令和5年度第2回 国立国会図書館活動実績評価に関する有識者会議 議事概要
1.開催日時
令和6年3月5日(火曜)13時から15時まで
2.開催形式
Web会議システムによるリモート開催
3.構成員
- (座長)糸賀 雅児(慶應義塾大学名誉教授)
- 只野 雅人(一橋大学大学院法学研究科教授)
- 田辺 国昭(国立社会保障・人口問題研究所所長)
- 呑海 沙織(筑波大学副学長、筑波大学附属学校教育局教育長)(欠席)
4. 国立国会図書館出席者
山地副館長、木藤総務部長、小澤総務部企画課長
5. 主な会議内容
令和6年度国立国会図書館活動実績評価の枠組み(案)について国立国会図書館(以下「NDL」という。)から説明を行った後、有識者会議構成員(以下「有識者」という。)による意見交換を行った。意見交換の概要は、以下のとおりである。
事業分野1について
有識者:
著作物のメール送信は、近年の著作権法改正の中のどれかに該当するサービスなのか。
NDL:
令和5年に著作権法第42条が改正され、立法又は行政の目的のための著作物の利用について規定が設けられた。その結果、複製は今までも可能だったが、新たに著作物を公衆送信できることになった。国会議員の先生方からも回答をメールで受け取りたいという希望が今までに非常に多くあったため、制度が整備されてそれが可能になったことは、サービスの向上であり良かったと考えている。
有識者:
国会議員の先生方にとっては大変助かるだろう。この場合、著作物の一部にとどまらず、全部を送信できるという理解でよいか。
NDL:
そうである。立法目的のために著作物が必要になる場合であるため、著作権法第31条のように半分までといった制限はない。
有識者:
これは大変便利だと思う。著作物のメール送信は、関連指標ではどこに反映されるのか。
NDL:
指標1「依頼調査の処理件数」に反映される。
有識者:
理解した。
有識者:
戦前期分の帝国議会会議録のテキストデータの提供は、研究者にとっては非常に助かるだろう。加えて帝国議会議事印刷資料と書かれているが、これは議事録以外でその議会関係で作られた資料全般というイメージでよいか。
NDL:
帝国議会議事印刷資料は、帝国議会で作成、印刷、配布された会議録や公報、議案類等である。今回、当館が所蔵する議事印刷資料のうちまだデジタル化されていないものと、当館未所蔵のうち衆議院事務局又は参議院事務局が所蔵しているものについて、デジタル化することを考えている。
有識者:
アクセス数の増加に直ちに繋がるものではないだろうが、非常に意義のあるものだと感じた。
有識者:
二点ある。一点目は「国内外の大学や調査研究機関等及び海外の議会関係機関等との連携を強化」するという箇所について、海外の議会関係機関との連携はイメージできるが、国内外の大学や調査研究機関との連携はどのように行っているのか、具体例などがあれば教えてほしい。二点目は、令和6年度に総合調査プロジェクトで「人口減少と地域の課題」を採り上げるのは、タイミングとして適切だと感じた。令和5年12月に国立社会保障・人口問題研究所が地域別将来推計人口を公表し、ようやく市町村レベルで2050年、2070年頃までに何が生じるのかが分かるようになったので、それによって地域の課題がかなりあぶり出されてくるように思う。ただし、地域によって人口動態が大きく異なるため、東京や大阪などと地方では抱える課題がかなり変わってくると予想される点には注意する必要がある。取りまとめの際には気を付けてほしい。科学技術に関する調査プロジェクトの方の3件は、テーマとして妥当という印象であり、確実にまとめてもらえればと思う。
NDL:
一点目について、例えば科学技術に関する調査プロジェクトは、毎年委託などの形で外部の機関と連携して行っている。
有識者:
国内外、特に国内の大学との連携についてはどうか。
NDL:
NDLの調査及び立法考査局が企画しているプロジェクトの中に公募型のプロジェクトがあり、特定のテーマの調査を、大学に限らず研究機関、法人などからも企画競争の形で募集し、委託している。大学と連携したプロジェクトは、科学技術に関する調査プロジェクトの中で行っているものが最も多い。加えて、NDLが調査主体となるプロジェクトにおいて、大学の先生に客員調査員として参加していただく機会も多くある。また、二点目の人口問題についての御指摘については、調査及び立法考査局とも共有し、来年度に実施する調査の参考にさせていただく。
有識者:
承知した。
有識者:
科学技術に関する調査プロジェクトの予定テーマの一つに「デジタル時代の技術と社会」がある。このテーマについては、生成AIや人工知能をこれからの日本の社会でどのように扱い、位置付けていくかが喫緊の課題だと思う。「デジタル時代の技術と社会」とはかなり一般的なタイトルの付け方だが、生成AIや人工知能の問題を含めたテーマ設定だと理解してよいか。
NDL:
生成AIも当然何らかの形で扱うものと考えている。補足すると、令和5年度も同じテーマで調査を実施しており、もうすぐ報告書が刊行される。「デジタル時代の技術と社会」というテーマには、マイナンバーなどの基本的なものに加えて、御指摘のAIなども含まれる。引き続き来年度も、デジタル社会とはどういうものかを調査していきたい。
有識者:
指標6「国会会議録検索システムのデータへのアクセス数(一般向け)」について、従来は「インターネット経由」だったものを「一般向け」に変更したということだが、その理由は何か。一方で指標3「国政課題に関する調査研究のアクセス数(インターネット経由)」は引き続き「インターネット経由」であり、「一般向け」ではない。国会会議録検索システムには「国会議員向け」というものがあるために、指標6は「インターネット経由」から「一般向け」に直したということか。そうだとすると、議員向けと一般向けでそれぞれアクセスが別々にカウントされるという理解でよいか。
NDL:
指標6の名称を変更した理由は、システムリプレースがあり、国会会議録検索システムがパブリッククラウドに移行したことで、これまで国会内からのアクセスはインターネット経由ではなくローカルネットワーク経由だったものが、国会内からのアクセスもインターネット経由になったためという内部的なものである。なお、指標3が対象としている調査研究へのアクセスについても、国会内からアクセスするインターネット経由ではない経路が別にあり、ここでは特に国民からのアクセスの方をカウントするということで「インターネット経由」としている。
有識者:
活動実績評価というのは国民に対する説明責任の一環でもあることを踏まえると、少々分かりにくいのではないか。指標3も指標6も、一般の国民からのアクセス数をとらえるためのものという点が同じなのであれば、両者の表現を統一した方が、見る側からは分かりやすいように感じる。
NDL:
御指摘のとおりであるため、指標3、指標6ともに「一般向け」に統一する方向で検討する。
事業分野2について
有識者:
オンライン資料収集制度について、民間が発行したものであってもNDLは無償で収集できると昨年度に説明があったが、令和6年度以降も引き続き無償での収集になるのか。その場合、今回は表現として「安定的に」との記載はないが、オンライン資料のうち有償のものやDRMが付されているものについて安定的な収集が確保できるのかどうか、見通しを聞かせてほしい。
NDL:
まずオンライン資料の収集に当たっての補償については納本制度審議会で議論され、送付する場合の媒体費用や郵送費用を除き補償は行わずに収集させていただくということになった。その上で、実際に収集することの難しさについては御指摘のとおりである。そもそも何が今刊行されているのかを網羅的に把握すること自体が難しい課題であり、出版者側のシステムとの連携等により把握していこうと努めているところである。この収集制度を安定的にきちんと進めていくという点は引き続きの課題であると考えている。
有識者:
令和5年度の枠組みと比較すると、今回の令和6年度の枠組みには「出版者等の協力を得つつ安定的収集を図る」という一文がなくなっている。NDLとして安定的に収集していく努力は継続しなければいけないと思うが、有償か無償か、また実費だけの補償かといった金銭的な問題が絡むのかと思い質問した。長期的には、安定的な収集が図れる体制を取るべきだろう。
