令和7年3月 国立国会図書館 障害者サービス実施計画2025-2029 目次 Ⅰ 基本的な考え方 2 1.これまでの経緯及び目的 2 2.計画の対象範囲 2 3.計画期間 2 4.図書館利用における合理的配慮の提供 2 Ⅱ 実施事項 3 1.視覚障害者等用資料の充実 3 (1)視覚障害者等用データの収集 3 (2)学術文献録音図書(DAISY形式)の製作 3 (3)学術文献録音テープの媒体変換 3 (4)視覚障害者等用テキストデータの製作 3 (5)デジタル化資料の全文テキストデータの提供 3 (6)視覚障害者等用テキストデータの製作及び提供に係る協力 3 (7)出版者からのテキストデータ等の提供に係る検討 3 2.円滑な利用のための支援の充実 3 (1)視覚障害者等用資料の利用提供 3 (2)館内利用における支援の充実 4 (3)障害者用資料及び障害を理解するための資料の展示 4 (4)特別支援学校による見学への対応 4 (5)学術文献録音テープ等の貸出し 4 (6)学校図書館セット貸出し 4 (7)レファレンスサービス 4 (8)利用しやすい施設の整備 4 3.インターネットを利用したサービス 4 (1)アクセシビリティの確保 4 (2)視覚障害者等用データ送信サービスの提供 4 (3)視覚障害者等用データ送信サービスの利用者登録手続の改善 4 (4)統合検索サービスの提供 5 (5)障害者用資料の書誌・所在情報の収集及び提供 5 4.アクセシブルな電子書籍の導入促進等 5 5. 外国からの視覚障害者等用データの入手及び国内で製作された視覚障害者等用データの外国への提供のための環境整備 5 6.サービス人材の育成 5 (1)障害者サービスに携わる図書館員等に対する研修 5 (2)当館職員の資質向上・啓発 5 7.他機関等との連携 5 (1)読書バリアフリー基本計画に関する連携 5 (2)障害者サービス関係諸機関・団体との連携 6 Ⅲ 実施体制 6 Ⅳ その他 6 1.法規整備 6 2.計画の見直し 6 Ⅰ 基本的な考え方 1.これまでの経緯及び目的 国立国会図書館(以下「当館」という。)は、令和3年1月、中期ビジョンである「国立国会図書館ビジョン2021-2025 ―国立国会図書館のデジタルシフト―」(令和3年国図企2101133号)を定めた。同ビジョンでは、7つの重点事業を掲げており、「読書バリアフリー推進」は、その中の一つとして位置付けられている。これを受けて、令和3年3月には、「障害者サービス実施計画 2021-2024」(令和3年国図関西2103122号)を策定し、計画に則って障害者サービスに関する諸施策を着実に実施してきた。 また、服務上の指針として、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)の趣旨を踏まえ、「国立国会図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」(平成28年国図総1603292号。以下「対応要領」という。)を策定し、障害を理由として障害者の権利利益を侵害することがないよう、職務を遂行してきたところである。 当館が近年特に、障害者サービスに係る取組を加速させてきた背景には、国の読書バリアフリーに関する動きがある。平成31年1月には、「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」(以下「マラケシュ条約」という。)が、日本において発効した。そして、同条約の法整備の一環として、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(令和元年法律第49号。通称「読書バリアフリー法」)が令和元年6月に公布・施行された。同法に基づき、令和2年7月には、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」(以下「読書バリアフリー基本計画」という。)が策定され、当館の障害者サービスに係る取組は、国の施策の一部として同計画の中で位置付けられ、より一層の役割を求められてきたところである。 令和4年5月には、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(令和4年法律第50号)が公布・施行された。令和6年4月からは、障害者差別解消法の改正法が施行され、民間企業における障害者への合理的配慮の提供が義務化されるなど、障害者への情報保障に対する社会的関心がさらなる高まりを見せている。  このような状況を受けて、当館でも読書バリアフリーのより一層の推進に向けて、障害者が利用しやすい資料の充実と、それらの資料を誰もが容易に発見し円滑にアクセスできる環境の整備等を目指して、新たに本計画を策定し実施する。 2.計画の対象範囲 本計画で対象とするサービスは、障害者差別解消法第2条第1号に規定する障害者(以下「障害者」という。)(注1) であって、当館の利用に際して何らかの配慮が必要な者に対するサービスとする。 