令和6年度第2回 国立国会図書館活動実績評価に関する有識者会議 議事概要
1.開催日時
令和7年3月11日(火曜)15時30分から17時30分まで
2.開催形式
国立国会図書館 東京本館本館 総務課第一会議室
3.構成員
- (座長)岸田 和明(慶應義塾大学文学部教授)
- 只野 雅人(一橋大学大学院法学研究科教授)
- 田辺 国昭(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
- 呑海 沙織(筑波大学副学長、筑波大学附属学校教育局教育長)(欠席)
4. 国立国会図書館出席者
山地副館長、木藤総務部長、小澤総務部企画課長
5. 主な会議内容
国立国会図書館総括評価2021-2025の枠組み(案)について国立国会図書館(以下「NDL」という。)から説明を行った後、有識者会議構成員(以下「有識者」という。)による意見交換を行った。また、次期ビジョン下の活動実績評価の方向性について懇談を行った。意見交換及び懇談の概要は、以下のとおりである。
① 国立国会図書館総括評価2021-2025の枠組み(案)について
事業分野1について
有識者:
三点質問がある。一点目は科学技術に関する調査プロジェクトについてである。いくつか調査報告を見たことがあるが、テーマ設定は適切であり、内容も良いものができている印象である。ただ、問題はそこから先で、これが国会でどのように使われているのか、あるいはこれを国会議員が読んでいるのかが分からない。科学技術分野の研究者などには読まれているのだろうが、国政審議における利用状況や国会議員からのフィードバックなどの情報はあるか。科学技術に関する調査プロジェクトは比較的最近始まった取組だったと思うので、その意味でも現在の状況を知りたい。
二点目は、指標の中に一般向けのサービスが含まれていることについてである。健全な市民の基盤の上に成り立つ国会という図式からは、国政課題について市民にも関心を持ってもらい、そこに関するナレッジを高めてもらうというのは非常に大切であり、その観点から一般向けのサービスについての評価を国会活動の補佐の中に入れて構わないとは思う。ただ、どういう位置付けとして国会活動の補佐の中に入っているかを確認したい。
三点目は、指標3「国政課題に関する調査研究のアクセス数(一般向け)」についてである。ここでは全体のアクセス数が指標になっており、年度によって上下しているが、どのような分野のどのような課題に関してよくアクセスされているのかという情報はあるか。特徴的な経年変化などを含めて把握していることがあるなら教えてほしい。
NDL:
一点目の科学技術に関する調査プロジェクトについては、調査局に科学技術政策についての専任の組織を設けることが必要だという認識の下、2010年度に科学技術室を設置してプロジェクトを開始したという経緯である。報告書の内容について国会関係者向けのオンライン政策セミナーを開催しているほか、調査員が出向いて説明することもあり、それなりに関心を持っていただいていると認識している。
有識者:
国会での状況については承知した。他方で、内閣でも総合科学技術・イノベーション会議等で科学技術政策についての調査審議が行われているが、そちらでも報告書は活用されているのか。またNDLからの働き掛けはあるか。
NDL:
行政府でも様々な調査が行われていることは承知しているが、立法府としてそれだけの情報で立法を進めていくことには課題もある。特にNDLでは科学技術分野の資料もいかして国政審議のための情報を提供していくことには意義があると考えている。行政府の調査とは人選も重複しないようにしており、立法府なりの科学技術政策への関わりを進めていくように努めているところである。
NDL:
二点目の一般向けサービスが評価に含まれていることについてだが、国民の関心事は国会においても議論が必要な事項であり、国民と国会をつなぐこともNDLの重要な役割と考えている。先ほどの科学技術に関する調査プロジェクトについていえば、国政審議のための情報提供だけではなく、一般に公表することで国民の関心に応え、国民と国会との間の懸け橋となることも企図している。
三点目の指標3「国政課題に関する調査研究のアクセス数(一般向け)」の内訳については手持ちの情報がなく、後日回答とさせていただきたい。