NDL:
オンライン資料の収集に当たり、出版物本体に対する補償を行うことは難しく、無償ということで始めることとなった。少しずつ制度の周知を図りながら進めているところだが、周知がまだまだ行き届いてないということは強く感じている。安定的という段階に行くまでには、制度の存在を知らない層に対してどのように働きかけていくかが重要である。そのためには、やはり出版界との協力が引き続き大事かと思う。どのようなものが集まっているか、あるいは集まってないかをよく調査するとともに、周知広報の活動を続けていくことで、結果的に安定的な収集を実現できればと考えている。なお、「出版者等の協力を得つつ安定的収集を図る」の記載は、令和6年度の枠組みでも重点事業に係る事業分野②の中にある。安定的収集を図る上で出版者等の協力を得ることが一番重要であるとの考えに変わりはなく、その点をNDLがないがしろにしているということはない。
有識者:
重点事業に係る事業分野②でこの文言が出てくることは理解した。NDLの重要な事業だと思うので、事業分野2には記載がないため言及した次第である。いずれにしてもそのあたりの配慮は今後NDLとして必要である。また、場合によってはこの事業分野2の指標9「国内出版物の納入率」と同じような考え方で、オンライン資料の納入率といった指標も将来考えられるのか。令和6年度から直ちにその指標が必要だとは言わないが、長期的にはそのような指標も考えているのか。
NDL:
電子出版物については分母の範囲が分かりにくく、納入率という形で指標化するのが現在かなり難しい状況である。指標の設定という問題にとどまらず、納入されていないものに対して今後督促をかけるに当たっても、その出版状況をいかに把握するかが課題となる。出版状況の把握という課題がクリアされたら、納入率について指標化することもあり得ると考えている。
有識者:
そういった問題の所在をあえて指摘した。NDL側でもその問題については十分把握しているようなので、今後何らかの動きがあることを期待したい。
有識者:
指標16「書誌データの利用」の「②うち、MARC形式の書誌ダウンロード件数」について、令和3年度と令和4年度に関しては旧国立国会図書館サーチからのダウンロードであるため上段に括弧で表記していると理解したが、令和5年度は上段と下段で併記され、令和6年度からは下段だけになっていくということでよいか。
NDL:
そのとおりである。
有識者:
関連して、書誌データを販売している民間企業との棲み分けはどうなっているのか。
NDL:
小規模な図書館では、無料であるNDLの書誌データに利用価値があるだろう。大学図書館等ではNDLが提供する書誌データも民間が販売する書誌データも両方使っていると思われるが、情報の速さや書誌の性質などで使い分けているのではないか。例えば古い資料や官庁出版物についてはNDLに強みがある。
有識者:
おのずと棲み分けがなされているのであれば問題ないが、NDLの場合は無料なので、民業圧迫は避けるべきである。指標を見ると書誌ダウンロード件数が増えているが、ダウンロード件数が増えれば手放しで喜べるのかが疑問だったので質問した次第である。例えば内訳で古い資料の書誌データがどの程度利用されているかを示すなど、民間との棲み分けが分かるようにしておく必要はないか。
NDL:
ダウンロード件数が年間20万件程度であることや、フォーマットがMARCであり図書館以外にそれほどニーズがあるデータ形式ではないことから、民間企業への影響は限定的と考えている。民間企業側でもお金を払って買ってもらう商品にするための工夫をしており、NDLが提供する書誌データとの差別化は十分に図られていると認識している。また、NDLで書誌データを作成するに当たっては、民間企業の書誌データを購入した上で元データとして使用しており、その点でも民間と対立する形で行っている事業とは考えていない。
有識者:
NDLなりの工夫をして民間との棲み分けを図っていると理解した。指標としても当面このままでよいと思う。
