［立憲政体調査につき特派理事欧洲派遣の勅書］

朕明治十四年十月十二日の詔旨を履み立憲の政体を大成するの規模は固より一定する所ありと雖、其経営措画に至ては各国の政治を斟酌して以て采択に備るの要用なるか為に今爾をして欧洲立憲の各国に至り、其政府又は碩学の士と相接し其組織及ひ実際の情形に至るまて観察して余蘊無からしめんとす。茲に爾を以て特派理事の任に当らしめ、爾か万里の行を労とせすして此重任を負担し帰朝するを期す
明治十五年三月三日　　奉　勅　太政大臣従一位勲一等　三条実美

一、欧洲各立憲君治国の憲法に就き、其淵源を尋ね、其沿革を考へ、其現行の実況を視、利害得失の在る所を研究すへき事。
一、皇室の諸特権の事。
一、皇室並皇族財産の事。
一、内閣の組織並立法行政司法及外交の事に関する職権の事。
一、内閣の責任法の事。
一、内閣大臣と上下両院との間に存する諸関係の事。
一、内閣の事務取扱手続の事。
一、上院及下院組織の事。
一、貴族の制度特権の事。
一、上院及下院の権限並事務取扱手続の事。
一、上院及下院に関する皇室の特権の事。
一、上院及下院の開閉解散並延会の事。
一、上院及下院の自由政論の事。
一、上院及下院の特権に関する争議の事。
一、議事規則の事。
一、皇室より上下両院議員待遇の事。
一、上下両院の間に存する諸関係の事。
一、議按を発するの所並諸議按の事。
一、上下両院に於て会計予算を議定し、若くは決算を査覈する方法の事。
一、上下両院司法権の事。
一、諸請願若くは行政裁判の事。
一、上下両院議員の資格並撰挙法の事。
一、法律及行政規則分界の事。
一、各省の組織権限の事。
一、各省と上下両院との間に存する諸関係の事。
一、各省と地方官との関係の事。
一、司法官の進退黜陟の事。
一、司法官と上下両院との関係の事。
一、諸官の責任及進退の事。
一、諸官養老特典の事。
一、地方制度の事。