内委員、野末委員、林委員、松浦委員、村山委員、安浦委員、渡部委員の10名です。オンラインでの御出席は、浅川委員、大隅委員、戸山委員の3名です。御欠席は橋本委員で、橋本委員の代わりに科学技術振興機構(以下「JST」)の中島律子部長にオンラインで御陪席いただいております。また、会場で池内専門委員、オンラインで生貝専門委員に御出席いただく予定でしたが、生貝専門委員はまだ接続できていない状況です。大向専門委員は御欠席です。
本日、当館からは、幹事の他に倉田館長、山地副館長、審議会事務局等の職員も同席しております。新委員及び専門委員並びに新幹事につきましては、後ほど御紹介いたします。今回は、対面及びオンラインのハイブリッド開催とさせていただいております。オンライン参加の委員の皆様におかれましては、会議中、常時カメラをオンにしてくださるようお願いいたします。マイクは御発言の時以外はミュートにしてください。御発言は、委員長からの指名を受け、会場参加の委員の皆様におかれましては、お手元のマイクのスイッチを入れてお話しください。オンライン参加の委員の皆様は、マイクのミュートを解除してからお願いいたします。なお、御発言を求められる場合は、お名前を挙げて御発声して、委員長にお知らせください。
- 2. 国立国会図書館長挨拶
- 大場利用者サービス部長:
- 開会に当たり、館長の倉田より御挨拶申し上げます。
- 倉田国立国会図書館長:
- 国立国会図書館長の倉田でございます。この4月1日付けで館長を拝命いたしました。どうぞ御指導、御鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただきまして誠にありがとうございます。日頃より、当館の活動に御理解、御協力いただきますこと、心より御礼申し上げます。私自身のことを申し上げますと、実はこの審議会に14年間にわたりまして委員として参加させていただいていたという経験がございます。この度、御提言を受けさせていただくという立場になり、大変緊張しているとともに感慨深いものを感じております。審議会での御意見を、どのように実現していくのかにつきまして、精一杯取り組んでまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
さて、現況でございますが、審議会からいただきました御提言、「『人と機械が読む時代』の知識基盤の確立に向けて」を踏まえまして、当館が策定いたしました、第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画が、今年度折り返し地点を過ぎまして、実施4年目となっております。この間、委員の先生方の御指導、御支援の下、情報資源の拡充とサービスの改善のために様々な取組を進めてきております。詳しくはこの後御報告させていただきたいと思います。
本日は、渡部委員、それから新たに委員に加わっていただきました野末委員に、それぞれ国文学研究資料館のデジタル戦略、図書館における情報リテラシー教育について、話題の提供をお願いしております。渡部委員、野末委員には、大変御多忙のところ御準備いただきまして誠にありがとうございます。
今年度から、新たな基本計画に向けて部会を設置していただき、来年度に提言の策定をお願いしたいと考えております。先生方におかれましては、御提供いただきました話題も含め、本日、活発な御議論を賜れば幸いでございます。この機会に、当館の取組に対して忌憚ない御意見をいただきたく存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
- 3. 新委員及び専門委員紹介
- 大場利用者サービス部長:
- それでは、会議次第の3に移ります。委員名簿を資料1として配布しておりますので御覧ください。新たに御就任くださった委員を御紹介いたします。
今期から、慶應義塾大学の池谷のぞみ先生、青山学院大学の野末俊比古先生、政策研究大学院大学の林隆之先生、文部科学省大臣官房の松浦重和審議官が新たに委員に御就任くださいました。また、文教大学の池内有為先生、一橋大学大学院の生貝直人先生、東京大学大学院の大向一輝先生が、新たに専門委員に御就任くださいました。御新任の委員には、一言ずつお言葉を頂戴したいと存じます。まず、池谷委員お願いいたします。
- 池谷委員:
- 池谷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。きちんと務まるよう頑張ってまいります。図書館情報学の領域の中で、特に人の観点からいろいろなことを研究しております。
- 大場利用者サービス部長:
- ありがとうございます。続きまして、野末委員、お願いいたします。
- 野末委員:
- 野末でございます。よろしくお願いいたします。図書館情報学と教育情報学を専門としております。少しでも貢献できるようにと思っております。
- 大場利用者サービス部長:
- ありがとうございます。続きまして、林委員、お願いいたします。
- 林委員:
- 林でございます。政策研究大学院大学で、プログラムディレクターとして科学技術イノベーション政策の研究をする教育プログラムを行っています。また、政策研究大学院大学に異動する前は学位授与機構で大学評価を担っていました。専門は科学技術イノベーション政策と研究や教育の評価です。よろしくお願いいたします。
- 大場利用者サービス部長:
- ありがとうございます。続きまして、松浦委員、お願いいたします。
- 松浦委員:
- 文部科学省大臣官房審議官の松浦です。普段は審議会の事務局側で対応しているので、委員としての参加に非常に緊張しております。文科省、特に研究振興局は、オープンサイエンスや生成AIなどの観点から情報基盤に関わっておりますので、積極的に議論に参加したいと思います。よろしくお願いします。
- 大場利用者サービス部長:
- ありがとうございます。続きまして、池内専門委員、お願いいたします。
- 池内専門委員:
- 文教大学の池内と申します。専門は図書館情報学で、図書館の司書課程を担当しております。研究データの共有を中心に、オープンサイエンスの研究を進めております。初めての機会ですが、御指導いただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
- 大場利用者サービス部長:
- ありがとうございました。新任の委員の皆様の御挨拶は以上とさせていただきます。
- 4. 新幹事紹介
- 大場利用者サービス部長:
- 当館内の人事異動に伴いまして、幹事に異動がありましたので御報告をいたします。諏訪関西館長、上保国際子ども図書館長が、前回の審議会以降に新たに幹事に任命されました。木藤総務部長、伊藤電子情報部長、そして私大場は立場を変えての引き続きの参画となります。また、本年1月、副館長に山地康志が就任いたしました。
- 5. 委員長選任
- 大場利用者サービス部長:
- 会議次第の5に移ります。参考資料1の科学技術情報整備審議会規則第2条第5項の規定に従って、委員長を、委員の皆様の互選により選任していただきたいと存じます。どなたか御推薦いただけませんでしょうか。
- 黒橋委員:
- 国立情報学研究所(以下「NII」)の黒橋でございます。僭越ですが、九州大学名誉教授の安浦先生には、前回までも委員長をお引き受けいただいておりましたけれども、今回もお務めいただければ大変ありがたいのではないかと考えております。
- 大場利用者サービス部長:
- ありがとうございます。ただいま、黒橋委員から安浦委員を委員長にと御推薦いただきました。委員の皆様の御異議がないようでしたら、安浦委員に委員長をお願いしたいと存じますがいかがでしょうか。
異議なしと認めますので、当審議会の委員長は、安浦委員にお願いしたいと思います。安浦委員長には、これ以降の議事を進めていただきます。安浦委員長、よろしくお願いいたします。
- 安浦委員長:
- 前回に引き続きまして、委員長に御指名いただきましたので、委員長をやらせていただきます。安浦でございます。今期もよろしくお願い申し上げます。
国立国会図書館(以下「NDL」)には、当委員会の所管事項に一番絡んでいる、電子化、デジタル化、そういった御努力を、引き続き御経験豊富な倉田新館長のもとでお続けいただけると信じております。当委員会といたしまして、それをサポートしていくという考え方で進めていきたいと思いますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。急激な情報化の進展、技術の発展により、「出版」や「図書」といった用語の定義がかなり変わってきている時代かと思います。様々な「メディア」と呼ばれるものが、今まで「図書」と呼ばれていたものと区別がつかなくなってきている、そういう時代でもあります。また一方で、政府全体でお取組いただいているオープンサイエンスの視点から、昔なら図書館に行かないと情報に接することができなかったけれども、ネットワークを通じて誰でもどこでもいろいろな情報に触れることができ、サイエンスの進展の恩恵を受けられるようになってきています。その中で、NDLが果たす役割もますます重要になってくるとともに、どのように対応していくかということがこの委員会の最も重要な議論のポイントかと思います。先生方の様々なお立場からの御意見を頂戴いたしまして、よりよいNDLの電子化、デジタル化の在り方について議論させていただければと思います。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
- 6. 委員長代理指名
- 安浦委員長:
- それでは、会議次第の6に移ります。審議会規則第2条第7項の規定に従いまして、委員長が不在の場合に、委員長に代わって審議会を運営するために、竹内委員に委員長代理をお願いしたいと思いますが、御異議ございませんでしょうか。
異議なしと認めますので、委員長代理は竹内委員に決定いたしました。竹内先生、よろしくお願いいたします。
- 7. 議題
- 安浦委員長:
- 続いて議事次第の7に移ります。NDLが第六期の科学技術情報整備基本計画を策定するために提言を出すことが、この審議会としてよろしいのではないかと考えています。基本方針を検討し、素案を作成するために基本方針検討部会を設置することにつきまして、委員の皆様にお諮りしたいという趣旨です。同部会の設置につきまして、まず事務局から御説明をお願いいたします。
- 福林科学技術・経済課長:
- ((1) 第六期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定に向けた基本方針検討部会の設置について、資料2に基づき説明)
- 安浦委員長:
- ただいまの説明につきまして、何か特に御発言などはございますか。各委員の皆様方には後で個別の御意見を伺う時間を用意しておりますが、ここで特に御発言があればお受けします。
部会での検討事項の内容などにつきましては、最後の懇談の中で引き続き議論させていただきたいと思います。部会の設置自体につきましては、特に御反対ないということで決定させていただきます。
続きまして、部会員の指名に移りたいと思います。図書館情報学、デジタルヒューマニティーズ、オープンサイエンス、法制度といった分野から、野末委員、池内専門委員、生貝専門委員、大向専門委員にお願いしたいと考えております。また、部会長につきましては、本審議会の委員である野末委員にお願いしたいと思います。併せて御審議をお願いしたいと思いますが、どなたか御意見ございますでしょうか。
特に御意見はございませんでしたので、野末部会長から一言御挨拶をお願いいたします。
- 野末委員:
- 野末でございます。御指名いただきましたので、審議会の委員の先生方の御意見・御議論を踏まえて、素案の取りまとめに努めたいと思います。よろしくお願いいたします。
- 安浦委員長:
- それでは、野末部会長、それから、池内専門委員、生貝専門委員、大向専門委員の3名の専門委員の方々は、部会員としてよろしくお願い申し上げます。大変な仕事になるかと思いますが、結果を来年の審議会に出していただくということで、原案の作成をよろしくお願いいたします。
- 安浦委員長:
- 今、生貝専門委員が接続されたので、一言御挨拶いただきたいと思います。
- 生貝専門委員:
- 一橋大学の生貝でございます。ログインに手間取りまして大変失礼いたしました。専門委員として参加させていただきます。微力ながらどうぞよろしくお願いいたします。
- 8. 報告及び懇談
- 安浦委員長:
- 続きまして、報告及び懇談に移りたいと思います。科学技術情報整備基本計画の進捗状況について事務局から報告していただいた後に、報告への質問をまとめて受け付けます。懇談は、事務局の報告と質問が終わった後に行います。本日の懇談では野末委員、渡部委員に話題提供をしていただく予定です。
- 福林科学技術・経済課長:
- ((1)第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画の進捗報告について、資料3-1に基づき説明)
- 安浦委員長:
- 非常にたくさんの仕事をまとめてお話しいただきましたけれど、御質問がございましたらお願いいたします。竹内委員、どうぞ。
- 竹内委員長代理:
- 大変詳細な説明をありがとうございました。資料3-1の6ページの⑤について伺いたいと思います。図書館資料の複写物の送信サービスは、コロナ禍のもと図書館への来館ができないということを前提に、補償金に基づく制度としてスタートしています。法的な環境は完全に整っているというのが私の理解なのですが、補償金の管理団体の都合で、このサービスが実施されていないことは非常に大きな問題ではないかと考えています。補償金をうまく集められないという状況かと思うのですが、国民の利益を考えれば、迅速に対応できるよう積極的に働きかけていただく必要があるのではないでしょうか。場合によっては、無償でもやれというくらいの強い主張はしていただいても良いのではないかと思います。
- 大場利用者サービス部長:
- 御意見ありがとうございます。確かに制度的な整備は終わっており、補償金を受け取る団体の方の準備が整わないため開始が遅れているという状況は、我々も問題が大きいと考えております。NDLだけではなく、図書館界全体の課題でもありますので、日本図書館協会等、関連の団体と協力しながら働きかけをしていきたいと思います。できるだけ早く開始できるよう努めたいと思います。
- 安浦委員長:
- 資料3-1の2ページに約416万点のデジタル化資料を提供しているとありますが、インターネット公開した資料はどのくらい閲覧されているのでしょうか。インターネット公開された資料が、利用者側からは一番利用のハードルが低いと思われますが。
- 伊東電子情報企画課長:
- 少し古い統計ですが令和4年度の年報から、インターネットからのアクセスが5872万9,000件、図書館等の送信先からのアクセスが53万8,000件、個人の送信先からのアクセスが482万3,000件ほどとなっています。館内閲覧のみの資料につきましては、278万2,000件ほどです。
- 安浦委員長:
- その時点では、デジタル化されていた資料は416万点より少なかったということですね。
- 伊東電子情報企画課長:
- 少ない数でした。これより新しい値は、今手元にございませんので、また後日回答させていただければと存じます。
-
(補足)
デジタル化資料に対するアクセス数の最新の値(令和5年4月から令和6年3月までの1年間のアクセス件数)では、インターネットからは約1,264万件、図書館等の送信先からは約46万件、個人の送信先からは約1,050万件、NDL内からは約228万件となっています。
前年度の数値は、席上で申し上げた令和4年度の統計値と大きく変動しております。これは令和4年12月の国立国会図書館デジタルコレクションのシステムリニューアルに伴い、アクセス数のカウント方法が変更されたことによるものです。
- 安浦委員長:
- 他に、どういうことでも構いませんが、御質問ございますか。浅川委員、どうぞ。
- 浅川委員:
- みなサーチは現在何人くらい利用者登録されているでしょうか。
また、去年の審議会でみなサーチとサピエ図書館の利用者登録情報の連携を要望しました。サピエ図書館の利用者はID発行の時点で視覚障害などのリーディング・ディスアビリティであるということが証明されていますが、昨日みなサーチに登録しようとすると、また手帳のコピーなどを送信し住所等を全て入力しなければいけない、という場面が発生しました。プライバシーの問題もあるので非常に難しいかと思いますが、連携ができなかった理由を教えていただければと思います。
三つ目に、スマートフォンでみなサーチを試してみたのですが、ユーザインターフェイスに若干バグがあるようです。アクセシビリティ的には、例えば検索ボタンは「検索ボタン」と言わなければならないところ「ボタン」としか言っておらず、基本的なアクセシビリティの最終チェックがもう少し必要ではないかと見受けられました。その辺りの確認状況等を教えていただければと思います。
- 諏訪関西館長:
- 関西館長の諏訪でございます。みなサーチの登録人数については、最新のものは後ほど確認して御報告させていただきたいと思います。
サピエ図書館とみなサーチにつきましては、システム的には連携しております。サピエ図書館のIDでログインしてデータを探された方が、サピエ図書館からみなサーチのデータをダウンロードする場合はNDLのシステム側でサピエ図書館のログインを認証し、そのまま御利用いただけるという形になっています。ただ、NDLのIDでログインしてみなサーチでサピエ図書館のデータを見付けた場合に、サピエ図書館へ遷移してそのまま利用するこというところが実現しておりません。サピエ図書館からNDLのデータの一部は利用できますが、NDLからサピエ図書館のデータを直接利用できないことは、現在、問題として指摘いただいております。また、利用者登録の申請について、現在確かに、手帳等の提出でご不便をおかけしているという御意見もいただいておりますので、Web会議などを使って手順を効率化できないか検討しているところでございます。
みなサーチ正式版を公開するに当たってユーザインターフェイスのチェックを行ってはいますが、抜けがあるようです。申し訳ございません。御指摘をいただきましたので、可能でしたら具体的に問題点を教えていただき、もう一度チェックさせていただければと思います。
- 浅川委員:
- もちろん御報告できるのですが、全体のチェックについては担当された方に御依頼いただくのがよろしいかと思います。私が気付いた部分に関しては、また御報告させていただきます。
- 福林科学技術・経済課長:
- 事務局から一点補足させていただきます。NDLに視覚障害者当事者の職員がおり、みなサーチの開発に加わって確認していました。まだ完全でないところはございますので、また御意見をいただきながら修正していきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
-
(補足)
みなサーチの利用者登録数は、令和6年7月末現在で868名です。
みなサーチとサピエ図書館の利用者登録情報の連携については、会議中に明確にお答えできておりませんでしたが、関係組織間で個人情報保護の基準が異なり、連携した個人情報を適切に維持管理する点に課題があるため、現状では困難です。サピエ図書館と当館のそれぞれの役割を踏まえつつ、利用者の方に少しでも便利にご利用いただける方策はないか、様々な観点から引き続き考えていきたいと思います。
また、ご指摘のありましたスマートフォンでの不具合につき、改めて確認したところ、本事象は開発段階で検知され、詳細な検証を行った結果、iPhoneのSafari、VoiceOverの環境にSVGが対応していないことが判明しておりました。そのため、根本的な解決には、ソフトウェア側の修正を待つ必要がありますが、スマートフォンからみなサーチを利用される方も多いことに鑑み、改修を検討してまいります。
- 安浦委員長:
- 他に御質問ございますか。林委員、どうぞ。
- 林委員:
- ご報告いただいて様々なことが非常に進んでいるというのは理解しました。政策評価に関わっている感覚から見ると、目標とそれに対する進捗がよくわかりません。例えば、何万件公開したというのが計画どおりにうまく行っているのか、それともそんなに進んでいないのか。あるいは、提供する側については分かりましたが、利用者側はどのくらい利用しているか。アカウンタビリティの面で駄目だという話をしたいのではなくて、どこかに課題があるなら一体原因はなんだろうという議論につなげたいと思います。もしかしたら基本計画に付随する形で別に目標が定められているのかと思っていますが、実態はどうなっていますか。
- 福林科学技術・経済課長:
- 御指摘ありがとうございます。少し分かりにくくなっているのは御指摘のとおりだと思っております。例えば、今、林先生も例示されていたデジタル化について、この5年間で約100万点を目指すことをビジョンに掲げており、それが一つの指標になっています。その意味で申し上げると、先ほど100数万点進んだということをお伝えしましたが、順調すぎるぐらい順調に進んでいると思っております。ただ一方で、補正予算を取って進めていることもあり、目標として明確に出していないのも事実です。今後改善を考えたいと思います。
- 安浦委員長:
- 池谷委員、どうぞ。
- 池谷委員:
- いろいろありがとうございました。資料3-1の2ページの②に新たに新聞のデジタル化にも着手するとありますが、どのような新聞でしょうか。例えば地方新聞などは含まれているのでしょうか。
- 伊藤電子情報部長:
- 新聞のデジタル化は日本新聞協会と協力しながら進めており、デジタルコレクションでは約17万点あります。地方新聞を含め、明治期からの古い劣化した新聞をデジタル化してデジタルコレクションに搭載しています。ほとんどが館内限定公開で提供しているという状況です。今後も重要な課題として取り組んでまいりたいと考えております。
- 池谷委員:
- 新聞協会との交渉はきっと難しかったのではないかと想像されるのですが。そちらはほぼクリアしたということでしょうか。それともやはりまだ難しい部分が残っているということなのでしょうか。
- 大場利用者サービス部長:
- NDLと日本新聞協会は今まで協力してマイクロフィルムによる新聞の保存を行ってきましたが、マイクロフィルムは資材の入手が難しい状況になってきており、デジタルで保存する方向に変えていこうという議論を今進めているところです。まだ具体的なところまでは進んでいないのですが、方向性としては合意できています。先行事例として、古い紙の新聞とマイクロフィルムの両方からデジタル化を試行しているという状況です。引き続き取り組んでまいります。
- 安浦委員長:
- ありがとうございました。時間の都合もございますので、懇談の方に移りたいと思います。まだ御質問ございましたら、最後に各委員から御意見や御質問をそれぞれいただく時間を取りますので、その時にお願いします。それでは、まず国文学研究資料館のデジタル化戦略について渡部委員に話題提供をしていただきます。渡部委員、お願いします。
- 渡部委員:
- 国文学研究資料館(以下「国文研」)の渡辺です。
国文研について改めてご説明いたしますと、1972年に創立した国文学、つまり日本文学及びその関連領域の資料を収集し公開する、そして研究をするという研究機関です。外国の方々によると、一国の文学に関する国立の機関というのは世界でも大変珍しいようです。現在は法人化されておりますが、立川市にあって、教員数は特任を含んで30名程度のごく小さな機関です。
「国文学研究資料館のデジタル戦略」というタイトルをつけましたが、ほとんどNDLを参考にしながら、もちろんNIIの先生方にも大変お世話になりながら、細々と続けています。私自身は生粋の古典学者で4年前まではずっと大学におり、デジタルなどというようなものからやっと逃れ切れたと思って着任しました。デジタル化の効用には当初少し懐疑的でしたが、4年間やってみてデジタル化は必要だと痛感いたしましたので、私がどうしてそう思うに至ったかお話しさせていただければと思います。
まず国文研は10年間、2014年から2023年までの間、大規模学術フロンティア促進事業として、日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画という計画を遂行してまいりました。その成果は国書データベースを構築したというところにあります。30万点、コマ数で言うと3千万コマの歴史的典籍、古典籍・史料、歴史的資料のデジタル画像を作成して公開しました。年間2.8億円ほどの概算要求を毎年行い、それで何とか計画どおりに達成したという形です。デジタル化は、外注だけではとても予算的に足りないので、内製という手法を取り入れました。また、機械の貸出や撮影方法のマニュアル化により、連携機関に作業に御協力いただくことで点数を増やしていったという経緯があります。
戦略として7点挙げております。戦略1としてはDOI(デジタルオブジェクト識別子)を付与すること。戦略2、オープンな利用を推進するため、クリエイティブコモンズライセンスを表示して画像の利用手続きが一目で分かるようにしました。戦略3、国際規格であるIIIF対応ビューアを採用して、画像同士を見比べられるようにしました。例えば版本の微妙な違いは学問的にも重要です。デジタルコレクションをはじめとして、IIIFの普及には今までもNDLに先頭に立っていただいていたのですが、更に先頭に立って我々を導いていただけたらと思います。戦略4、日本古典書誌データの標準化・国際化。特に③、メタデータ流通ガイドラインはNDLがお作りになったもので、古典籍編に私たちが協力しました。戦略5として他機関データベースとの連携等があります。NDLにも連携いただいています。戦略6の1、オープンデータによる研究資源の公開。くずし字など100万文字の字形データ、画像データと書誌データの日本古典籍データセット、変わり種として江戸料理のレシピのデータセットの三つのオープンデータを公開いたしました。江戸料理を復元してみようというようなこともやっております。戦略6の2としましては、機関間の国際連携と研究者の国際交流。MOU(基本合意書)を締結するなどして海外の機関と連携を行い、国際学会等にも毎年のように進んで参加し、発表しています。
この事業への評価を中心として、昨年度デジタルアーカイブ学会からデジタルアーカイブ学会賞・実践賞を授与されたという成果もございます。さらに、文部科学省の科学技術・学術審議会の作業部会の事業移行評価を頂戴し事業移行が認められたため、引き続いて、「データ駆動による課題解決型人文学の創成」というプロジェクトを開始いたしました。2024年度は3億円の概算要求が認められました。
この計画には「データ基盤の構築・活用による次世代型人文学研究の開拓」という副題がついていて、日本文学でも国文学でもありません。人文学という大風呂敷を広げているのですが、私自身、こういう現代だからこそ古典学の大事さというものを常々痛感しております。やはり古典を踏まえることで国際交流がスムーズになるのではないかと考え、それを可能にするための目標を4つ立てております。
まず一点目はデータインフラストラクチャの構築、つまりデジタル画像データを拡充するということ。今まで30万点作ってまいりましたが、更に15万点のデータを作成・公開します。主に寺社や個人が持っている資料を対象とし、なかなかハードルが高いのですが、少しずつ御理解をいただき門戸を開いてくださっています。今までの成果はこういうところで生きてくるなとも感じております。
中心となるのは二点目、人文系データ分析技術の開発です。先ほどNDLでも大きく取り上げられていましたが、画像データをテキストデータへと転換します。画像データが公開されることにより、今までは実際にそこへ行かなければ見られなかったものや当館へ来てマイクロフィルムや紙焼き写真を見なければならなかったものが、世界中でいつでもどこでも見られるようにはなりました。しかしどうしても日本の古典籍にはくずし字という大きなハードルがあるわけです。古典籍をテキストデータへ転換し、TEIなどの国際標準規格で構造化、マークアップすることによって、このハードルを解消し、一般社会人や海外を含め幅広い利用者が多様な検索方法で活用できるようになります。要するに機械可読化です。今まで検索といえば一次元的にするしかありませんでしたが、多元的な項目を同時に検索していくなどということも、デジタル化によって可能になるのではないかと我々研究者も期待しております。ただし、機械的に翻字したものは結局研究者の手が入らないと使い物になりません。確かに今は機械がくずし字も8割か9割ぐらい読めてしまいますが、それでもまだ不十分なので、研究者の手で限りなく100パーセントに近いものに近づけなければいけません。それをさらに教科書に載っているような最善の校訂本文の形へ直し現代語訳をつけるということが、これはもう少し先になりますが、しかし実際に動き始めています。もし古典籍とその現代語訳が紐付けられますと、例えば子どもでも現代の関心や言葉から古典にアプローチすることができるようになるわけです。外国の方々もAIなどを使うことによって翻訳を通してアプローチできます。そうなれば本当にあらゆる人に日本の古典を開いていくことができるようになるのではないかと、私たちは一つ希望を持っております。
三点目はコンテンツ解析からの展開、これは理系を含めた異分野融合研究のことです。例えば、「明月記」から巨大磁気嵐の発生パターンを解明したり、「大保恵日記」という天気や地震、天災などが非常に詳しく書いている松江の商人の日記を用いて環境学的なアプローチで共同研究したり、そういうものへ発展させることができるでしょう。我々は典籍防災学と名付けていますが、そのためには史料レスキューが必要です。能登では喫緊の課題であり、能登はこれからですが、福島県の帰宅困難地域の資料を保存するといった活動もしております。史料は地域にまだまだたくさん存在しておりますので、文献観光資源学とか典籍観光学などと呼んでいますが、やがて広い意味での観光学や地域振興などにもかかわっていくことができるのではないでしょうか。
最後に、マテリアル分析・解析と掲げました。微小片X線分析装置によりX線を当て、紙の中の顔料や混入物などいろいろな成分を分析することで、作成時期や当時の人の栄養状態までも分析することができます。4千万円ほどでなかなか高い機械ですがようやく買えることになりました。これによって理系的な分析から人文学、古典籍学を進めるという目標を立てております。このように古典を広げていくことで、古典を誰にとっても身近なものにしたいと思います。現代社会でも、むしろ今求められているのではないかと私は考えております。
取り急ぎ国文研の現在進めております計画をお話しいたしました。ご清聴ありがとうございます。
- 安浦委員長:
- 渡部委員、貴重なお話をありがとうございます。御質問は、次の野末委員からの話題提供の後でまとめて時間を設けたいと思います。続きまして、図書館における情報リテラシー教育をめぐるいくつかの論点について、野末委員に話題提供をしていただきます。野末委員、お願いします。
- 野末委員:
- 野末でございます。よろしくお願いします。