事業分野3について
有識者:
「遠隔複写(PDFダウンロード)」について、デジタル化資料は従来から利用者登録などをすれば遠隔で見ることができるが、今回のサービスは、それとは別に、例えば従来は紙媒体で提供されていたものをPDFファイルで提供するという理解でよいか。
NDL:
御理解のとおりである。今まで紙の資料の複写については紙のコピーをお送りしていたが、それをPDFファイルでお送りすることになる。また、デジタル化資料の中にはNDLの館内でしか閲覧できないものがあるが、それらも同じようにPDF化してダウンロードできる対象となる。
有識者:
関連して、従来からの指標21④「インターネット経由申込複写について、受理から発送までに要した日数」があるが、PDFファイルで提供されるとなるとそちらを選択する人が多いのではないか。PDFファイルは紙よりも早く提供されると思うので、実績値に影響があるような印象を受けるが、いかがか。
NDL:
図書館等公衆送信サービスについては著作権の権利者等に補償金を払うということになっており、金額が従来の複写サービスとかなり異なってくる。そのため、利用がPDFダウンロードの方にどの程度流れるかはまだ分からない状況である。また、提供までの早さについては、元が紙の資料の場合、それを出納し、スキャンしてPDFファイルを作るまでに要する時間は、紙のコピーを作る場合と実はあまり変わらないと見込んでいる。紙のコピーの場合はその先の郵送に時間がかかるのに対し、PDFダウンロードの場合はファイルをアップロードすればそれを利用者の方ですぐにダウンロードできるので、その分のみ短縮の効果が生じる。つまりイメージと異なり、提供までに要する日数の短縮は、限定的なものとなる想定である。指標については、発送するまでの日数を指標にしており、発送した後郵便で到着するまでの日数は指標に含まれていない。ただ、電子ファイルで欲しいというニーズはそれなりにあると思われるため、サービスの在り方が変化する可能性はあると考えている。
有識者:
よく分かった。
有識者:
今話があったように、利用に当たって補償金を支払う必要が出てくる。当然これは受益者、つまり利用者が支払うことになるが、その支払方法はどうなるのか。また、補償金規程では、著作物によって1ページ当たりの単価などが細かく分かれているが、実際に著作物のPDFファイルを送信してもらうのにどれくらいかかるのか。
NDL:
支払方法については、NDLの場合は複写料金と併せて振り込んでもらう形になる。申し込んだ時点で補償金の額をシミュレーションし、システム上に試算結果を表示するような仕組みを考えており、申込みが完了する前に補償金の概算が利用者に伝わるようにシステムを組み立てている。金額については、御指摘のとおり図書館等公衆送信補償金管理協会(SARLIB)が決めた規程がある。図書、雑誌、新聞など資料種別によって細かく分かれているため具体的なところはここでは示さないが、通常の複写料金の感覚からすると、おそらく非常に高額に感じられるのではないかというような補償金の設定となっている。
有識者:
NDLは入金を確認してから作業するのか、それともNDLが製品を送信してから利用者が代金を振り込むのか。こういうものは電子決済ができると良いと思うが、いかがか。
NDL:
NDLの場合は後払いであり、製品を入手した後で払い込んでもらう形である。製品が届いてから払い込んでもらう点は現在の複写サービスと変わらない。電子決済については、手数料の問題に加えて、複写物を作成し量が確定して初めて金額が決まる製品であるという事情があるため、ネットショッピングのような形をそのまま導入することができず悩ましいところである。それができれば、料金の回収という課題が解消するので良いのだが、今のところは実現していない状況である。
有識者:
実際の運用が始まってみないと、どの程度の需要があり、どのような資料が求められるのかはよく分からないということのようである。いずれサービスが安定した段階では、改めて指標を導入することも考えられよう。
有識者:
PDFダウンロードはクレジットカードでの支払いはできないのか。
NDL:
NDLの場合、複写の実務の部分は法定委託という枠組みで複写受託センターというところに委託しているが、その事業規模などからするとクレジットカードの手数料がかなり負担になるという事情がある。国外居住者に限っては、銀行振込等では利用者の手数料負担が高額になるためクレジットカードでの支払いを認めているが、国内の利用者については、PDFダウンロードに限らず複写サービス全般についてクレジットカードでの支払いは導入できていないのが実情である。
有識者:
今の話に関連して、国外居住者もPDFダウンロードの対象になるのか。著作権法は日本国内の法律であるため、国外居住者は対象外というような説明を以前聞いた記憶があるが、法改正で可能になったのか。
NDL:
PDFダウンロードについては国外居住者も対象である。一方で、デジタル化資料送信サービスについては、送信先の国の法律で合法かなどの問題があり、要件が非常に厳しい。そのため、個人向けデジタル化資料送信サービス(個人送信)は現在のところ国内居住者に限っているという事情がある。
有識者:
理解した。国外での利用の幅がだいぶ広がったように思う。図書館向けデジタル化資料送信サービス(図書館送信)については、国外の特定の図書館と何らかの契約をしておき、そこであれば見られるといった形で送信することは可能なのか。
NDL:
御認識のとおりであり、国外の図書館から申請してもらう際、その国の法律上問題がないことを契約のような形で明記してもらう条件となっている。この点は、国外の図書館の方々から、なかなか厳しい条件であるという意見を頂いている。このような事情から、国外図書館への送信は可能ではあるが、登録済みの国外の図書館は、数はそれほど多くない。
有識者:
承知した。国外で入手困難な資料が欲しい人は、恐らく大半は研究者だと思う。今の日本研究では非常に細かい事柄の調査が行われており、入手困難な資料が必要な場合も少なくないので、もう少し広がれば良いと思った。徐々に拡大していってほしい。
NDL:
NDLでもその点は課題として認識しており、送信先を広げていく方向で関係者との協議を進めることを考えている。図書館送信も、今までは国外の図書館ではプリントアウトはできなかったが、令和6年4月からはプリントアウトできるようになるなど、少しずつではあるが拡大する方向で進んでいる。
有識者:
個人送信と遠隔複写(PDFダウンロード)は、補償金の要・不要や扱われる資料の範囲の点でサービスの性質がかなり異なるのだろう。NDLとしては徐々に各種サービスの対象のハードルを下げ、より多くの方が利用できるような方向で尽力しているようである。今後のサービスの展開によって需要が大きく伸びていく可能性もあり、見守っていきたい。
有識者:
指標21「遠隔複写」の「③電子情報からの複写枚数」は、デジタル化資料からのプリントアウトを遠隔複写サービスで要求された場合の提供枚数という意味合いか。ここだけ「電子情報」という言葉が出てきて、若干分かりにくい。この電子情報というのは、デジタル化資料以外に元々電子であった資料も含めてプリントアウトが要求された枚数という理解でよいか。
NDL:
表現がやや分かりにくいかもしれないが、この「電子情報からの複写」はプリントアウトを意味している。
有識者:
理解した。ここだけ電子情報という表現が出てきたのが気になったため質問した。
有識者:
指標26「デジタル化資料送信サービス(個人向け及び図書館向け)」について、これが先ほどから議論になっている個人送信と図書館送信についての指標ということになると思う。この指標の表現は過去の有識者会議で何度か指摘しており、以前に比べてずいぶん分かりやすくなったので、その点は評価したい。また、令和4年度の実績値について、「③個人向けデジタル化資料送信サービス利用者による閲覧件数」と「④個人向けデジタル化資料送信サービス利用者による複写件数」に丸括弧に入った数字がある。これは令和4年度の途中から始まったサービスであるために丸括弧に入っているという理解でよいか。
NDL:
御理解のとおりである。
