館長挨拶
ご挨拶
国立国会図書館への日頃からの皆様のご支援、ご協力に心から感謝申し上げます。
当館は「国立国会図書館ビジョン2021‐2025―国立国会図書館のデジタルシフト―」を策定し、「ユニバーサルアクセスの実現」と「国のデジタル情報基盤の拡充」を目指した活動を行っております。
ビジョンのタイトルにもあります「デジタルシフト」については大きな成果をあげてきております。令和7年3月末時点で、当館のデジタル化資料446万点のうち、インターネットで公開中の資料は65万点、デジタル化資料送信サービスを通じて提供可能な資料は204万点にまで拡大いたしました。
また、直近の進捗では、来館せずに受けられるサービスとして、当館の所蔵資料(デジタル化資料を含む)を対象とする遠隔複写(PDFダウンロード)サービスが新たに加わり、令和7年2月20日からご利用いただけるようになりました。
令和7年度は現ビジョンの最終年となり、いよいよ次期ビジョンに関する検討を本格化していく時期となります。国立国会図書館はこれまで納本図書館として、図書、雑誌、録音・映像資料など、形のある出版物の網羅的な収集を進めるとともに、現ビジョンの「デジタルシフト」にもあるとおり、電子書籍・電子雑誌のような、いわば形のない出版物の収集も進めてまいりました。しかし、現代の社会においては、インターネット、特にSNS等の普及により、これまで比較的明確であったパブリックな情報と個人的なプライベートな情報の垣根がなくなり、多様なしかも膨大な情報がデジタルで流通しています。社会における現状を把握し、後世に伝えるためには、これらすべての情報を保存していくことが理想かもしれませんが、現状では不可能です。
次期ビジョンでは、常に変化し、瞬間的に消え去るデジタル情報を含めて、日本唯一の国立図書館として何を収集し、保存していくのか、多様な情報にアクセスできるようにする方策を検討することが大きな課題であると考えます。さらにそこで構築される紙とデジタルを統合した知の基盤を、国会活動への補佐に活用し、できるだけ多くの方々にその基盤を利用していただけるためにどのようなサービスを展開していけるのかを考えていくことも同時に大きな課題といえます。
国立国会図書館が構築する知の基盤が豊かな社会の形成に貢献していけるよう、関係者を含め広く国民の皆様のご理解とご支援を得ながら、これからも国立国会図書館としての役割を果たすべく模索を続けてまいりたいと思います。
令和7年4月
国立国会図書館長 倉田 敬子