【後日回答:国政課題に関する調査研究でアクセスが多い傾向にあるのは、新刊の論文、長期的な課題(少子高齢化・憲法など)をテーマとした論文、その時期に話題になったテーマに関連した論文である。令和6年度は、能登半島地震、物価、政治資金問題等を扱った論文へのアクセスが多くなっている。経年的に見ても長期的な課題を取り上げた論文へのアクセスが多く、論文の分野による偏りは特に見られない。】
有識者:
議事資料のデジタルデータ化は非常に重要な取組である。国会会議録の末尾情報等の整備や帝国議会速記録の戦前・戦中期分本文テキストデータ公開などが進められてきたとのことだが、これでデジタルデータ化の取組は全て完了したということか。
NDL:
当館に所蔵がなく、衆議院事務局と参議院事務局に所蔵がある資料もまだある。衆議院事務局所蔵分については、ある程度デジタル化が進み、国立国会図書館デジタルコレクションで提供している。また、参議院事務局所蔵分も今後追加される予定である。ただ、終着点はまだ見えておらず、協議が整ったものから提供していくことになっている。
有識者:
承知した。配付資料も見ることができると非常に便利だと感じている。もう一点質問だが、指標1「依頼調査の処理件数」について、選挙の年は件数が減少すると以前の会議で説明があったと記憶している。今年度もやはり減少しているのか。
NDL:
直近では令和3年10月に衆議院選挙、令和4年7月に参議院選挙、令和6年10月に衆議院選挙が行われた。例えば令和3年度の「調査依頼の処理件数」が前後の年と比べてやや少ない理由として選挙の影響が考えられることは以前の会議で御説明したとおりである。令和6年度については、1月末時点で約2万6000件弱であり、昨年度同期よりやや減少している。
有識者:
指標4「政策セミナーの開催回数」について、令和5年度だけ未達成となっているが、どのような事情からか。
NDL:
依頼調査等が繁忙だったためである。
事業分野2について
有識者:
三点意見と質問がある。一点目は収集対象についてだが、納本制度に基づき淡々と行っている部分と、有償等オンライン資料など対象をかなり拡大してきた部分があると思う。それぞれの領域が明確に示されていると、これまでの状況や今後の展望が分かりやすいのではないか。少なくともこの5年間に関してはどの領域の取組を進めてきたのかが可視化されていると良い。
二点目はウェブサイトの収集についてだが、公的機関を対象に実施していることは理解しており、個人的にも大学のウェブサイトで過去に掲載されていた情報を確認する際に利用したことがある。他方で、民間のウェブサイトはどのくらいの範囲で収集しているのか、また範囲は拡大しているのか、それともなかなか簡単にはいかない状況なのかを知りたい。
三点目は保存についてだが、電子資料には多様なファイルフォーマットがある中で、長期的にはどのような形で保存していくかの検討をNDLでは進めていたかと思う。現段階ではどの程度まで検討が進んでいるのかを知りたい。
NDL:
一点目の収集対象についてだが、御指摘のとおり、令和5年1月に有償等オンライン資料の制度収集を開始するという画期的なことがあった。一方で、無償等のオンライン資料は以前から収集しており、数としてはそちらの方が多い。指標はオンライン資料全体の数しか出していないので、有償等オンライン資料の制度収集を開始したことが指標においては十分に表現できていない。
二点目のウェブサイトの収集についてだが、公的機関のウェブサイトは制度に基づいて収集しているのに対し、民間のウェブサイトは許諾を得て収集している。公益法人、私立大学、政党、あるいはイベントや、東日本大震災に関するウェブサイトなどが主な対象であり、収集対象とするサイトの数は増加している。ただ、指標としては、制度に基づいて収集しているものと許諾を得て収集しているものの合計の数しか出していないので、やはり努力して増やしている部分が見えない形になっている。一点目と併せて、評価の際には定性的な説明を加えることを検討したい。
三点目の保存についてだが、デジタル資料の長期保存については毎年度調査研究を行っており、その成果の一部は国立国会図書館ウェブサイトで公表している。これまで調査したテーマとしては、フロッピーディスクの長期保存対策に関する調査や、デジタル資料の長期保存に関する国内機関実態調査などがある。今後は、映像資料のマイグレーション試行や、国立国会図書館デジタルコレクション上で再生するためのエミュレーションに係る技術検証などを予定している。
