※ この翻訳テキストは、大蔵省財政史室編『昭和財政史-終戦から講和まで-』第17巻(東洋経済新報社,1981.11)<当館請求記号DG15-19> pp.518~519からの転載であり、片仮名表記を平仮名表記に改める等当館で書式の変更を行っています。書式等の点で展示史料と一致しない部分があります。
一九四五年十一月十六日附戦争利得の除去並に財政再建に関する大蔵大臣覚書に関し意見次の如し。
二、該計画は日本に於ける平和的且民主的なる勢力の育成に寄与すべき方法及制度の発展を来す為の単なる一手段として原則的に之を承認す。一部の日本人の資産は不正にして且侵略的なる戦争を利用し多年に亘り不法に増大せり。政府は全日本人に対し戦争は経済的に見て利益あるものに非ざることを周知せしむる為貴方提案の第一項Aの税は不信なる真珠湾攻撃の日以後に付てのみならず可能なる限りに於て夫れ以前の期間に付ても適用せしむべし。
三、本計画に関する完全なる法案は一九四六年に開催せらるべき最初の議会に其の協讃を得る為提出せらるべし、右法案は本司令部の承認を求むる為一九四五年十二月三十一日以前に提出すべし。
皇室財産も本計画の適用を免るることなし。
必要なる立法措置を完了する迄は日本政府、其の下部機構、代理機関其の他の機関並に一切の者に依り軍需品の生産若は供給、戦争損害又は軍需工場の建設若は転換より生ずる一切の請求権に関し、左の条件を以てするの外支払を為すことを得ず。
(イ)該支払金は日本銀行に於ける封鎖勘定に受益者の名義に依り預金せらるること日本政府其の下部機構、代理機関其の他の機関並に一切の者は左記のものを担保として信用を供与すべからず。
a、軍需品の生産若は供給、戦争損害、軍需工場の建設若は転換に起因する請求権軍需品の生産若は供給、戦争損害、軍需工場の建設若は転換に起因する請求権に関連し従来封鎖せられ居りたる勘定は本司令部の許可ある場合の外依然之が封鎖を続行すべし。第四項及第五項は斯る勘定に対しても適用せらるべし。
七、日本政府、其の下部機構、代理機関其の他の機関並に一切の者に依る一九四五年八月十五日以降に於ける本文書第四項記述の目的の為にする支払にして一請求権者に対する支払金額五千円を超ゆるものに付ては未だ封鎖が行はれ居らざる場合又は封鎖勘定より其の全部又は一部が解除せられ居る場合は本日後三十日内に受益者をして日本銀行封鎖勘定に再預金せしむべし。若し上述の資金が固定資産に投下せられ居る為又は其の他の理由に依り受益者に不当の困難を与ふることなしに回収し得ざる場合には事情の詳細を記述したる報告を大蔵省に提出せしめ本司令部の考究に資すべし。
八、日本政府、下部機構、代理機関其の他の機関は本司令部の許可なくして左の措置を行ふべからず。
(イ)公債又は其の他の債務証書を発行すること銀行、保険会社、信託会社、証券会社、投資会社、工業又は商業に関する商社其の他の公私の事業に対し今後債務の保証又は支払の約束を為すこと
(ニ)補助金の交付、免税、税の分与、払戻又は類似の便宜を与ふること
但し本指令に依り禁ぜられ居らざる目的の為に政府歳入を政府下部機関に再割当する場合は之を除く
不動産又は他の固定資産、設備及他の公共事業又は企業の利益の売却其の他の処分
九、本指令に依り必要とせらるる承認に対する申請には大蔵省の書面に依る副申を附することを要す。
十、覚書の受領の確認を要求す。