今回、審議会のテーマに情報リテラシーが一つのキーワードになっており、私にお声がかかったと思っています。私は図書館情報学及び教育情報学を専門と名乗っておりますが、もともと教育学者であり今所属が教育学科なので、教育学の枠組みの中で考えています。教育と情報と図書館の重なったところが研究関心です。キーワードの一つが情報リテラシーということになります。
教育学は元々、どちらかというと定性的なアプローチを取り、実践、具体的に言うと子供でも大人でも学習の成果が上がることに価値と評価基準を置くような学問です。今日も漠然としたお話が多いかと思いますが、その点ご了承ください。話題提供ということで、主義主張というよりは今考えるべきことをアラカルト方式でご提案できればと思っております。
情報リテラシーとは、言葉の上では情報の読み書き能力を表し、リテラシー論では基礎学力、文科省的には活用能力と言い換えられることもあります。リテラシーという言葉が表す中身は文脈によって大きく違います。我々の中でも委員の先生方毎に、それから世の中でも、どれぐらいの機能を満たせば良しとするかによって大きく捉え方が違うということです。広い意味での文脈によりリテラシーをどう捉えるかが異なるので、いろいろな立場や議論があります。この場の議論ではリテラシーの意味の整理が必要だと思っております。また、リテラシーと言うと、とかく行動・技能・知識などの体の面に着目されがちですが、実際には思考・認知・頭・心などの心理面、あるいは態度・関心・意欲と呼ばれるような領域も含めて考えていく必要があると私自身は強く思っているところです。これが一応リテラシーという言葉の定義ですが、定義自体も考えていくべきところの一つかと思います。場合によってはリテラシーという言葉がなじまない場面もあるかもしれません。
次に問題となるのが、利用者のリテラシーと利用される側のシステムとの間にあるギャップです。利用しようとするシステムが必要とするリテラシーと利用者自身がその時点で有しているリテラシーとの間にギャップがあると、データベースが検索できない、図書館が上手く利用できない、文献が上手く読めないといったことが生じます。私も含め教育の世界だと、利用者のリテラシーを補う教育が一つのアプローチとして示されがちで、これはもちろん必要かつ有効です。しかしそれだけではないことが重要です。例えば図書館のレファレンス・サービスがそうであるように、利用の場面における援助や代行が二つ目のアプローチとして考えられます。三つ目が、図書館なりデータベースなりシステム自体を簡略化し、高度あるいは特別なリテラシーを不要にすることです。情報リテラシーについて論じるにはこの三つのアプローチを総合的に考えることが必要で、教育だけで全て解決されるわけではありません。資料5の4ページの図はそれを模式化したものですのでご確認ください。
そうは言っても、アプローチの一つ目、教育・学習に負うところはあります。きちんとしたデザインが必要ですが、データベースの講習会など、図書館の場合にはどうしても部分的・単発的になりがちです。それを脱却するには、そもそも教育的なインストラクション、教育指導のトータルデザインを考えていく必要があります。具体的には、誰に何のためにどんな内容を指導するのか、誰がどんな目的で何を学ぶのか、それをいつどこで誰がやるのかという、いわゆるカリキュラムを順番に組み立てて考えることが必要になってくると思います。その上でどうサービス化するかが今回の我々の議論にも絡んでくると思いますが、それには二つポイントがあります。一つ目は、集合形式の講習会という図書館における伝統的な情報リテラシー教育だけではなく、既存のサービスに組み入れ、さまざまな機会を捉えてリテラシーを考えること。例えばレファレンス・サービスやマニュアルの整備でできることもあり、図書館のサービス全体でリテラシー教育を考える必要があります。もう一つはICTやデジタル化の活用で、具体的には資料5の6ページに書きましたように三つ視点があります。対面集合だけではなく、オンラインや電話などリモートで行う形式。同期的にリアルタイムでやり取りするものばかりではなく、教材配信やパスファインダー(学び方・探し方ガイド)など非同期で行う形式。集合形式で一斉に大勢に行うだけでなく、レファレンス・サービスやウォークインで立ち寄っての指導の展開。このように三つの軸があり合計8つの象限が生じるわけですので、たくさんの情報リテラシー教育・学習の機会を上手く組み合わせて、図書館としてトータルで利用者の情報リテラシーを高めることにアプローチしていくという観点が大切ではないでしょうか(資料5の7ページ)。
さて次の論点ですが、「近未来の」とつけたのはなぜかというと、情報リテラシーを踏まえた図書館サービスのあり方をトータルで考えていく必要があるだろうということです(資料5の8ページ)。一点目の利用者セグメントの再設定については後程御説明します。二点目は情報利用あるいは利用者モデルの再構築ということです。まず、情報や図書館を利用することは教育や学習のプロセスと近いあるいは同じと見なせるのではないかと考えています。利用者は学びながら、情報を利用しながら成長していく存在なので、常に同じ人が来るわけではありません。分かりやすく言うと、時間軸を取り入れたモデルを考える必要があるのではないでしょうか。続いて、我々一個人はいろいろな図書館を使いますので、情報リテラシーは単館で行うものではなく館種を超えたプログラムが必要になってくるだろうと思っています。資料5の9ページの図は少し複雑ですが、それを模式化したものです。これは私が委員長を務めている日本図書館協会の図書館利用教育委員会というところで、情報リテラシー教育のガイドラインに代わる枠組みを作っていこうと思っていて、基本的な考え方をまとめたものです。青い矢印が人間の成長と言いますか、時間軸を表していて、赤い矢印が同時期の相互に関係があるところを表しています。
あと二点ほどあるのですが、時間も限られているのでここは省略させていただきます。先ほど情報利用を学習と見なすという話をしましたけれども、そうなった時に学習コーディネーターと私は仮に呼んでいるのですが、学習コーディネーターとしての図書館員の役割が求められてくるのではないかと考えています。ある事柄について学ぶ時に、最初にこういうことを学びましょう、次にこういうことを学ぶと良いです、その次にはこういうことを各論で学んでいくと理解を深めることができますといういわゆるカリキュラムの考え方があります。図書館はその都度都度の場面に関わり、資源とスキルも持っているので、利用者のニーズを先取りして、例えばですが資料を並べる時に学習段階順に並べていくようなことが必要かと思います。つまり図書館も、先ほどお話しした時間軸に沿ってサービスを展開していくような工夫がこれからあると良いなと、それがリテラシーの向上に繋がっていくのではないかと考えています。
最後にAIを含むテクノロジーの話を出しました。図書館に今AIを含むテクノロジーが多く入ってくる、きている、あるいはこれから入っていくだろうという背景があります。最後に御参考ということでAIの話をしてみようと思います。青山学院大学に革新技術と社会共創研究所という、DXについて人文科学的、学際的に研究する研究所があります。そこの一つのプロジェクトで私がリーダーを務めており、2019年から共同研究で蔵書の検索にAIを使うシステムを、実験等を重ねて開発をしてきまして、これであれば社会的に実装できるだろうということで、本年の1月に横浜市立図書館、3月に沖縄県立図書館に導入しました。知る限りにおいては、公共図書館で蔵書全体を対象としたAIを活用した探索システムの導入は初めてだと思います。Webでどなたでも利用できますので、もしよろしければお使いいただいて、御感想をいただければと思っております。このシステムを開発する際には、資料5の13ページの図のような仮説に基づいて、文献や情報を探す時にサポートが少し手薄ではないかと考えられるところを想定して、そこにAIをどう活用できるかを考えました。それからニーズがあるかどうかということも確認しました。ここが先ほど飛ばしたところで、インターネットで様々な方に本をどうやって探していますか、その時困っていることはありますかというアンケートを取りました。読書の頻度とか図書館の利用頻度などと合わせて確認したところ、なかなか面白い結果が出て、資料5の15ページの図では、右側が積極的に本を探すケース、左側が消極的に、言われたら読むけどというようなケースです。緑の枠が図書館をよく利用する方、それから赤い枠は本をよく読む方です。それぞれ実際感じやすい課題、生じやすい課題が違っているということが調査の結果から分かりました。例えば、図の右上、本もよく読み図書館もよく使う人が積極的に本を探していく時に、自分に適した良いキーワードが思い付かないということです。このあたりは図書館でも様々なアプローチがありますし、AIも結構サポートができるところ。図の左下にいくと、例ですけれども、あまり図書館も本も積極的に使わず、本は言われたら読むけどという受動的な態度の人は、自分に合った難易度の本が分からないとか自分に合った分量の本が見つけにくいというところで困っていることが見て取れました。そうすると例えば図書館で資料提供や案内をする時に、この本は五分で読めます、この本は高校生相当ですなどの情報も併せて提供していくと、実は文献を使う、図書館を使うというところに繋がるのではないかと考えています。この辺も含めて私はリテラシーの問題だと考えているので、参考ではありますけれどもお話しをさせていただきました。
ありがとうございました。以上でございます。
- 安浦委員長:
- 野末委員、ありがとうございました。それでは、今の渡部委員及び野末委員の話題提供につきまして、御質問等がございましたら、お受けしたいと思いますがいかがでしょうか。オンラインの委員の方でも結構ですので。松浦委員、どうぞ。
- 松浦委員:
- 渡部先生、野末先生、大変興味深いお話をありがとうございました。
まず渡部先生の分野は、まさに文部科学省も一生懸命事業で支援しています。なぜかというとやはり先生の資料にもありましたが、理系を含めた異分野融合研究は非常に重要なためです。先生が一生懸命取り組んでおられるデータベースでは、ともすれば一個人だけでは100あれば10ぐらいしかその価値を活用していないかもしれません。しかし使っていない90が可視化され、外からアクセスできるということになれば、ほかの分野の研究者がそれを使い、100の外に新たな価値が生まれます。典型的なものが典籍防災学だと思うのですけれども、ほかにも、マテリアル分析などはこういった資料の物理的な組成が分かって、たくさんデータがそろえばその当時の交易などがわかるようになってくる、またそこで新たな価値が生まれて行く。そういった意味で非常に重要であると思います。やはり日本の研究力が落ちていると言われるのも、新たな学問領域の生成が海外に比べると弱いのではないかと指摘もされていますので、こういった取り組みが非常に重要ではないかと思っています。
