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(参考)
社会党 憲法改正要綱 (二月二十四日発表)
新憲法制定の三基準
一、方針 新憲法を制定して民主主義政治の確立と、社会主義経済の断行を明示す
二、方法 総選挙後の特別議会においては特に会期を延長し、新憲法制定に当ることとす、これを憲法議会とす
三、目標 平和国家を建設するを目標とするを以て、従来の権力国家観を一掃し、国家は国民の福利増進を図る主体たることを明かにす
主権と統治権
一、主権 主権は国家(天皇を含む国民協同体)に在り
二、統治権 統治権は之を分割し、主要部を議会に、一部を天皇に帰属(天皇大権大幅制限)せしめ、天皇制を存置す
天皇統治権の内容
一、内閣総理大臣は両院議長の推薦に基き、天皇之を任命す、但し、天皇之を拒否するを得ず
二、条約締結は議会の権能に属し天皇之に署名す但し天皇之を拒否するを得ず
三、議会に於て議決せる法律の公布には天皇之に署名するの形式を経ることとす
四、内閣の申出に基き天皇は恩赦を為すの権を有す
五、天皇は国民に栄典授与の権を有す
六、天皇は外国に対し儀礼的に国家を代表するの権を有す
七、天皇は政治上の責任なし尚皇位の継承は議会の承認を得るを要す、摂政を置くには議会の議決による
議会
一、議会は天皇大権に属せざる他の一切の統治権を行使す
二、議会の権能は立法権、歳入歳出予算承認の権、行政に関する指示及監督権、条約締結に承認を与ふるの権を有す
三、議会は二院より成る、衆議院は比例代表による国民公選の議員より成り参議院に優先す、参議院は各種職業団体よりの公選議員を以て構成し専門的審議に当る
四、衆議院において二回可決せられたる法律案は参議院を拘束す
五、議会は無休とす、休会の際は代行機関をおく
六、議会は国民投票により解散されるの途を開く
国民の権利義務
一、国民は生存権を有す、その老後の生活は国の保護を受く
二、正義公平の原則に基き、国民生活の安定向上を図るは国の使命なり、そのために必要なる政策を実施す
三、国民は一切平等なり、特別身分による総ての差別を撤廃す
四、華族、位階、勲等を総て廃止す
五、言論、集会、結社、出版、信仰、通信の自由を確保す
六、国民は労働の義務を有す、労働力は国の特別の保護を受く
七、所有権は公共の福利のために制限せらる
八、国民の家庭生活は保護せらる、婚姻は男女の同等の権利を有することを基本とす
九、公民は法の定むる所により其の機能に応じ均しく公職に就くことを得
十、就学は国民の義務なり、国は教育普及の施設をなし、文化向上の助成をなすべし
内閣
一、内閣総理大臣は各省大臣、国務大臣を任命す、各大臣を以て内閣を構成す
二、内閣は議会に対し責任を負ふ内閣は議会の委託により外に対し国を代表し、行政権を執行し官吏を任免し法律執行命令を発す
三、国民投票により内閣の不信任を問はるることあり、尚枢密院は之を廃止す
司法
一、司法権は独立し裁判所之を行ふ、裁判所は法律の定むる裁判官を以て構成す
二、大審院長、大審院判事、検事総長は両院議長の推薦に基き、内閣之を任命し、他の裁判官は内閣直接に任命す
三、無罪の判決を受けたる者に対しては国家補償の途を確立す
四、死刑は之を廃止す、人権尊重の裁判制度を樹立すべし
五、行政裁判所は之を廃止す
予算、決算
一、国の歳出歳入は詳細に予算に規定し、各会計年度の開始前に法律を以て之を定むべし
二、国の歳出歳入の決算は速に会計検査院に提出し、その検査を経たる後議会に提出すべし、会計検査院長は両院議長の推薦に基き内閣之を任命す
附則
憲法を改正せんとする時は議員三分の二以上の出席及び出席議員の半数以上の同意あるを要す |