注1 障害者差別解消法第2条第1号において「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義されている。 3.計画期間 令和7年度から令和11年度までの5年間とする。 4.図書館利用における合理的配慮の提供 対応要領に基づき、サービス対象者に合理的配慮を提供し、その障害の特性に応じた図書館利用に関する支援を行う。 Ⅱ 実施事項 1.視覚障害者等用資料(注2)の充実 注2 国立国会図書館視覚障害者等用資料送信及び貸出規則(平成25年国立国会図書館規則第6号)において規定している、当館及び他機関が製作し収集した視覚障害者等用データと当館が製作した学術文献録音テープ等(学術文献録音テープ又は光ディスク媒体の学術文献録音DAISY資料がある。)を指す。 (1)視覚障害者等用データの収集 公共図書館、大学図書館、学校図書館、視覚障害者情報提供施設及びボランティア団体等が製作する視覚障害者等用データの収集を推進し(注3)、収集データ件数の拡大に努める。 注3 視覚障害者情報提供施設からは、サピエ図書館では提供しないデータのみを収集する。 (2)学術文献録音図書(DAISY形式)の製作 視覚障害者等の利用に供するため、当館が所蔵する専門的な学術文献を、学術文献録音図書(DAISY形式)として製作する。 また、DAISY製作に従事する者の高齢化等による人材の不足により、製作可能点数に限りがあることに留意し、技術により効率化を図ること等を含め持続可能な仕組みとなるよう対応を検討する。 (3)学術文献録音テープの媒体変換 劣化により音声データの消失が懸念される当館製作学術文献録音テープについて、保存及び利活用の機会を保証するため、DAISY規格での録音データ化を実施する。 (4)視覚障害者等用テキストデータの製作 視覚障害者等の利用に供するため、当館が所蔵する専門的な学術文献のテキストデータ(EPUB形式、プレーンテキスト等)を製作する。 また、テキストデータ製作において、学術文献に含まれる図、グラフ、写真等の代替テキストを製作するとともに、代替テキスト製作における生成AI等の活用可能性について検討する。 (5)デジタル化資料の全文テキストデータの提供 OCR機能によりデジタル化資料から作成されたテキストデータ(全文テキストデータ)を、入手可能性調査や出版者等による事前確認手続等を行った上で、視覚障害者等へ提供する。 また、全文テキストデータの利用促進に向けた取組を行う。 (6)視覚障害者等用テキストデータの製作及び提供に係る協力 日本点字図書館と協力して、図書館等における視覚障害者等用テキストデータの製作及び提供に係る取組を進めるとともに、当館が運用する共同校正システムを用いたテキストデータ製作の今後の在り方を検討する。 また、NDLOCR(注4)を始めとするOCR研究開発成果物の活用可能性を検証する。 注4 当館が提供する資料の多様性を踏まえて、当館資料に最適化した認識性能を有するよう独自に開発したOCR処理プログラム。オープンソースとしてNDLラボ公式GitHubアカウントから公開している。 (7)出版者からのテキストデータ等の提供に係る検討 出版者から視覚障害者等による利用のために国立国会図書館へ無償での提供申出があったテキストデータ等について、視覚障害者等用データ送信サービスを通じて利用提供を行う。なお、必要に応じて当該データの収集に係る課題等を整理することとする。 2.円滑な利用のための支援の充実 (1)視覚障害者等用資料の利用提供 東京本館、関西館及び国際子ども図書館の館内において、納本等により収集した点字資料、大活字資料等の利用提供を行うとともに、視覚障害者等に対して、視覚障害者等用資料を利用に供する。 また、関西館、東京本館及び国際子ども図書館間での学術文献録音図書等の取寄せサービスを提供する。 (2)館内利用における支援の充実 東京本館、関西館及び国際子ども図書館の各施設において、障害者とのコミュニケーションの取り方に配慮しながら、障害の特性に応じて合理的配慮を提供する。 また、視覚障害者等用端末、拡大読書器、音声読書器等を使用して図書館資料を利用する場合には別室を提供するほか、利用案内等の拡充に努めるなど、引き続き支援の充実を図る。 (3)障害者用資料及び障害を理解するための資料の展示 障害者用資料の認知度向上のため、東京本館、関西館及び国際子ども図書館において、障害者用資料及び障害を理解するための資料を展示する取組を推進する。 (4)特別支援学校による見学への対応 国際子ども図書館において、特別支援学校による見学に対応する。 (5)学術文献録音テープ等の貸出し 当館で製作し所蔵する学術文献録音テープ等について、図書館を通じた視覚障害者等への貸出サービスを行う。 (6)学校図書館セット貸出し 国際子ども図書館が行っている学校図書館セット貸出しについて、特別支援学校への貸出しを行う。また、障害者用資料及び障害を理解するための資料のセットである「バリアフリーセット」の貸出しを実施する。 (7)レファレンスサービス 来館、非来館を問わず、障害者からレファレンスサービスに関して配慮を希望する旨の申出を受けた場合、受付及び回答方法について合理的配慮を行う。 (8)利用しやすい施設の整備 バリアフリーの観点から施設の見直しを適宜実施し、東京本館、関西館及び国際子ども図書館の適切な環境整備を図る。 3.インターネットを利用したサービス (1)アクセシビリティの確保 当館ホームページ及びインターネットを利用したサービスについて、ウェブアクセシビリティへの対応状況を確認するための検証・試験と、システム改修及び運用・保守における改善を計画的に実施する。 また、国立国会図書館が作成したPDF等の電子文書ファイルへのアクセシビリティ対応を進める。 (2)視覚障害者等用データ送信サービスの提供 視覚障害者等用データ送信サービスを着実に実施するとともに、引き続き関係機関と連携し、同サービスで提供しているデータを「サピエ図書館」を通じて利用できるようにする。あわせて、当館とサピエ図書館の役割を踏まえながら、両サービスが提供する視覚障害者等用データについて、図書館及び視覚障害者等による利用促進を図る。 また、ICTサポートセンターを含む関係機関・団体に対して、広報や研修等を通じて積極的に情報提供を行い、視覚障害者等用データ送信サービスへの参加促進等の取組を進める。 (3)視覚障害者等用データ送信サービスの利用者登録手続の改善 より多くの視覚障害者等が円滑に利用者登録手続を行えるよう、活字による読書が困難であることを確認する手法の多様化等を検討する。 また、読字に困難がある発達障害者(ディスレクシア等)や肢体不自由者など、視覚による表現の認識が困難な者が広く対象であることのさらなる周知を図る。 (4)統合検索サービスの提供 国立国会図書館障害者用資料検索(みなサーチ)を通じて、障害者用資料総合目録、デジタルデポジットシステムに搭載した視覚障害者等用データ、納本制度等により当館が収集した障害者用資料、サピエ図書館等の統合検索サービスを提供し、アクセシビリティにつながる情報の充実など、障害者が利用できる資料をより見つけやすくするための改善に努める。 また、より一層の活用を図るため、関係機関・団体と連携してみなサーチの周知を行う。 (5)障害者用資料の書誌・所在情報の収集及び提供 有体物の障害者用資料や聴覚障害者向け資料(注5)など、視覚障害者等用データ送信サービスで提供できない資料の所在を明らかにし、当該資料へのアクセスを担保するため、障害者用資料総合目録の枠組みで、障害者用資料の書誌・所在情報を重点的に収集し、みなサーチで提供する。 注5 主に聴覚障害者情報提供施設で製作する、聴覚障害者用に字幕や手話の入った映像資料等を指す。 4.アクセシブルな電子書籍の導入促進等 アクセシブルな電子書籍等を提供する民間電子書籍サービスについて、関係団体の協力を得つつ整理した図書館における適切な基準(「電子図書館のアクセシビリティ対応ガイドライン」)の普及を促進し、図書館への導入を支援するとともに、関係者からの意見等を踏まえ、基準の改善に努める。 5. 外国からの視覚障害者等用データの入手及び国内で製作された視覚障害者等用データの外国への提供のための環境整備 視覚障害者等が外国で製作された視覚障害者等用データを円滑に入手できるように、所在の検索を容易にする等の方策について検討する。また、国内で製作された視覚障害者等用データの外国への提供を促進するため、視覚障害者等用データ送信サービスで提供するデータの書誌情報について、国際的な総合目録サービスへの登録を拡大する。 マラケシュ条約に基づくこれらのサービスの認知度向上を図るため、関係機関・団体と連携して普及啓発を実施する。 6.サービス人材の育成 (1)障害者サービスに携わる図書館員等に対する研修 図書館における障害者サービスのより一層の普及と充実を図るため、図書館員等を対象とした研修を実施する。 (2)当館職員の資質向上・啓発 障害者の館内利用における支援の充実を図るため、当館職員を対象とした障害者サービスに関する館内研修・啓発を実施する。研修の実施に際しては、広く職員の理解と関心を深めるため、障害当事者等、研修内容に適した講師を選定することに留意する。 また、各施設での対応事例を蓄積・共有し、知識や情報の継承を通じて資質向上に努める。 7.他機関等との連携 (1)読書バリアフリー基本計画に関する連携 読書バリアフリー基本計画に示された各施策について、同計画を所管する文部科学省及び厚生労働省、並びに視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会の構成員等の関係者と連携し、各種調整、進捗状況の共有等を行う。 (2)障害者サービス関係諸機関・団体との連携 サービス等の充実を図るため、日本図書館協会障害者サービス委員会や諸機関・団体と意見聴取等を始めとする連携を行う。 Ⅲ 実施体制 実施計画の総括は、関西館図書館協力課が行う。Ⅱに掲げた各項目については、所掌に基づき関係部局課が実施する。 Ⅳ その他 1.法規整備 この計画の実施に当たり必要となる関係法規の整備は、順次実施する。 2.計画の見直し この計画は、実施期間中においても、必要に応じ適宜見直しを行う。