有識者:
二点目のウェブサイトの収集について、米国とは著作権法及びその解釈が全く異なることを理解せずに、米国のInternet ArchiveとNDLのWARPを比較されてしまうと厳しいところはある。難しいとは思うが、様々な制約の中で努力していることをうまく評価できると望ましい。また、先ほど別の有識者からも指摘があったように、NDLでは様々な取組を進めているので、ビジョンで掲げたうち達成できたこととできなかったことの見取り図のようなものがあると良いと思った。
有識者:
今日は3月11日だが、NDLで東日本大震災に関係するデジタル記録を大規模に集めたと記憶している。ただ、個人の顔が映っているなど公開できないものが多数あると思われるので、集めたものをどうする方針か知りたい。
NDL:
震災に関して収集した記録は、国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)を通じて提供している。様々な許諾の条件の下で記録を収集しており、公開の許可が得られたものは公開しているという状況である。問題が三点あり、一点目は、時間の経過とともに権利帰属が不明になり、公開に至れない資料があることである。二点目は、地方自治体が運営しているアーカイブの維持が難しくなり、閉鎖してしまうアーカイブが出てきていることである。NDLとしては、できるだけ同じ地域で引き継がれることが望ましいものの、閉鎖がやむを得ない場合にはひなぎくでの引継ぎを含めて相談に乗るという姿勢である。三点目は、先ほども話に出たように、電子的な記録を再生可能な状態で長期的に保存していかなければならないという問題である。ひなぎくについては、これら三つの問題に対処していく必要があると考えている。
有識者:
NDLでは各電子媒体のマイグレーションを進めているが、特に光ディスクは所蔵数が非常に多いということである。今後光ディスクの保存対策を進めていくのだと思うが、マイグレーションを進めていくのか、あるいは媒体変換せずに長期保存を目指すのか。
NDL:
過去に調査をしたところ、光ディスクの中でもパッケージとして販売されていたものは比較的保存状態が良く、今でも再生可能なものが多かった。一方で、付録品などパッケージ化されていない場合は脆弱なものが多く、まずはそういうものを優先的にマイグレーションし、長期保存を図る想定である。パッケージ化されている光ディスクも、長期的には劣化が避けられないので、予算の制約もあるがゆくゆくはマイグレーションを進めたいと考えている。
事業分野3について
有識者:
まず、評価指標のうち既定目標値型の指標に関しては、未達成の場合は対応を検討してもらい、達成している場合もより高みを目指してほしい。3か年平均基準型の指標の中で、指標29「イベント」の「①開催回数(オンライン開催を含む。)」は、令和5年度は50回も開催しているのに未達成ということか。数値に[]がついているが、これはどういう意味なのか。
NDL:
1ページ目に記載しているとおり、3か年平均基準型の目標値は、[]を付した特殊な事情のある年度の実績値を除いた直近3年の平均値を基準としている。また、特殊な事情のある年度とは、目標値を未達成だった年度のうち、当該年度の実績値が前年度以前の過去3か年平均±3σ(標準偏差)から外れた年度としている。指標29「イベント」の「①開催回数(オンライン開催を含む。)」については、コロナ禍以降は開催回数が大きく減少し、特殊な事情のある年度に該当するために、目標値の算出から除外され、コロナ禍前の実績値が目標値の基準になっている。コロナ禍前は60~80回ほどイベントを開催していており、これを基準に目標値を設定しているので、50回開催しても未達成ということになっている。評価の際は、このような事情も総合的に勘案して事業分野全体の評価をしていきたい。
有識者:
理解した。特殊な事情があったということで、注記が必要ではないかとは思う。
有識者:
個人向けデジタル化資料送信サービス(個人送信)について、海外の居住者への提供が法的に難しいことはこれまでも説明があった。一方で、国内においては、来館しなくてもNDLの資料が利用できるようになったことで、地方在住者に対して明らかにプラスになったのではないかと思うが、それを裏付けるようなデータは把握しているか。
NDL:
個人が送信サービスを受けるには個人送信の利用登録が必要であり、登録情報には住所が含まれるので、個人送信の利用登録をしている人たちがどこに在住しているかを調べることは可能である。ただし、当館自体の登録利用者については、個人送信開始前から利用者の多かった首都圏や関西の大都市圏の在住者が今でも圧倒的に多い状況である。そのため、地方在住者に対しては、NDLの存在そのものや、個人送信を始めとする遠隔サービスの存在を知ってもらうことが常に課題となっているのが現状である。
事業分野4について
有識者:
先ほど電子資料保存におけるファイルフォーマットについての話があったが、資料保存やメタデータスキーマに関して、国際的な標準と日本の標準をうまくすり合わせて活用していくことが非常に重要である。既にNDLではかなりの努力をしているとは思うが、米国議会図書館の主導する国際標準に関する取組が多くあるように、NDLも国際的な先頭に立って一層取組を進めてほしい。特に資料保存とメタデータスキーマはデジタルアーカイブ関係で非常に重要なのでぜひお願いしたい。
有識者:
研修講師の派遣はどういう機関から依頼があるのか。
NDL:
都道府県立図書館や市町村立図書館等の公共図書館からの依頼が多い。なかでも、各都道府県に置かれた図書館協会等が公共図書館員のための研修を設け、その中の科目の一つにNDL関係の科目を設けて講師を依頼するという形が多い。
有識者:
公共図書館では外部的な研修が頻繁に開催されるため、その中で講師をNDLに依頼するという構図は理解できる。
重点事業に係る事業分野①及び②について
有識者:
OCRテキストを用いた全文検索よりも、メタデータを用いた検索の方が精度や再現率は高くなる可能性もある。他方で、視覚障害者が読み上げソフト等で文字情報を扱えるようになることは重要なので、全文テキストデータの整備はなるべく進めてほしい。
有識者:
NDLOCRのOCR技術が非常に優れており、国立公文書館から技術指導の依頼があったと聞いている。そうした活動を他機関に広げる余裕はあるか。プログラムの開発権等の課題があるかもしれないが、状況を知りたい。
NDL:
NDLOCRのプログラムはオープンソースとして公開(NDLラボへのリンク)しており、他機関とも交流して改良していく方針である。NDLOCR自体もオープンソースとして公開されている技術を活用して開発しており、NDLの成果を還元してさらにOCRの精度を高めるとともに、学会等で発表することで成果を共有している。また、NDLOCRは一定水準以上のGPUが必要であり他機関では使いづらい面もあったが、最近は軽量なOCR処理プログラムも提供している。連絡があれば個別に相談に乗ることも可能かと思う。
有識者:
指標25「国立国会図書館デジタルコレクション」について、「①累積データ数」や「②うち、インターネット提供数」は増加する一方で、「③アクセス数」と「④うち、インターネット経由のアクセス数」が令和4年度以降減少しているのはなぜか。
NDL:
国立国会図書館デジタルコレクションは令和4年度にシステムリニューアルでアクセス数の集計方法が変わったため、統計としての連続性が失われている。
有識者:
システムの仕様変更として理解した。リニューアル後は安定的な数字になっているか。
NDL:
リニューアル後は安定している。
有識者:
議題①について、事業分野1から4まで、それから重点事業に係る事業分野について御議論いただいた。議論の中で大きな問題点は指摘されず、質問や意見はあったものの、おおむね非常に優れたサービスを行っているという構成員からの感想があった。未達成の評価指標については評価結果の内容を今後検討してもらうことにして、国立国会図書館総括評価2021-2025の枠組み(案)については、この場では了承ということでよろしいか。
(異議なし)
② 次期ビジョン下の活動実績評価について
有識者:
ISO 21248(国立図書館の品質評価)で例示されているパフォーマンス指標の中には測定が難しいものもある。例えば国内出版物の要求タイトル所蔵率は、実際の利用者が求めたものをNDLが所蔵しているかどうかを追跡調査で調べるというかなりハードルの高いものである。レファレンス回答の正答率も、算出するには覆面調査を行う必要があるが、日本で覆面調査はあまり行われない。既に活動実績評価の指標に採用されているものもあるので、ISO 21248はあくまでも参考として考えればよいのではないか。
有識者:
