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(参考)
(秘)
東京文理科大学助教授
稲田正次
憲法改正私案
凡例
一、コノ案ハ大体英憲法ニ範ヲ採リ旧独主義ノ色彩濃キ条項ヲ改廃シタリ間米憲法ノ条項ニ傚ヒタルモノアリ
一、基本権ニ関スル規定等増補ヲ要スルモノ少カラザルモコノ案ニ於テハ改正ノ最少限ト考ヘラルルモノノミヲ掲ゲタリ
一、憲法第十一条、第十二条、第二十条等ニ付キ削除ノ説アラシモ将来主権ヲ回復シ軍備ヲ許サルベキ場合アルベキニヨリ当分死文トシテ存置シ得ルモノト思考ス
第一章
第三条 変更
天皇ノ一身ハ侵スヘカラス
国務大臣ハ凡テノ国務ニ関シテ天皇ヲ輔弼シ帝国議会ニ対シテ責ニ任ス
天皇ノ凡テノ行為ハ国務大臣ノ副署ニ因リテ其ノ効力ヲ生ス
「神聖」ノ語ハ欧洲君主国ニ於テモ新教国ノ憲法ニハ殆ド見エズ現下ノ情勢ニ鑑ミ之ヲ削ルヲ適当トス又 天皇不可侵ノ主旨ヲ明ナラシムルタメニ国務大臣ノ責任ニ関スル規定ヲ本条ニ挿入シタシ
第四条 削除
本条ハナポレオン戦争後ノ反動期ニ於ケルドイツノ主義ヲ現ハシバイエルン(一八一八)ウエルテムベルヒ(一八一九)ノ両憲法ノ条文ヲ其儘模シタルモノナリ下記ノ如ク大権事項ヲ縮減シタル以上本条ヲ存置スル要ナシ、我カ固有ノ君主制ハ第一条ヲ以テ十分闡明セラレ居レリ
第五条 変更
天皇ハ帝国議会ト共同シテ立法権ヲ行フ
英ノ君民同治ノ主義ニヨル
第八条 削除
若シ存置スルトキハ「帝国議会閉会ノ場合ニ於テ」ヲ「帝国議会ヲ召集シ能ハサル場合ニ於テ」ト改ム
第九条 削除
天皇ハ法律ノ委任ニ依リテノミ命令ヲ発シ得ルモノトスベシ但シココノ事ハ明文ヲ要セズ
第十条 変更
天皇ハ文武官ヲ任免ス
行政各部ノ官制ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 変更
第十一条ノ第二項トシテ
平時戦時ヲ問ハス陸海軍ノ編制反毎年ノ徴員数ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十三条 変更
第二項追加
同盟条約、通商条約等凡テ国庫ノ負担ヲ増シ又ハ臣民ヲ拘束スル条約ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ
第十四条 削除
第十五条 変更
天皇ハ栄典ヲ授与ス
栄典に関スル条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 変更
第二項追加
恩赦ニ関スル条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第二章
第十九条 変更
「命令」ヲ削ル
第二十八条 変更
日本臣民ハ其ノ信教ノ自由ヲ侵サルルコトナシ
第三十条 変更
日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ請願ヲ為スコトヲ得
第三十一条 削除
第三十二条 削除
増補
第 条
平時戦時ヲ問ハス日本臣民ノ有スル人身信教言論著作印行集会結社其ノ他ノ自由ヲ不当ニ侵害スル法律ハ制定セラルルコトナシ
米憲法増補第一条参照
第 条
日本臣民ノ一部ニ特権ヲ附与シ其ノ他臣民ヲ差別待遇スル法律ハ制定セラルルコトナシ
米憲法第一条第九節第八号同第十節等参照
第三章
第三十三条 変更
「貴族院」ヲ「元老院」(又ハ参議院)ト改ム
第三十四条 変更
元老院ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス
別ノ法律ヲ以テ間接選挙ニヨル地域代表議員(仏一八七五憲法ニ傚ヒ地方議会議員ヲ以テ選挙母体ヲ構成スベキカ)ト職能代表議員ヲ設クベシ
第三十五条 変更
衆議院ハ直接普通及平等選挙ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス
選挙ニ関スル条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第三十七条 変更
凡テ臣民ニ負担ヲ課シ又ハ臣民ノ権利若ハ自由ヲ制限スルノ条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第三十九条 削除
第四十条 削除
但書ヲ削ル
第四十三条 変更
「臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テ」ノ中「緊急」ヲ削ル
増補(第四十三条ノ次ニ置ク)
第 号
帝国議会ハ常会及臨時会ヲ通シ毎年少クトモ六ケ月間開会スルコトヲ要ス
第四十五条 変更
「五ケ月以内」ヲ「一ケ月以内」ト改ム
第四章
第五十五条 削除
条文ヲ訂正ノ上第三条中ニ挿入ス
第五十六条 削除
枢密院ハ主トシテ皇室ニ関スル重要事項及大権事項ニ付詢議スルタメニ特設セラレタルモノナルモ是等ノ事項ガ概ネ議会ノ関与スルトコロトナリタル以上ソノ存在ノ理由ナシ
第五章
第五十七条 変更
第三項追加
大審院ハ事件ノ審判ニ当リ法律ノ憲法ニ適合スルヤ否ヲ決定スルコトヲ得
一八〇三以来ノ米大審院判決例ニヨル
第六章
第六十二条 変更
但書ヲ削ル
第六十五条 変更
第二項追加
元老院ハ予算ノ全体ニ付キ可否ヲ決シ修正ヲ為スコトヲ得ス
第六十七条 変更
「憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出」ヲ削ル
第七十条 削除
第七十一条 削除
第七章
第七十三条 変更
第三項追加
憲法改正ノ発議ハ両議院モ之ヲ為スコトヲ得
第七十四条 変更
第一項中「経ルヲ要セス」ヲ「経ルヲ要ス」ト改メ第二項ヲ削ル
典範ノ改正ハ議会ノ同意ヲ要スベシ
第七十五条 削除 以上 |