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憲法改正に関する輿論調査報告(二〇、一二、一九)
情報局輿論調査課
既に内大臣府では廃止に先立つて憲法改正に関する奉答案を奏上し、政府の憲法問題調査委員会また審議を進めてゐるが、今回輿論調査課は共同通信社調査部に憲法改正に関し輿論調査を委嘱し全国支社局を通じて各府県に於ける社会各層の意見を徴せしめた。
今回の調査に当つては全国一道二府四十二県(東京都及び沖縄を除く)に於ける財界、労働者、俸給生活者、中小商工業者、地主、自作農、小作農の代表を各支社局に於いて選定
一、憲法改正の要ありや否や
二、改正に当り積極的に主張すべき要点
三、現行の改正手続を可とするや否や
の三点につき意見を求めた。報告は一道二府三十八県(四県未到着)二百八十七件に及び、報告集計の結果は憲法の改正を必要とするものが二百十六件、総報告件数の七割五分の圧倒的割合を示し、不要とするもの三十八件、無関心乃至無回答のもの三十三件であつた。改正の要点については天皇の大権を制限、議会の権限増大を主張せるものが七十件で第一位を占め、これに次いで貴族院の廃止乃至改革五十七件、民意を尊重、濫用を防止すべしとなすもの四十一件、人民の権利拡張、自由を保障すべしと説くもの三十二件の順位で件数こそ多少落ちるが主権在民を主張するものが十四件を算し、労働者、小作農にその機運が濃厚なるは注目を惹く。天皇制については積極的に堅持乃至存置を主張するもの三十三件、反対に天皇制の廃止を唱へたものが中小商工業者、労働者及び小作農代表に各々一件あつた。憲法改正手続については現行の方式を可とするものが百一件、不可とするもの九十六件、うち積極的に民定憲法(国民投票の提唱を含む)を希望するもの六十二件に及び俸給生活者、労働者、小作農の各層にその声が高い。詳細左の如し。
○憲法改正を必要とするや否や
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要 |
不要 |
無関心乃至無回答 |
財界 |
三一 |
八 |
二 |
労働者 |
三〇 |
三 |
八 |
俸給生活者 |
四〇 |
一 |
― |
中小商工業者 |
三三 |
四 |
四 |
地主 |
二六 |
一二 |
三 |
自作農 |
二八 |
五 |
八 |
小作農 |
二八 |
五 |
八 |
計 |
二一六 |
三八 |
三三 |
○現行改正手続を可とするや否や(括弧内は民定憲法を主張するもの)
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可 |
不可 |
財界 |
二〇 |
一一(四) |
労働者 |
八 |
一九(一四) |
俸給生活者 |
一九 |
二〇(一五) |
中小商工業者 |
一七 |
一四(七) |
地主 |
一六 |
七(四) |
自作農 |
一四 |
九(五) |
小作農 |
七 |
一六(一三) |
計 |
一〇一 |
九六(六二) |
〇改正に当り積極的に主張せる要点
一、天皇の大権を制限、議会の権限を拡大
(俸給生活者十九件、財界十三件、労働者、自作農、小作農各八件、中小商工業者、地主各七件)
二、貴族院の廃止乃至改革
(俸給生活者十五件、労働者、財界各十件、中小商工業者八件、小作農七件、地主四件、自作農三件)
三、民意を尊重、濫用を防止、天皇と国民を直結
(俸給生活者十件、財界、中小商工業者各八件、自作農六件、労働者四件、小作農三件、地主二件)
四、人民の権利拡張、自由を保障
(財界十件、労働者、俸給生活者、自作農各五件、小作農四件、中小商工業者三件)
五、主権在民
(労働者五件、小作農四件、中小商工業者、地主各二件、自作農一件)
六、英国式憲法
(中小商工業者三件、俸給生活者二件、労働者、地主、自作農、小作農各一件)
七、天皇制を堅持乃至存置
(自作農七件、財界、地主各六件、小作農五件、労働者、俸給生活者、中小商工業者各三件)
八、天皇制撤廃
(労働者、中小商工業者、小作農各一件) |