米陸軍省情報部の日本人秘密軍事組織の情報

Informações sigilosas sobre a formação militar dos japoneses, obtidas pelo departamento de informação do exército norte-americano

U.S. War Department Military Intelligence Division information on Japanese secret military organizations

米陸軍省参謀部情報部長の報告。信頼できる情報として、サンパウロ市近郊に2万5千人以上の日本人の秘密軍事組織が存在するとしている。バストス産業組合理事長で退役陸軍大佐の脇山甚作が逮捕されたのは、この情報に基づくと思われる(岸本丘陽著『南米の戦野に孤立して』サンパウロ 1947)。 ブラジル駐在武官の宇都宮直賢も、その回想録で「サンパウロで日本陸軍大佐と名乗る人物が日系青年を糾合して不穏な動きをしているとの情報があるが、貴官とは関係ないか」と警察で取り調べをうけたと記している(『南十字星を望みつつ ―ブラジル・フィリピン勤務の思い出―』1981 p. 33)。ミッドウェー海戦勝利により米本土、パナマ運河への日本軍の脅威がなくなった後には、米軍内でのこのようなヒステリックの反応はなくなった。
(翻訳は当館職員による試訳である。)

1942年3月12日

戦争計画部長のための覚書
件名 ブラジルにおける状況

1. 合衆国大使及び大使館附陸軍武官代理からの以下の海底電信を昨晩受信した。
「アラニャ外相と空相は、命令がベルリンから発せされているという報告について懸念を抱いている。ブラジル当局は、政府転覆暴動発生の危険が迫っていると考えている。ブラジル船舶の撃沈に対する怒りと不安が昂進している。」

2. 枢軸国の潜水艦は、ブラジルの船舶4隻をすでに撃沈し、5隻目の船舶は、数日遅れている。これは、アルゼンチンとチリに対し、枢軸国への宣戦を布告することを思いとどまらせるために脅迫し、かつ、枢軸国に敵対する場合には同様な罰を受けるとラテンアメリカ諸国に通告するための作戦の一部である。

3. ブラジルにおける第五列の活動は、連合国予備軍とともに大胆となってきており、特に南部諸州において不安が増大中である。枢軸国のプロパガンダは、強化され、合衆国にはブラジルに戦備を供給し、適切な船舶を提供する能力がないことを強調している。

4. 以前の信頼すべき情報の情報源によると、日本人は、日本人将校が管理する完全な軍事組織をブラジルに置いている。その将校には、この組織の指揮という特定の目的で日本からブラジルに派遣された何人かの将官も含まれている。サンパウロ近郊にあるこの組織の一部は、2万5000人を超える要員を擁する。当該組織のこの支部は、30分以内にサンパウロ市を奪取する能力を持っている。戦略上、内陸部に同様な日本人の組織が置かれているという兆候があり、それらの主たる任務は、多くの拠点への援軍の到着を阻止することでになるであろう。というのも、すでに日本人が、主要な鉄道を支配下に置く戦略上の拠点の財産的管理権を購入し又は賃借することにより、そこを通って上水道と送電線がいずれもサントス港防衛のために建設されたサン・ヴィセンテのイタイプとグアラジャのモンドュバのブラジルの要塞に通じている土地を支配するいくつかの要塞を取得しているからである。サン・ミゲル近くの南米最大の爆発物工場、戦車と装甲車を製造しているサン・カエタノのゼネラル・モーターズの工場、アルト・ダ・セラのライト・アンド・パワー会社の貯水池とダムは、日本人の地主に囲まれてしまっており、これらの施設は、日本人の権力者から命令が下ったときには爆破されるといわれている。

5. ラジオと新聞で、ブラジル又はブラジル人に対し攻撃的行為を行っている国の国民の財産の没収を認める命令がちょうど発せられたという発表があった。その結果、ブラジルは、枢軸国民の所有物を没収することができ、これによりブラジル船舶の撃沈により発生した損害への補償を取得することができる。別の命令により、ヴァルガス大統領は、議会の議決なしに宣戦布告をし、又は緊急事態を宣言する権限を自身に与えた。

6. 政府は、ブラジル人の生命が失われていないので、先の船舶撃沈に対する報復としての積極的措置を取っていない。しかし、4番目の船舶(カイル号)の撃沈により、51人の生命が失われ、これにより大変な怒りと憤怒を呼び起こし、大統領は、枢軸国に対する宣戦布告にも辞さない、強力な措置をとる用意をしていると報告されている。

7. これは、ラテンアメリカの不安をかきたてるドイツの政策であり、現在の状況はブラジルで革命を始める事前に練り上げた計画である可能性がある。約10万の兵力からなるブラジル陸軍は、主に南部と北東部(添付地図を見よ。)に集結している。同陸軍には枢軸国についての知識を持っている何人かの主要人物がいる。戦闘機は全部で約31機の旧式と旧式になりかかった航空機から成る。

8. いくつかのブラジル当局は、同国の軍隊が民間人の暴動や外国の活動を処理する能力を十分有しているという見解をもっているといわれている。しかし、管轄の合衆国軍当局は、ブラジル人がこの目的を達成するためには速やかに合衆国の強力な支援を得なければならないと考えている。ヴァルガス大統領は、西半球の防衛に協力したいという個人的な希望は表しており、リオデジャネイロ会議で反枢軸の措置が取られる上で大きな役割を果した。しかしながら、同大統領はブラジルの政治的問題を強硬な手法で処理していないが、それはおそらく枢軸国の影響により引き起こされた状況が原因である。ブラジルの現在の状況は、単なる神経戦の段階を超えているが、陸軍が全面的に後援すれば、同政府は事態を処理することができると思われる。ヴァルガス体制の政治的安定は、合衆国の支援にも大きく依存している。我々の強力な支援なくしては、現政府は崩壊するであろう。

レイモンド・E. リー
合衆国陸軍准将
情報部(G-2)長

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