本文書は、The Singapore Framework for Dublin Core Application Profiles(2008-01-14発行)を、国立国会図書館電子情報部電子情報流通課が日本語に翻訳したものです。翻訳監修者は、筑波大学大学院図書館情報メディア研究科の杉本重雄氏、永森光晴氏、本間維氏です。
このドキュメントの正式な文書は、あくまでDCMIのサイト内にある英語版であり、この文書には翻訳上の間違い、あるいは不適切な表現が含まれている可能性がありますのでご注意ください。また、リンク先は英語のページですので、予めご了承ください。誤訳、誤植などのご指摘は、国立国会図書館電子情報部電子情報流通課(standardization)までお願い致します。
日本語訳の公開日:2015年3月24日
作成者: | Mikael Nilsson KMR Group, CSC, KTH (Royal Institute of Technology), Sweden (注1) |
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作成者: | Thomas Baker DCMI (注1) |
作成者: | Pete Johnston Eduserv Foundation (注1) |
発行日: | 2008-01-14 |
資源識別子: | http://dublincore.org/documents/2008/01/14/singapore-framework/ |
置換している: | なし |
最新版: | http://dublincore.org/documents/singapore-framework/ |
文書のステータス: | DCMIの勧告 |
文書の内容記述: | 本文書は、2007年9月にシンガポールで開催された「ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議」において示された「ダブリンコア・アプリケーションプロファイルのためのシンガポールフレームワーク」である。本文書の目的は、シンガポールフレームワークのための安定的かつ引用可能な参照先を提供することである。 |
(翻訳者注1)作成者三名の所属は文書発行当時。
「ダブリンコア・アプリケーションプロファイルのためのシンガポールフレームワーク(Singapore Framework for Dublin Core Application Profiles)」は、相互運用性を最大限とするためにメタデータのアプリケーションを設計する枠組みであるとともに、再利用性を最大限とするためにそうしたアプリケーションを記述する枠組みである。この枠組みは、アプリケーションプロファイル(Application Profiles)の文書化に必要な又は有用な記述的構成要素の集合を定義し、これら文書化関係の標準と、標準的なドメインモデル及びセマンティックウェブの基盤となる標準との間の関係を述べている。この枠組みは、文書の完全性及びウェブのアーキテクチャ原則への準拠性の点で、アプリケーションプロファイルを見直す際の土台となる。
本文書は、この枠組みの要約である。今後、必要な文書を作成する際のガイドを提供する予定である。(注2)
(翻訳者注2)当該ガイドラインは、2009年に発行されている。Karen Coyle, Thomas Baker. Guidelines for Dublin Core Application Profiles. May 2009. http://dublincore.org/documents/2009/05/18/profile-guidelines/
「プロファイル(Profile)」という言葉は、ある特定のアプリケーション、機能、コミュニティ、文脈(context)で必要とされる要件を実現するために、標準(standards)や仕様(specifications)をどのように用いるかを書いた文書を指すものとして、広く使用されている。メタデータのコミュニティでは「アプリケーションプロファイル」という言葉は、特定のアプリケーションのために仕立て直された標準を示すものとして使われてきた。
2005年3月にDCMI勧告として発行された「DCMI抽象モデル(DCMI Abstract Model)」は、機械処理可能なアプリケーションプロファイルという考え方を公式化するために必要なメタデータモデルを提供している。2007年9月に、シンガポールで開催された「ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(International Conference on Dublin Core and Metadata Applications in Singapore)」において、Mikael Nilsson氏が、ダブリンコア・アプリケーションプロファイルの定義を示す枠組みを提出した 。(この枠組みは「シンガポールフレームワーク(Singapore Framework)」と呼ばれている)
標準を“プロファイルしていく(profiling)”過程では、あるコミュニティやサービスの文脈での効率性、特殊性及びローカリゼーションの要求を満たすことと、複数のコミュニティ及びサービス間の相互運用性を維持することとの間に緊張関係が生まれると予想される。異なるメタデータ標準では、別の適用レベルを規定してもよい。つまり、非常に規範的で選択やカスタマイズの余地がほとんどない標準があってもよいし、その一方で、実装の際には相当程度の選択と調整が必要となる広範な選択機能を提供する標準があっても差し支えない。
コミュニティ-又は領域特化型(domain-specific)のメタデータ標準-若しくはそれらの標準の構成部分-を組み合わせて使用できるようにするのが望ましい。メタデータ標準を実装する者が、ある特定の機能集合に必要な構成部分を集めて組み立てられるようにすべきだ。もしもこれが、異なるメタデータ標準の中から選ばれた構成部分で組み立てることを意味するならば、理想的にはこれを可能とすべきである。組み立てられた全体が、独立して設計されたアプリケーションによって正しく解釈され得ると認識しても間違いはないはずだ。この過程の説明には、“(おもちゃの)レゴセット”のメタファーが用いられてきた。つまり、アプリケーションの設計者は、彼らの要件を満たすものを構築するために、“レゴブロック”を含む“キット”がたとえ完全に独立して作られたものだとしても、異なるメタデータ標準によって提供されている“キット”の中から“レゴブロック”を選びだし、それらを“パチッとはめ合わせられる”ようになるべきなのである。