また野末先生のお話について、特に図書館は、きちんと使っているかというと、恥ずかしながら私も含めてあまりアクセスしていないかと思います。ただ、最近特にリスキリングが重視されて、当然時代とともに仕事やスキルを変えていかないといけないという面もありますし、障害者のアクセスだけではなくて、例えば子育てとか介護などインクルーシブな社会でリスキリングをして経済社会を生きていくという意味では、情報リテラシーがあらゆる人にとって重要であると思います。使い方を知らないという人が私も含めてたくさんいるという中で、リテラシーに対する取り組みは重要だと思っています。
コメントですが以上です。
- 安浦委員長:
- 貴重なコメントありがとうございます。ほかにご質問ございますか。黒橋委員、どうぞ。
- 黒橋委員:
- 野末先生の御発表、大変勉強になったのですけれども、図書館におけるリテラシーという時に、書籍を見ながら同時にインターネットを活用することも含めておられるのか、それとも基本的には図書の活用なのでしょうか。前者の方が良いと思いますが、そうしますと昨今AIと言えばハルシネーションがありますし、世の中にはフェイクニュースが溢れていますので、これからの教育を考える上で批判的思考がより一層重要だと思います。そのあたりの取り組みの広がりみたいなことを教えていただければ。
- 野末委員:
- ありがとうございます。概念的には、図書館の所蔵しているものや図書館が契約しているデータベースだけではなく、インターネット上のものを含めた図書館以外の情報も活用していくところが、ここで言っているリテラシーに含まれていると思っています。ただ、現実に図書館で行われている情報リテラシー教育の範囲を見ると、必ずしもそうではなく、図書館によってかなり温度差があると私自身は思っています。これはなぜかと考えると、図書館のリテラシーにおいては、典拠性、いわゆる出典、ここにあるので根拠をはっきりさせていきましょうというところが重視されますが、図書館からアプローチできないものには典拠性に曖昧さが生じます。黒橋先生がおっしゃったように、では図書館がアプローチできる範囲だけやっておけば良いかと言うとそうはいかないので、その範囲以外のものも含めたリテラシー像をきちんと整理して包括的に捉えた上でどこに論じていくか考えていくのが、これからの役割かと思っています。ありがとうございます。
- 安浦委員長:
- 今後の初等中等から高等教育までの在り方の問題や社会人教育の在り方の問題、社会のコンセンサスの作り方の問題に絡んでくる非常に重要な課題だと思いますので、ぜひ部会でもこの辺りも視野に入れながらご検討いただければと思います。
- 黒橋委員:
- おっしゃっていることは全くよくわかります。これから社会で人々がどう学んでいくかというと図書館に閉じることはありえないと思います。最新の情報を取ってきてそれと図書館の情報とをどう対応をつけて考えていくか、そこが教育として大事かと思っています。ぜひよろしくお願いいたします。
- 野末委員:
- はい、ありがとうございます。おっしゃるとおりと思っています。
- 安浦委員長:
- 竹内先生、どうぞ。
- 竹内委員長代理:
- 今の野末先生のお話も渡部先生のお話もいろいろなことを考える上で重要な情報共創を含んでいたと感じているところです。まず野末先生のお話を踏まえて、今回の基本方針検討部会のテーマと関連して意見を述べさせていただきたいのですが、資料5の4ページにある情報リテラシーのギャップの問題というのは、基本的にはAIによって解消すると考えざるを得ないと思います。その場合、部会の全体テーマにある情報リテラシーの向上とは一体何を意味するのかが曖昧になっているように思いますので、今後検討いただく上でどのような方向性を考えているか、野末先生に少しお話しいただければと思います。
- 野末委員:
- ありがとうございます。まず前段のギャップの話について言えば、私自身も今回システムを作ってみて、AIでできることもたぶんあると思っています。一方で、少なくとも現状のAI、それから想定できる近い将来のAIではなかなか苦手なこともあるのではないかと思っていて、その見極めの中で、利用者に求められているリテラシーがあると思っています。だから教育・学習的なアプローチも、変わらずとは言わないですけど、中身を変えながらでも必要な部分ではあろうと思っています。資料2で言うところの全体テーマのリテラシーの向上ですが、リテラシーと言うのは表現で言えば手段に過ぎません。話題提供冒頭、リテラシーの定義のところでお伝えしたのですが、あるコミュニティにおいてある利用者、ある一個人、あるいは団体、社会全体でも良いですが、ある人間が生活や仕事をする、学ぶ、さまざまな文脈がありますけれども、それらを達成するために情報やリテラシーはあるわけです。ひとりひとりが生きていくにあたってどういう状態になることが求められるのか、そこにおいてどういう能力が必要かということで、ここではそれを向上と呼んでいると受け止めています。私の分野の教育学、青山学院大学の教育学科が謳っているのはいわゆるウェルビーイングです。よりよき生のためにどういう情報や能力が必要なのかを考えていくことと受け止めています。手段としてのリテラシーを考えるので、場合によってはリテラシーという言葉ではなじまないかもしれないと個人的には、議論してみないとわかりませんが、考えています。お答えになれば幸いです。
- 竹内委員長代理:
- 大変よくわかりました、ありがとうございました。
もう一点よろしいでしょうか。渡部先生の御発表の中で、ここまで進んだかと思ったのですけども、そこで一つ気になっていることがあります。昨年私が責任者を務めさせていただいてまとめました文部科学省の検討会(「2030デジタル・ライブラリー」推進に関する検討会)で日本語のデジタルコレクションをどう作るかについて言及しております。NDL及び国文研による大規模な日本語蔵書のデジタル化が基盤として非常に重要であり、大学図書館のデジタル化はそれを補完する形で行うべきだと言っているのですが、国文研における歴史的典籍というのは時代的には近世までと考えてよろしいでしょうか。
- 渡部委員:
- 基本的には近世まで、明治より前でしたが、最近は明治時代も含めるようにして、NDLとシームレスに、納本制度が始まる前を中心に考えています。自筆原稿などの分野はさらに新しい時代まで含め、NDLとお互い補完し合えるように考えていきたいと思います。
- 竹内委員長代理:
- ありがとうございます。NDLのデジタル化の対象は、私の記憶が間違っていなければNDLの開館以降に刊行されたものという話だったような気がしておりまして、そうするとそれよりも前の時代、江戸から大正までと言って良いのでしょうか、そのあたりのNDLの蔵書としての網羅性とそのデジタル化の可能性についてNDLではどうお考えでしょうか。
- 伊東電子情報企画課長:
- NDLでは明治期からの和図書のデジタル化をしており、明治期と大正期については終了しているところでございます。
- 竹内委員長代理:
- 問題は、そのコレクションが日本の出版物全体としてみた時に網羅性がどれだけかということです。
- 大場利用者サービス部長:
- その点について大場から補足をさせていただきます。そもそもNDLでは、明治期のマイクロフィルムを作成するプロジェクトが元々あって、それをベースにデジタル化を進めてきたという背景があります。マイクロフィルムを作るところから、そもそもNDLが持っている戦前の資料は全然網羅的ではないと認識はされていました。ただその後も、それを全体的に補うということについては取組が充分だったとは言えません。一方でそれぞれの図書館が持っている資料をデジタル化し、それらを繋いで全体が検索できるようにする方向で進めていくことが考えられます。NDLとしてはそのための一つの基盤としてNDLサーチであるとか、あるいは図書館だけに限らずいろいろな機関が参加するという意味でジャパンサーチといったような情報基盤を作っていくというところで取り組んでおります。
- 竹内委員長代理:
- ありがとうございました。そうすると現時点で日本の出版物の何パーセントまでデジタル化されているか、多分誰もわかっていないかと思います。そこを追求したら、誰がやるかという問題が出てくると思うのですけれども、国全体の基盤として少なくとも日本のこれまでの出版物に関してデジタル基盤を作るということならば、やはり誰かがイニシアティブをとってやるしかないのではないかという気がいたします。そのあたりのイニシアティブをNDLにお願いするというのが良いのではないかと個人的には思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
- 安浦委員長:
- 非常に重要な議論が白熱しておりますが、時間の制約もございますので、最後の懇談に移らせていただきたいと思います。委員のみなさまのご意見をいただく前にNDLから懇談の趣旨の補足をお願いいたします。
- 大場利用者サービス部長:
- それでは補足させていただきます。NDLといたしましては本日の懇談がこの後部会を中心に行われます、第六期基本計画の策定に向けての提言の検討に関わる議論への参考になることを期待しております。既に今までの議論の中でさまざまな論点が提示されておりますし、また委員の方々からのお話の中でデジタル化の進展によって学術研究の分野、さまざまな情報利用の分野の領域で変化が進んでおり、その中でいろいろな取組をしなければならない状況であるということはすでにご提示いただいたかと思います。そういった論点に関連して、あるいはそこに関わらずNDLがこれから検討していくべき論点について忌憚ない御意見いただけますと幸いでございます。よろしくお願いいたします。
- 安浦委員長:
- ありがとうございます。それでは各委員に、時間の制限もございますので、2、3分で御意見を伺っていきたいと思います。まずオンラインで御出席の委員から先にお伺いしたいと思います。浅川委員、お願いいたします。
- 浅川委員:
- 情報リテラシーの向上のために、AIが果たせる役割は非常に大きいと思っております。読字障害者の情報格差を小さくする、また、インクルーシビティという意味で、デジタル・ディバイド、一般的な格差というものを小さくできる可能性があります。