有識者:
令和4年度の途中から始まったサービスであり、通年の実績値ではないが、令和5年度実績値と比較するための参考数値として丸括弧に入れて示したものと理解した。一方で、③④の件数が増えていくことにより、今度は「⑥図書館向けデジタル化資料送信サービス承認館における閲覧件数」及び「⑦図書館向けデジタル化資料送信サービス承認館における複写件数」は、単純に考えて減少していくのか。個人送信の利用が増えれば図書館送信の利用は減ると考えてよいのか、感触が分かれば教えてほしい。
NDL:
手元の資料によると、令和4年度と令和5年度を比較すると、図書館送信の複写件数は減少しているが、閲覧件数は増加している状況である。「⑤図書館向けデジタル化資料送信サービス承認館数」が引き続き増加していることからも、個人送信の利用が増えれば図書館送信の利用が減るというわけではないようである。推測ではあるが、個人送信を利用するためにはNDLに利用者登録をする必要があるのに対し、図書館送信は登録済みの地元の図書館で利用できるので、手続が簡便ということがあるのかもしれない。また、図書館側も、来館すればNDLの資料が利用できることをアピールしているケースがあるようである。シニアなどで個人送信に必要なデバイスを持っていない層が地元の図書館を活用しているようでもあり、個人送信の利用と図書館送信の利用が必ずしも反比例の関係にはならない印象である。図書館送信はもう少し長い目で見ていくべきと考えている。
有識者:
利用動向について、最初に利用登録し、試しにいろいろ見てみようとする人は多いはずであり、閲覧件数は一時期に伸びるだろう。その後実際に必要なものを複写するわけなので、複写件数の伸びには至らないまでも、まずは登録してどんなものかアクセスしてみようという人は多いはずである。いずれにしても、利用者がNDLの資料をどれだけ、またどういう手段で活用しているのかはきちんとモニタリングしていった方が良い。それに応じてNDLもサービスの体制を整えていくことが、まさにPDCAのサイクルを回していくことになる。このような指標の推移は変動要因とともに見守ってほしい。
有識者:
指標26「②個人向けデジタル化資料送信サービスの利用規約に同意した登録利用者数」に関連して、利用者登録は一度登録したらずっとそのままなのか。一旦登録してそのまま生涯有効では、実人数は把握できない。登録利用者数は必要な指標だと思うが、更新や有効期間はどのくらいなのか。
NDL:
3年間利用しないでいると失効となる。
有識者:
理解した。実際に利用している人数をNDL側が常時把握していくことは必要だと思う。
事業分野4について
有識者:
指標38「ジャパンサーチ」と指標39「レファレンス協同データベース」について、以前も指摘したが、新規データ数は指標にしないのか。
NDL:
ジャパンサーチとレファレンス協同データベースについて御指摘いただいたが、指標37「国立国会図書館サーチ」についても累積のストック値を採用している。以前は国立国会図書館サーチで新規データ数を指標としていた時期があったが、データの全件入替えなど、技術面や他律的な要因で増減が激しいため、令和3年度の枠組みから累積データ数に変更したという経緯がある。活動実績評価の指標では原則としてフロー値を採用しているが、サービスの性質、年度ごとの数値の増減の大きさ、システムの制約などを踏まえて、フロー値とストック値を使い分けている。指標37~39の連携に関するデータ数については、今申し上げたような事情からも、ストック値で変化を見ていきたいと考えている。
有識者:
削除されるものや減るものもあるだけに、ストック値だけでなくフロー値も必要ではないかと感じる。特にレファレンス協同データベースは、新しいデータがどれだけ入ってくるかを見るべきであるような気がする。検討の上でこのような結果になったのであれば致し方ないので、令和6年度以降もこの形で続けていくということは承知した。
有識者:
指標40「みなサーチ」について、多くの場合は視覚障害者が利用するようだが、「②ページビュー数」という指標を掲げており、「ビュー」という表現を用いてよいのか、若干気になった。
