樞府・憲法案可決(『読売新聞』)

読売新聞 昭和二十一年六月九日

枢府・憲法案可決
審議十一回 希望意見づき

民主日本の基本法となる新憲法草案を付議する枢密院本会議は八日午前十時十分より宮中で開催、政府側より吉田総理以下和田農相を除く全閣僚、入江法制局長官出席枢府側から鈴木、清水正副議長以下、小幡顧問官を除く全顧問官ら出席、まづ潮委員長より詳細な審査報告を行ひ引きつづき林顧問官らから種々意見の開陳があつて裁決の結果多数を以て可決された、枢密院における新憲法審査委員会は前内閣の手で起案し過ぐる四月廿一日に御諮詢を奏請し第一回委員会を開催して以来八回に及ぶ審査委員会を開きさらに吉田内閣になつてから再度枢密院に草案の再諮詢を奏請、五月廿九日以来三回合計十一回にわたる審査委員会の議を経て八日の本会議に上程可決となつたもので委員会における論議の焦点は天皇制殊に第一章天皇の条章および戦争放棄の第九条に専ら集中、その他各条にわたつて質疑応答が繰りかへされたものである、特に八日の本会議における潮審査委員長の報告によると「本案はポツダム宣言を受諾した今日かかる改正はけだし適当な措置である、しかしこまかい点でなほ理想的でない部分もあるが内外の情勢上すみやかに憲法改正の実現をはかるべきものと認めたものである、しかし空前の大変革であり、従つて本案の運営に当つては政府において最善の注意と慎重な考慮を払つて誤りなきやう万全の措置を講ずることを切に希望する」と述べ希望意見を付して可決されたものである

草案の字句を訂正

政府では過ぐる四月十七日新憲法草案を公表後各条項にわたり字句の表現その他を研究の結果つぎの如く各条項に亙り字句その他の表現上の訂正を行つた(カツコ内は訂正個所)
前文第一段第三行 こゝに(ここに)
同第二段第五行 我らは、すべての国の国民がひとしく(我らは、すべての国の国民が、ひとしく)
三 内閣の補佐と同意を必要とし、内閣がその(内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その)
五 この場合には前条(この場合には、前条)
七 内閣の補佐と同意により(内閣の助言と承認により)
九2 その他の戦力の保持は、許されない。国の交戦権は、認められない。(その他の戦力は、これを保持してはならない。国の交戦権は、これを認めない。)
一五 損害その他に関する救済、公務員の罷免及び法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正に関し(損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し)
二二 両性の合意に基いてのみ(両性の合意のみに基いて)
二三 生活分野について、社会の福祉及び安寧並びに(生活部面について、社会の福祉、生活の保障及び)
三一 理由を直ちに告げられず、又は(理由を直ちに告げられ、且つ、)
三二 国民が、(何人も、)
三四2 すべての証人に対して、審問する機会(すべての証人に対して審問する機会)
三六 又同一の犯罪について(又、同一の犯罪について)
五三2 両議院は、その会議(両議院は、各々その会議)
五四1 各々議長(各々その議長)
五四2 規則を定め、院内の秩序をみだした議員(規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員)
五五3 六十日以内に議決しないときは(六十日以内に、議決しないときは)
五六1 予算はさきに(予算は、さきに)
五七 国会の同意(国会の承認)
五八 これに関する証人の出頭、証言の供述及び記録の提出(これに関して証人の出頭及び証言並びに記録の提出)
六一 内閣がこれを行ふ。(内閣に属する。)
六四1 国会の同意……。この同意については、(国会の承認……。この承認については、)
六九3 国会の同意(国会の承認)
六九4 規準(基準)
七二 司法権は、すべて最高裁判所……下級裁判所が、これを行ふ。(すべて司法権は、最高裁判所……下級裁判所に属する。)
七三 権能(権限)
七八2 政治に関する犯罪、出版物に関する犯罪(政治犯罪、出版に関する犯罪)
八三2 事後に国会の同意(事後に国会の承諾)
八四 皇室の経費……国会の同意を得……(皇室の支出……国会の議決を経……)
八六 内閣は次の年度に、(内閣は、次の年度に、)
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