検討部会の先生方も既にいろいろと御検討されているとは思いますが、私の視点からいくつかぜひ御検討いただきたいことを、重複するかもしれませんがお伝えしたいと思います。
まず、NDLはこれまでデジタル化・全文テキスト化という本当に大変な作業をやられてきて、そのデータがこれからのAIの時代に大きな財産になるのではないかと思っております。まず一つ目として、明治・大正・昭和の初期の古い日本語の文章というのは非常にわかりにくく、漢字も今使われているものとは違います。こういったものを、AIを使ってわかりやすい現代の日本語に書き換えることによって、アクセスが向上できるのではないか、要約することによって、必要な文献に素早く到達できるのではないかと考えました。また、そういった難しい文章はこれまで小学生・中学生にはなかなか読めなかったと思いますので、AIに対して、小学生の何年生レベルでわかる言葉に置き換えて、というようなことが指示できるようになれば面白いのではないかと思いました。こういった意味でNDLのデータが非常に有効活用できると思っております。また、マルチモーダルAIというのがどんどん進化しておりますが、これを使うことによってこれまでなかなか説明のできなかった写真や画像、映像、音声といったデータを解釈して説明することができるようになると思います。外国語に関しても最近では翻訳が非常に進化しており、今までやはり日本人は外国語文献へのアクセスに時間がかかっていたかと思うので、こういったものも検討し、AIを使って知識ベースの拡張にチャレンジしていただけるとありがたいかと思いました。
加えて、NDLの貴重な知識データベースを今後AIが参照できるようになると素晴らしいのではないかと思いました。例えば、NDLのデータを参照して何々について教えてほしいといった形です。ただ、そうは言っても、なかなか公開できないというような場合には、「国立国会図書館AI」というものを作っていただくことで、非常に有効活用できるのではないかと考えました。皆様既に御存じのこととは思いますが、やはり参照した文献をクリアに表記することが、結果を表示する時に非常に重要になると思いますので、RAG(Retrieval-Augmented Generation)などの手法を使って、より質の高い答えが出せるように御検討いただければと思います。以上です。ありがとうございます。
- 安浦委員長:
- 続きまして大隅委員、お願いいたします。
- 大隅委員:
- 本日は大変重要なお話を、渡部先生、野末先生から頂く事ができまして、本当に勉強になりました。ありがとうございます。私の方からは、手短に二点ほど申し上げたいと思います。
まず一点目、総合知デジタルアーカイブと銘打ち、本学も徐々に徐々に古典籍等をデジタルアーカイブ化している段階でございます。やはり日ごろ図書館長として、折角デジタルアーカイブ化したとしてどれほど広い方々に使っていただけるかを考えており、そうでないと一体何のために国民の税金を使ってやる意義があるのかと感じております。日本ではこれまで広報という言い方をしていましたが、諸外国ではコミュニケーションという言い方に少し変わってきていて、双方向性を非常に大事にしている段階だと思います。デジタル化された資料という非常に大事なものの存在をどうやって国民の皆様にわかっていただくか、少し戦略的に考えていく必要があるのではないかと思いました。野末先生の話と絡み、ちょうど掛け算になるところかと思うのですけれども、例えば初等中等教育等の中でどのように活用していただけるかについて、教育業界との連携などを積極的に図っていくことができればと考えました。
二点目でございます。NDLは日本の知のインフラを支える非常に重要な立ち位置にあると考えられます。私どものような大学図書館、特に研究大学としての大学附属図書館も同様に、学習を支えるだけではなく、研究にどのようにコミットするかというところがこれまで以上に求められています。古典籍等々を使う文系の方々とはこれまでもつながりが強かったわけですが、いわゆる電子ジャーナル等々を使う理工系との連携が今大学図書館として非常に重要になってきています。私からのお願いといたしましては、NDLと大学図書館とどのようにすみ分けるか、国全体として有効な税金の使い方になるようにしていくのか、どのようなフレームワークを作っていくことが合理化につながるのか、もう少し積極的な意見交換の場があると良いと考えています。
以上二点でございました。
- 安浦委員長:
- 続きまして戸山委員、お願いいたします。
- 戸山委員:
- 昨年と同じような意見になるかもしれませんけれども、この事業で一番大事な基盤は、やはりデジタル化をどこまで実施して、どこまで早く広げられるかというこの一点にかかると思います。今目標としているところのどこまで来ているか分かりませんが、それがなぜ遅いのかと何回か質問した時には、やはり人と補正予算が付かないというお答えでした。何と言っても基盤はデジタル化をどれだけできるか、その上に乗っかってその次だと思うので、ぜひ頑張ってお願いしたいと思います。
ただ今回聞かせていただいたところでは、全体で今400万件を超え、個人送信も行っているということで、スピーディーに非常に頑張ってこられたと思っています。基本的にはこのデジタル化の下で、国民がいつでもどこでも誰でもアクセスして見られるというようなものの構築と、話題に挙がっているAIを利用した新たなものが創出できれば素晴らしいのではないかなと思います。
また、これだけのお金を使用して膨大な資料があって、宝の持ち腐れというのは非常に寂しいので、特に教育機関、学校等々含めてどのようにこれを利活用していただけるかという点も大切ではないかと思っています。
昨年と比べて、かなり頑張って来られて良いところに来ているのではないかと私は思いますので、ぜひ、引き続きよろしくお願いいたします。
以上です。
- 安浦委員長:
- 続きましてJST橋本委員代理の中島様、お願いいたします。
- 中島科学技術振興機構部長(陪席):
- 今回テーマとして挙げられている生成AIやデジタル化、オープン化、科学技術情報基盤の整備といったところには、やはりITシステムがかなり大きな役割を占めると考えられます。
NDLのシステムは、日本の科学技術情報流通において非常に先進的で、国内の中でもかなり進んでいるという評判も伺っております。私の理解ではインハウスでの開発も盛んに行われているのではないかと思うのですが、AI等に対応していく際には外部のサービス・技術を迅速に取り入れていく必要があろうかと思います。御報告を伺うとそういったことも視野に検討されていると思いますが、一方で、日本の学術情報流通に適したソフトウェア開発は海外と比べてかなり層が薄いと感じておりまして、国内の強化も同時に行えるようなシステム開発の効果的な取り組み方も併せて考えた計画にしていただけるとありがたいと思います。
以上です。
- 安浦委員長:
- 池谷先生、お願いいたします。
- 池谷委員:
- いろいろな議論を伺って大変刺激を受けたのですけれど、いくつか重なる部分もあるかと思いますが、少し考えた事を言わせていただきます。
私は、慶應義塾ミュージアム・コモンズの機構長もしております。KOH(Keio Object Hub)という、慶應内の図書館や斯道文庫など様々な部署がデジタル化したものを一括して見られるシステムを運営しており、昨年はデジタルアーカイブジャパン・アワード2023をいただきました。ミュージアムなので、学術資料だけでなく文化資源のものもデジタル化しています。アワードをいただいておきながら言わせていただくのも恐縮なのですが、ジャパンサーチで公開することにはすごく意義があると思いつつ、NDLサーチとの関係が少し不明瞭と感じています。閲覧しているものによってはジャパンサーチからNDLサーチへ繋がることはできますが、NDLサーチからジャパンサーチの存在はそんなに見えやすいとは言えなくて、存在を知らない人がちゃんと探してくれるのだろうかと少し心もとなさがあります。先ほど渡部先生のおっしゃっていらした国書データベースは非常に素晴らしいと思うのですけれども、そういうものが単体であるように感じ、日本の専門家以外の、例えば海外の人や日本の中でも初学者の人にどう見えるかを考えながら今後進めていただけたら良いのではないかと思っているところです。
情報リテラシーと関連して、学校教育の中で教員が学校図書館をどう利用し、どう連携して教育を進めるべきかが教えられていないというのが事実のようです。教員の資格を取ろうとする図書館・情報学専攻の学生は、そこに問題意識を持っている人が多くおります。米国議会図書館(Library of Congress)では、フェイクニュースやハルシネーションが溢れている中でオーセンティックな情報に触れる楽しさを生徒に経験してもらう方向で教員と協働しているようです。ジャパンサーチのデジタル情報を教育に使用することが一部では進んでいるとは思いますが、NDLのデジタルコレクションの非常に豊かな情報を学校教育のなかで使われるように何らかの形で教員を巻き込みながら、あるいは文科省の方々と連携されて、そのような試みをなさることは出来ないのかしらという思いもあります。
最後に、情報リテラシーというと割と学校教育的な側面で使われるかと思いますが、例えば病気や法律、介護の問題に直面した時など、成人になって自分の専門分野ではない課題を解決しなくてはならなくなった場合に、それぞれの専門機関以前に気軽に足を踏み入れてきちんとした情報を調べられる場所として、やはり公共図書館はあり続けるべきかと思います。AIのお話は素晴らしいなと思いましたが、そのあたりはAIだけに任せてはいけないような気も少ししまして、核心を突いた、きちんと情報の内容を踏まえて必要とあれば支援ができるような体制を、人的な部分も含めて考えていったら良いのではないかと思います。私は健康医療情報に結構関わっていますが、本にも詐欺まがいの情報がたくさんあるわけです。国立がん研究センターの先生と議論する中では、公共図書館に期待しつつも、NDLに何とかしていただけないかという話も出ておりました。そこはかなり大きいところではございますが、そのような辺りで期待をしております。
- 安浦委員長:
- 黒橋委員、お願いいたします。
- 黒橋委員:
- 手短気味に、三つあります。
前回も申し上げましたがWARPにつきまして、わが国にはサーチエンジンがないという大きな問題がございますので、民間の重要なサイトはNDLできちんと集めていただければありがたいというのが一つ目です。