NDL:
みなサーチについて指標名を「ページビュー数」としているのは他の指標にならっており、基本的には同じ内容を表すのに異なる用語を用いるべきではないと考えている。これまでNDLの内外で多くの視覚障害者の方と接してきたが、視覚障害者の方も、スクリーンリーダー等で読んだ、把握したという場合に、比喩的に「見る」という表現を用いることがある。そのため、「ページビュー数」という指標名で特段問題ないと考えている。
有識者:
考えすぎであればこのままで構わない。
重点事業に係る事業分野①及び②について
有識者:
重点事業に係る事業分野①の関連指標である指標32「視覚障害者等用データ送信事業」の「①新規データ数」について、令和3年度と比較すると、令和4年度はデジタル化資料から作成した全文テキストデータによって大幅に増えている。これを見ると、デジタル化とユニバーサルアクセスは非常に親和性のある事業だと思った。
NDL:
御理解のとおりである。資料をデジタル化した画像データの状態では視覚障害者が利用することはできず、画像データにOCRをかけてテキストの状態にすることで初めて利用可能になる。障害者の方にも資料が利用可能になるということは、デジタル化事業の大きな意義の一つであると認識している。
有識者:
重点事業に係る事業分野②の「他機関のデジタル資料の収集・移管…等、多面的な取組によってデジタル資料の長期保存を目指す」という部分についてだが、同じような問題を国立公文書館も抱えている。国立公文書館では、デジタル化に当たり長期保存に最も適した形式は何かという研究を長年継続しているものの、いまだ結論には至っていないようである。国立公文書館の場合は、保存のフォーマットをどうするかという問題と、公文書作成に当たって各省庁等で用いるデジタルのフォーマットをどうするかという問題がリンクしているので、NDLとは状況が違うだろうとは思うが、NDLで長期保存に適した形式の研究をしているのであればその状況について教えてほしい。
NDL:
国立公文書館とNDLで状況が違うというのは御指摘のとおりかと思う。国立公文書館の場合、文書作成ソフトで作った電子情報をそのまま保存することが必要になる場合がかなりあるだろうと思われる。それに対し、NDLでは、例えばオンライン資料の収集の場合、現行の制度ではPDF、EPUB及びDAISYの三つのフォーマットを指定している。また、ウェブアーカイビングについては、HTMLなどで書かれたものをそのまま保存している。ただし、ウェブアーカイビングに当たって、画像や動画など、一部保存できていないものがある点は課題と認識している。このように、国立公文書館の場合はフォーマットの多様性が議論を複雑にしている部分があるかと思うが、NDLの場合はフォーマットがある程度特定されている点に違いがある。また、NDLで行っている長期保存に関する研究についてだが、ホームページの「電子情報の長期利用保証に関する調査研究」のページで調査研究の成果を公表している。最近では令和4年度にフロッピーディスクの長期保存対策に関する調査を実施しており、このような技術的な調査や、実際に国内の機関がどう対処しているかという実態の調査などを行っている。
有識者:
長期保存については、国立公文書館のほか、他の国内の図書館でも同様の研究を行っているものと思う。先ほども話にあった大学や研究機関との連携は、資料保存の面では実施していないのか。
NDL:
電子資料の長期保存に関する国際会議(iPRES)等で海外の機関と知見の共有は行っている。また、先ほど申し上げたように国内の機関の実態調査も行っている。例えば令和3年度に実施した「デジタル資料の長期保存に関する国内機関実態調査」では、図書館に限らず、博物館、美術館、公文書館等の機関にヒアリングやアンケートを実施して状況の把握に努めている。
有識者:
理解した。
有識者:
それでは令和6年度国立国会図書館活動実績評価の枠組み(案)についてひととおり検討したので、原案を了承したい。ただし、構成員から指摘があった点は可能な限りいかしてもらいたい。