現ビジョンの下で、資料のデジタル化が進んでインターネットで提供されたり、複写製品もPDFで提供されるようになったりと、サービス全体の構造が大きく変わっている。例えば指標22「遠隔複写」の「④インターネット経由申込複写について、受理から発送までに要した日数」は、従来はデジタル化を前提にしない指標だったと思うが、長い目で見ると内容を見直していく必要があるのではないか。関連する質問だが、デジタル化やPDFでの提供が進むことで、全体の傾向としては処理に要する時間が短縮されるのか、あるいは手間が掛かるものが残るので逆に時間が延びてしまうのか。
NDL:
遠隔複写(PDFダウンロード)については、現時点では従来の紙での複写と処理に要する時間はそれほど変わっていない。
有識者:
遠隔複写の所要日数に関する従来の指標は、当面は評価指標として適切と考えてよいか。
NDL:
今後はPDFでの提供も踏まえた指標を検討していく必要があると考えている。
有識者:
二点あり、一点目は指標についてである。2021年以降、来館しなくても利用できる資料が大幅に増えた一方で、コロナ禍により減少した来館者数は回復してきている。そうすると、今のところはデジタル化が来館利用を単純に代替する関係ではなさそうである。今後、来館サービスと遠隔サービスのどちらが積極的に利用されていくのかは、様々な指標を並行して注意深く見ていく必要がある。ただ、利用に関する指標はもう少しまとめないと全部を追いきれないので、ある程度まとめた上で利用動向を把握できる指標があれば追加等を検討してほしい。
二点目はプログラム評価についてだが、プログラム評価は、主には特定の問題に対してボトルネックなどを見つけるために用いるものである。例えばNDLがデジタルシフトを進めた後の利用者の行動変容やその影響を把握するといった用途としては、中央省庁で行っているようなインパクト評価は馴染まないところがある。インパクト評価をやらなければいけないというよりも、何か問題が生じた場合にそれに対する対処法を探るためにインパクト評価を用いるのだと思う。令和6年度にフォーカスグループインタビューを実施したということだが、これはインパクト評価というよりはニーズ調査に近いのではないか。もっとも、これはこれでビジョンを策定する際などには有効だろう。
有識者:
プログラム評価は、特定の課題が出てきたときにインタビューなどを通じて深く調査するものであって、全体的な評価とはやや性質が違うものということだと思う。図書館評価については、量的分析と質的分析の組み合わせということが盛んに言われているが、それは基本的には公共図書館や大学図書館などが取り組むべき課題として認識されている。NDLのような大きな図書館が質的分析を試みても評価においてどれだけ有効かは私も疑問であり、深く掘り下げる必要があるときにやればよいのではないか。また、先ほど地方在住者の利用状況について話があったが、NDLは国民全体にサービスを行うという位置付けであるので、やはりリモートでのサービスは非常に重要である。NDLで様々なリモートサービスを進めているが、そういったリモートサービスに対する評価はきっちりやってほしい。そのときに評価指標は何かと聞かれるとすぐには答えられないが、リモートでのサービスはきちんと評価していくのが良いだろう。
NDL:
当館サービスに関する各種の指標を評価に用いているが、活動実績評価だけではなく、予算の要求や課題の整理などにも指標を役立てていきたい。他方で、御指摘のとおりニーズの把握も重要と考えている。指標の数字だけを見るのではなく、様々な人の意見を聞いて事業の方向性の参考にすることはこれまで多くあったし、今後もそうありたいと思っている。
有識者:
次期ビジョンに関連して、シンポジウム「デジタルシフトの次へ―米国議会図書館の新戦略から見えてくるもの―」を開催したとのことだが、デジタルシフトの次に何をするかについて方向性はあるのか。
NDL:
これまでデジタル化した資料は20世紀の図書までなので、他の資料群についてはまだデジタル化してないものも多くある。また、先ほど話があったように、電子資料については保存にもまだ課題がある。シンポジウムは、2025年までの取組を踏まえて、その後どうするかがテーマだった。これから取り組まなければいけないことは多くある中で、社会のニーズを把握した上で説得力のある予算の要求も重ねていかなければならない。各所から御意見を頂いて実現に向けて努めていきたい。