二つ目は、これからどんどんAIを含め検索が進化していくと思うのですけども、開発を決めて開発してそれを5年間使うとかそういうタイプではなくて、アジャイルにどんどん新しい機能を入れられるという体制にしていただくのが望ましいのではないかと思います。
三点目は、浅川先生をはじめ皆様御指摘していますが、やはりAIが新しいホットな世界になりつつありまして、私も研究者として驚いているくらいです。外国語の翻訳も古典と現代文の間の翻訳も特段の知識を入れずとも同一意味空間を作り出して勝手にやってくれるという世界になりつつあり、今日も御紹介がありましたが、ROIS-DSの北本先生も、現代文で古典籍と対話的にできるようなサービスをされています。これは本当に教育に革新をもたらすのではないかと思っていますが、そういうデータとして、NDLをはじめとする日本全体のデジタル化されたデータがきちんと整合的に使われる、そういう世界をNDLにリードしていただければありがたいと思います。
以上です。
- 安浦委員長:
- 小口先生、お願いいたします。
- 小口委員:
- 私は皆さんと違って専門家ではありませんので、一般的な立場から申し上げると、NDLが蔵書・データを含め価値を持っている、これはいかなることがあっても動かしがたい事実です。そうするとその価値をいかに社会が利用していくかという、次の問題になるわけですけれども、関係する二点について一つずつ意見を述べさせて貰いたいと思います。
まず価値を持っているものを広く利用してもらうためにはデジタル化が大前提になりますが、いま世界中でそれぞれものすごい勢いでデジタル化が進んでいます。例えば地方新聞にしても、新しい書籍や文献も当然ですけど、新しくできたものはほとんど最初からデジタル化されている。それから、興味本位でやっているような古いものも、誰がやっているのか良く分かりませんが、インターネットで調べるとデジタルデータとして意外に出てきます。リソースの限られた中で何を進めるのかという中で、既にデジタル化されている新聞なども含めて、それを取り入れたら良いのではないかと思います。それは怪しいと、これはフェイクかもしれないとかということを言い出すとなかなかできないですけれども、他で進んでいるデジタルデータを取り込んでいくというのも一つとしてあるのではないかという気がいたします。
二つ目は、データをどう使っていくかについてです。リテラシーという議論も随分出てまいりましたけれど、多くの国民にリテラシーを教育することは効率的なのかというとそうではありません。今ものすごくAIも含めサーチエンジンの世界は進んでいて、Wikipediaもそうですけど、単語を入れるとそれに関連するものが大量に出てくる。それも、どちらかというと利用する人達がどんな利用をしているのか、無数のユーザーがどういうデータにアクセスしているかを読み取って、次にそれに類似するような情報を提供していくという、ある意味サーチエンジンも日進月歩と言って良いぐらいに進んでいます。一生懸命整理してこういう風に進めるのが良いと言った瞬間にもう全く違う新しい仕組みができてしまう可能性もあるので、やはりもう少しオープンにして、柔軟に対応なさった方が良いのではないかと私は思います。
以上です。
- 安浦委員長:
- 竹内先生、お願いいたします。
- 竹内委員長代理:
- 先ほど発言させていただきましたのでなるべく手短に申し上げます。
一つ目ですが、やはり基盤の整備がNDLの場合は非常に重要であると考えます。基盤の価値をどこに見出すのかですが、もちろん利活用で使われるということはあるのですけれども、何をおいてもまずComprehensiveであるかどうかであると私は考えております。ですので、そのあたりを明確に目標として示していただいた上でデジタル化にせよ、あるいは紙の資料にせよ、きちんと議論していただくことが重要ではないかと思います。
二点目の利活用の部分ですけれども、情報リテラシーという切り口は非常に重要であるというのは、もうこれは全くそのとおりだと思いますが、やはり情報リテラシーを考える際には、利用者と言われる人たちをどうみるかという難しさがあります。いろいろ議論していくとやはり大学図書館の場合はこう、学校図書館の場合はこう、あるいは公共図書館の場合はこうと具体的な話は必ず出てきます。とはいえ、NDLが情報リテラシーを取り上げることの意味はやはり非常に大きいと思っておりますので、ぜひ検討部会の方で深い議論をしていただければという期待を最後に述べさせていただきます。
- 安浦委員長:
- 野末先生、いろいろ宿題が出ましたけれど、それを踏まえながら一言お願いいたします。
- 野末委員:
- 多様な論点が出てきて、どうまとめるのかちょっと途方に暮れ始めていますが、とはいえいずれも重要な論点でありますので、部会で専門委員の先生方と一緒に考えていきたいと思っております。
私からは二点だけごく手短にお伝えしたいと思います。一点目は先ほど来、先生方の議論をお聞きすると、今回おそらく利用者の側から図書館や情報基盤を見るという観点になると思います。先ほど黒橋委員からの御質問にもありましたが、利用者はやはりちょっとインターネットで調べる、といくわけです。利用者の側が情報を活用する時に、どういう場面であればインターネットで良くて、どういう場面であれば図書館を使うべきでというところの見極めのようなものが大事かなと思います。AIについても同じで、先ほど池谷委員からもありましたけれど、AIでできる部分と人間がやるべき部分というところ、そういう整理を部会で議論する必要があるというのが一点。
もう一点は、民間企業と共同研究して分かったのですが、日本全体でNDLや大学、研究所、様々な民間企業などいろいろなところが同じようなことを考え、進めています。今回この審議会でまとめていく時に、NDLとして何をするべきかということももちろんそうですが、日本全体としてこういう方向に行くべきではないか、その時にNDLが担う部分、NIIや国文研、民間で担う部分を示し、旗振り役を務めることが大事だと思いました。そうしないと海外、特にアメリカには全く勝てないのでぜひ知恵を出し合っていく必要があるかなと思いました。
私からは以上です。
- 安浦委員長:
- 林先生、お願いいたします。
- 林委員:
- ありがとうございます。三点あります、手短に申し上げます。
池谷委員が言われたことと、趣旨としては同じになると思うのですけれども、私の場合高等教育とか大学評価をやってきたので、特に大学において教育者が学習者に図書館を使わせるということのリテラシーをどう育成するか、という事を考えています。海外では大学の教育は教育支援者としての図書館も加わったチームでやるものだという発想で動いているのが、日本の大学の教員はまだ授業は自分がやるものだという認識が強く全然そこまで至っていない。文科省も高等教育でも生涯学び続ける人材を育成するということを言っているので、やはり大学の教育者がいかに大学図書館や、小さな大学だとなかなか大学図書館も十分ではないのでNDLを含めた公共図書館を活用するかということも考慮に入れながら学習者を教育していくかということが重要になってくると思います。まさに野末先生の教育コーディネーターとしての図書館員という良いキーワードがありましたが、学習者だけでなく教育者を含んだ形でリテラシーについてぜひ御検討いただければと思います。
それから二点目ですが、これは渡部先生の御発表を踏まえてですが、公開されたデータの活用状況の見える化です。先ほど松浦委員がおっしゃったように、データを公開することで他の分野の研究者がデータを使い、学術が拡大して開けていくというのは非常に重要なことだと私も思っています。しかし、なかなかどのデータを誰がどう使って何が起きているかというのはよく分からないという状態にあります。海外ですとClarivate社の Data Citation Indexや、OpenAIREなどといったデータの公開データベースができていて、データがどう使われているかというサイテーションが多少整備されてきていますが、まだ完全ではないので、どこにどう使われているかは見えにくいところがあると思っています。そもそもデータの引用方法が未整備であるということもありますし、あるいはデータを使った研究をどう蓄積していくか、そういう問題もあるかもしれません。
三点目、これは特に科学技術政策等のところですが、今どこの国に行ってもインテリジェンスということばを言っていて、結局今科学技術の研究開発で何が新しいエマージングな研究トピックであって、国がどこに投資すべきかという議論を皆がしています。それを研究論文データから見る場合が多かったのですが、最近は論文データのような研究から二、三年経って出てくるものだけだと不十分ではないかという議論もあり、どんなデータまで拡大してインテリジェンスを確保していくかというのは大きな問題だと思っています。NDLだと調査及び立法考査局が科学技術政策について各分野のことを調べているわけですが、おそらく一番近いところのユーザーはそこです。そんなに簡単な話ではないとは思っていますが、今後科学技術で何を考えなければいけないかということを議論しようとした時に、このNDLが集めているデータからAIを使っていかに情報を出して議論ができるようになるかをぜひ目指していただければと思っております。
以上です。
- 安浦委員長:
- 松浦審議官、お願いいたします。
- 松浦委員:
- 他の委員の先生方もいろいろ重要な点をおっしゃっているので、重ならない部分としては、やはり予算面かと思います。補正予算頼みでなかなか基盤整備が計画的に進まない点は、我々も同じような認識を持っています。大きな施設設備の整備などは補正予算頼みである一方で、やはりそういう基盤の部分は保守運用や整備含めて、ある程度きちんとリソースを計画的に確保して進めないといけないという意味では、抱えている課題はかなり似ているので、文科省や内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)などを含めていろいろ横の連携を取りながら財政当局とあたっていく必要があると思いました。
- 安浦委員長:
- 村山委員、お願いいたします。
- 村山委員:
- 雑駁な話の連なりになってしまうかもしれず、重なる部分もあったらご容赦ください。