「ダブリンコア・アプリケーションプロファイル(DCAP)」で参照されるターム(terms)は、ご想像のとおり、DCMI抽象モデルで定義された用語である。すなわち、どのプロパティをステートメントの中で参照するか、このプロパティをどのように限定して使うか、-例えば語彙符号化スキーム(vocabulary encoding schemes)と構文符号化スキーム (syntax encoding schemes) の使用法を定めることでプロパティの使用法をどのように限定するか-、を記述していくのがDCAPである。アプリケーションプロファイルに関するダブリンコアの考え方では、プロパティや符号化スキームを定義、管理するのがDCMIなのかあるいは他の組織なのかは、何ら制限されない。キーとなる必要条件は、DCAPで参照されるプロパティがResource Description Framework(RDF)のプロパティの考え方と矛盾しないことである。
ダブリンコアのメタデータで記述されるタームへの参照にURIを用いることが、抽象モデルの条件である。用いられたURIが特定されれば、どんなソースから選ばれたタームでも、それらのタームに対する参照の曖昧さをなくすことができる。タームのこうした集合は、アプリケーション又はアプリケーションプロファイルが対象とするコミュニティの“語彙(vocabulary)”と見なすことができる。また、その語彙に含まれるタームを、その他多くのDCAPの語彙の中で使ってもよい。
重要なのは、アプリケーションプロファイルで用いられるタームのセマンティクスをそれらの定義で支え、その定義をどのアプリケーションプロファイルからも独立させることである。意味的相互運用性は、アプリケーションプロファイルの世界の外側で取り組まれ、それゆえにアプリケーションを超えて機能する。アプリケーションプロファイルでは、特定のメタデータレコードの集合(set of metadata records)の作成に用いるガイドライン、記述規則及び制約(constraints)の集合が述べられる。意味的相互運用性が一つ又は複数の語彙の中で定義されたタームを正しく使うことで実現されるが故に、アプリケーションプロファイルは、意味的相互運用性と同時に、高レベルな構文的又は構造的な相互運用性を提供するものとなる。
シンガポールフレームワークに従い、ダブリンコア・アプリケーションプロファイルは次の構成部分から成る文書群とする。
ダブリンコア・アプリケーションプロファイルの機能要件では、アプリケーションプロファイルが対象とする機能と同時にスコープ外となる機能を定義する。
機能要件は、内容的な一貫性の面で、又はある所与の利用にかかるアプリケーションプロファイルの妥当性への手引きの提供という面で、アプリケーションプロファイルを評価する土台となる。
ドメインモデルでは、アプリケーションプロファイルで記述される基礎的な実体(entity)及びそれらの主要な関係(relationship)を定義する。ドメインモデルの目的は、アプリケーションプロファイルのための基礎的なスコープの定義である。
ドメインモデルは、単にテキストによって、又はUMLのような、より形式的なアプローチによって表現することができる。
記述セットプロファイル( [DSP] を参照)は、一つのアプリケーションプロファイルの妥当なインスタンスであるメタデータレコードの集合を定義する。記述セットプロファイルのモデルは、現在、ダブリンコア・アーキテクチャーフォーラム(Dublin Core Architecture Forum)の中で開発され、DCMIワーキングドラフトとして進められているところである。
ダブリンコア・記述セットプロファイルのモデルは、DCMI抽象モデルに基づいて、ダブリンコアメタデータ向けのシンプルな制約言語を提供するように作られている。DSPでは、アプリケーションプロファイル、使用可能性のあるプロパティ、値の参照方法に従う記述セットによって書かれた情報資源が制約される。
利用ガイドラインは、省略可能だが、どのようにアプリケーションプロファイルを適用するか、どのようにプロパティをアプリケーションの文脈において使用するか等を記述する。
符号化構文ガイドラインは、省略可能だが、もし使う場合には、そのアプリケーションプロファイルに固有する全ての構文、及び/又は、構文ガイドラインを記述する。
このモデルは、次の図のように示される。
上の図は、ダブリンコア・アプリケーションプロファイルの構成要素が、“ドメイン標準(domain standards)”-複数のコミュニティによって広範囲に利用されるモデル及び仕様-とW3C標準であるResource Description Framework(RDF)-セマンティクスを機械処理可能とするための現在のデフォルト基盤-とに、どのように関係するかを示している。
記述セットプロファイルは、それらが特定のメタデータ集合においてDCMI抽象モデル(DCAM)の実体の使用法を特定する限りは、DCAMに基づいている。この意味で、DCAMは、メタデータレコードの構造的要素に関する広く認識されたモデルとなっている。つまり、DCAMはRDFに基づいている。
記述セットプロファイルは、主として、DCMIメタデータ語彙(DCMI Metadata Terms)のような標準的なメタデータ語彙で定義されたプロパティとクラスが用いられている。つまり、メタデータ語彙は、RDFボキャブラリ記述言語(RDFスキーマ又はRDFSとしても知られる)に基づいて表現される。
あるアプリケーションで用いられるドメインモデルは、しばしばより広範に利用されているドメインモデルに基づいている。例えば、「書誌レコードの機能要件(FRBR)」の一般的なモデルは、図書館の世界で情報資源の記述を参照する際に重要なポイントとなる。
特定の記述セットプロファイルを特定のデータ記録形式で表現するためのガイドラインは、HTML、XML、RDF/XMLのような一般的なデータ構文を用いてダブリンコアメタデータを表現する手引きとしてDCMIが発行している、各種の仕様の一つに基礎を置いてもよい。
シンガポールフレームワークはまだ未成熟であるため、これらのガイドラインに従った十分なアプリケーションプロファイルと言えるような、安定した発行事例はない。しかし、シンガポールで開催された「ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議」において、現在進行中の「eプリント・アプリケーションプロファイル (ePrints applications profile)」をシンガポールフレームワークに同調させる取組が提示された。プレゼンテーションのスライドはこちら。eプリント・アプリケーションプロファイルには、特別なWikiの構文による実験的なモデルも用意されている。(注3)
(翻訳者注3)より新しいユースケースを次のページで確認することができる。http://wiki.dublincore.org/index.php/RDF_Application_Profiles
修正履歴:
2008-11-03. ヘッダーにステータスラインを追加した。
2014-06-24. 記述セットプロファイルのウィキページのアーカイブ版へのリンクを修正した。