平成16年度の調査研究の内容
平成16年度は以下のテーマで調査研究を行いました。
(1)パッケージ系電子出版物のマイグレーション
電子資料は記録媒体が旧式化すると、その内容を読み出して利用することは困難になります。この問題を回避するためには、定期的に新しい媒体に内容を移すこと(マイグレーション)が必要になります。
国立国会図書館資料提供部電子資料課が所管するパッケージ系電子出版物のうちCD-ROMについて、市販のマイグレーションプログラムを使用して、内容のハードディスクへの移行を試みました。ほとんどの資料についてマイグレーションを行うことができましたが、一部コピープロテクトのためにマイグレーションできない資料もありました。また、ハードディスクに作成されるファイルの形式がマイグレーションプログラム特有のものとなるため、長期的利用の観点から問題があることが明らかになりました。
(2)パッケージ系電子出版物のエミュレーション
適切に保存されている電子資料であっても、その構成が旧式のパソコンやOSに依存するものであっては、新しいパソコンで利用することができません。新しいパソコンで古いパソコン用のソフトウェアを利用するには、エミュレータと呼ばれるソフトウェアを用いて古いパソコンの動作環境を再現させること(エミュレーション)が必要となります。
上記(1)でマイグレーションを行った資料の一部について、市販のエミュレータを用いて新しいOSを用いたパソコン上での再生を試みましたが、問題なく再生できたのは約3割に留まりました。
(3)ファイル形式の変換とアクセス方法の維持
記録媒体の旧式化と同様に、ファイル形式が旧式化してしまうとそれを読み取ることができなくなります。
データのみを含む(プログラムを含まない)資料を100点選び、その中でもファイル形式が容易に旧式化してしまうことが予想される資料15点について、ファイル形式を変換することによって一般的な形式にすることを試みました。しかし、これによって再生できたのは2点のみでした。
また、この100点の資料の中には、データの再生に必要なプログラムが、一般的な方法では既に入手できなくなっているものがありました。
以上の調査結果を「電子情報の長期的保存とアクセス手段の確保のための調査報告書」(平成17年3月)」としてまとめています。