国際的な視点から科学技術情報を考えると、他国のファンディングエージェンシーでは現在すでにリサーチアウトプットとして、リサーチペーパーだけでなく、データ、ソフトウェア、サンプル、プロトコル、プロシーディング・マテリアル全般を含めて考えるなど、ランドスケープが広がっています。しかしながら、この場ではNDLがお持ちの情報基盤、つまり文献書籍にフォーカスを当てて議論することが主になるかと思います。つまり、現代の広がったランドスケープの中で、NDLが果たす役割を検討することになると思いますが、その中で今回の生成AI時代のリテラシー、情報リテラシー向上、科学技術情報基盤の整備と利活用というテーマを上げていただいているのは時宜を得た大変すばらしい方向性だと思います。
情報リテラシーについて申しますと、野末先生のお話にもありましたように、図書館を利用し情報を使うたびに学びになるという視点と、国民に開かれたNDLという視点をかけ合わせると、NDLは国民に対して生涯にわたる学習機会を与え続けると考えられます。
その中で生成AI等の大変革新的なツールが今開発されて、情報の扱いが変わっていくという面で、どのようにAIも活用するかは一つの問題です。同時に、AIの専門家でない身で申し上げるのも恐縮ですが、最近は、生成AIの出力したデータだけを学習し続けた生成AIモデルは崩壊するという論文が出たということを聞きます。今のテクノロジー、今のAIモデルがそうだというだけで、今後どんどん改善されると思うのですが、やはりNDLが管理されているような人間が作った情報資産というものを、いかに重要視して、基盤構築していくかは非常に重要だと考えます。レファレンス・サービスも同様で、AIに全てを委ねるのではなく、AIツールをどのように使うかという専門人材、人が判断するというところと、AIを活用するというところが上手くバランスをとって将来像を作ることも重要です。そういう意味で私が常々申し上げて恐縮ですが、日本ではリサーチライブラリアン、図書館体制や図書館学そのものを図書館内で研究するポジションというものが我が国では制度上、非常に容易ではないですけれども、そういった視点も含みながら図書館の将来像を考えてAI等を使っていただきたく思います。
基盤というのはあくまでも基盤だという御意見がありましたけれども、利活用という点では、基盤に入れた情報が即座に使われる場合ばかりではなく、例えばきわめて長期間の学術ジャーナル論文を蓄積した欧米の基礎力に、日本の科学力というのは支えられて発展してきました。今後の日本でも、即座に利活用されることとあわせて、長い目で基盤を構築し日本の競争力の増強ならびに世界に貢献していくという観点は重要だと思います。インターネットも今は非常に活用されていますけれど、私の調査したところでは最初のIPプロトコルの定義から、アメリカ政府の公的資金の投入終了まで40年間かかっているそうです。一つのテクノロジーは、すぐに見通せる程度の期間だけではなかなか完成しない、活用されるに至らない場合も少なくない、そうした技術史観、科学史観の上での知的生産物の価値があると思います。そうした人類の価値、社会の価値、あるいはそれこそが日本の成長の伸びしろであるとも考えられないでしょうか。そういう視点を持って情報基盤を捉えなおす、そういうヒントになる生成AI時代の情報リテラシー、情報基盤というテーマも含むのでは、と拝見しました。
- 安浦委員長:
- 渡部先生、お願いいたします。
- 渡部委員:
- 話す機会をいただきましたので、ごく簡単に申し上げます。
本当にNDLにはどんどん引っ張っていただければ、御指導いただければと思っていますが、やはり教育とのかかわりというのは皆さんおっしゃっていて、本当にそのとおり、役割は大きいなと思います。
ただ今回はデータの利活用促進のための環境整備というところで、お話しさせていただきたいのですけれども、私達の分野、人文学の領域ではやっとデジタルというものに対する関心が起ったような状況です。そうすると、それぞれ個人がたくさん持っているデータをもうとにかくどんどんオープンデータ化していきたい、そのためにはどうしたら良いのかというところです。NDLみたいにしたいけれど、どのようにそういうデータを繋げたら良いのか、公開していったら良いのか、どういう基準でやったら良いのかということが皆分からず五里霧中であります。私たちももちろん持っている知識で対応しつつ、協力を仰いでいるわけです。特に著作権関係、これは日進月歩だし、本当によく分からないので、進むに進めない状態がたくさんあって、データがいわばまだ死蔵されている状況にあります。NDLにはぜひデータを持っている人への教育という点でも先駆的な役割を果たしていただけたらと思っております。
以上です。
- 安浦委員長:
- 今日ご参加いただいている専門委員の先生は、今後部会で御議論いただきますので、一言ずつで恐縮ですけど、これからの取組に対する抱負をお願いしたいと思います。生貝先生、いかがでしょう。
- 生貝専門委員:
- 改めまして、前回の基本計画への提言から参加させていただいて、二度目になります。
本業はデジタル技術に関わる法律と政策を研究しているもので、簡単に二点だけというところです。
ここで言うデジタル知識基盤、我々の言葉でいうデジタルアーカイブと、私が本業にしているような総務省や経済産業省やデジタル庁がやっているデジタル政策の世界との間に実はすごく距離があったというのを最近まで感じていました。しかしこの生成AIの時代になってやはりいろいろな意味で急速に近づいてきています。一つは今デジタル政策全般の中で大きな問題になっているフェイクニュース、偽・誤情報について、例えば総務省でちょうど検討の中間報告が出ているところですけれども、様々な法規制で対応していく方法がある一方、まさにここで議論されてきたように信頼できるデジタルの知識をどう提供していくかが大変重要です。そこに対してデジタル知識基盤をどのように役立てていけるか、非常に力を入れて考えていくことができれば良いと思います。
二点目としてやはりAIでございます。すでに学習データとしてOCRデータ提供の取組について御紹介がありましたが、これからさらにグローバル企業を含めた民間企業に提供をしていくのかどうか、いくとしたらどのような条件や契約によってか。そのことはおそらくAIのルール作りというところにも、極めて大きな役割を果たしていく部分があるでしょう。そのようなデジタル社会構築全体の中にNDLがどのように位置付けられるのか、改めて考えてまいりたいと考えております。
よろしくお願いいたします。
- 安浦委員長:
- 池内先生、お願いいたします。
- 池内専門委員:
- AI時代の情報リテラシーといった時に、情報を取りに行く部分と、そしてそれを使いこなす部分の二段階があると思っています。いずれにもおそらくAIが非常に大きな役割を果たしますが、個人的には特に使いこなす方にどうAIを使っていけるかすごく期待をしています。今までセグメントの話やターゲットの話が出ましたけれども、AIを使えば、専門家でなければ理解が難しかった部分に関しても、例えば翻訳や要約、子供にもわかる言葉に書き換えるなどでそういった情報を使えるようになることを期待しています。話を広げて恐縮ですけれども、そこから出てきた新しいものを可視化して、AIの利活用を促進する方向を目指して議論をしていければと思っております。
以上です。
- 安浦委員長:
- 大向先生は御欠席です。
様々な御意見をいただきました。本当にそれぞれ私も賛同するところでございますけども、私からも二点ほど。一点は、NDLが対象とする空間をどうするかという問題です。資料3-2の5ページに対象とする空間が描かれており、いわゆる図書・出版物・文献そういったものが中心になると思いますけども、それが表わしているものが、政治的な思想もあれば科学技術の成果あるいは解説である部分もあれば文化そのものでもあるわけです。そのどこに焦点を当てるのか、どの部分はもうNDLとしては見ないのか、この図をもう少し精緻化していただいて、先ほどから出ていますように国全体でNDLが扱わない部分はどこが扱うのか、竹内先生がおっしゃったように国の施設等がいろいろありますので、ここから先は文書館に行くとか博物館に行くとかその辺をクリアにしていっていただきたい。特に映像とか音声とかそういったもの、あるいは文化という面で考えると歌の歌詞はその時代時代の文化をそのまま映しているわけで、そういったものをNDLの対象にするかどうかという問題まで出てくると思いますので、そのあたりは部会でもぜひ御議論いただきたいと思います。
もう一点は国際的な視点の問題で、国民に対するサービスであるということはもちろん重要ですが、日本が世界からどう見られるか、世界の日本研究者が拠り所とするのは多分NDLのデジタルデータだと思いますので、これをどう考えるか。一つは、時の政権から独立した立法府の組織であるためある種の中立性を担保できるという観点と、それと同時に林先生から出ましたインテリジェンスという視点で見た時にインテリジェンスもオープンにするだけがポイントではなくて、公開しないけど置いておかないといけない文書というのもあるのかもしれない、そういった問題も含めたデータの取り扱いをどうするか。このように国際性と対象空間をクリアにする、この二点を私からはお願いしたいと思います。
- 9. その他
- 安浦委員長:
- 以上、本日いろいろ議論が白熱したのでだいぶ時間が延びましたけれども、皆様方、貴重な御意見・御議論をいただきましてありがとうございました。NDLにはぜひ今回いただいた御意見を参考にして、取組を進めていただきたいと思っております。また、次の基本計画のための提言の議論を行い、素案を作っていただく野末先生以下部会の先生方はよろしくお願い申し上げます。それでは事務局から連絡事項を連絡していただきたいと思います。
- 福林科学技術・経済課長:
- 本日の審議会の議事録につきましては、案がまとまり次第委員の皆様にメールでお送りいたします。御多忙のところ大変恐縮ではございますけれども、内容の御確認をお願いいたします。確認が終わりました議事録については、委員長に御承認をいただいた後、ホームページで公開いたします。本日は貴重な御指摘、御提案をありがとうございました。次回の審議会につきましては、来年7月頃に予定をしていますので、具体的な日程についてはまた改めて御連絡いたします。引き続きよろしくお願いいたします。
- 10. 閉会
- 安浦委員長:
- それでは、予定しておりました議事は全て終了いたしました。これにて閉会したいと思います。委員の皆様方には、質の高い御議論を賜りまして感謝申し上げます。ありがとうございました。
- (閉会)
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