山中弘「組合の移民取扱に就いて」 『農業と協同』 コペルコチア 219号 1955年7月 <移(一)-Z147> (文中に引用)
昭和三十年度コチア産業組合単独青年雇傭移民の第一次募集要項
一、現地斡旋機関及引受責任者
コチア産業組合 専務理事 下元 健吉
右国内代理人 荷見 安
(全国農業協同組合中央会・長 コチア産業組合農協対策委員会委員長)
二、第一次募集人員 二五〇名(昭和三十年度送出数五〇〇名)
三、送出予定時期及び人員 第一次送出予定一二五名を昭和三十年七月下旬アメリカ丸にて送出
四、資格条件
(1) 義務致育を卒えた満十八歳以上二十五歳未満の未婚の男子で、現在農業に従事している農家の二、三男で、特に扶養の義務を負わない青年であること。
(2) 伝染病疾患特にトラホーム、ライ病、肺病、慢性胃腸障害、腺病体質、精神病、遺伝性疾患、盲聾唖、義眼、不具癈疾(小児麻痺によるもの手足及び指の切断しあるもの、並びに先天性又は後天性畸形)等ブラジル国の忌避する疾患を有せず身体強健にして農業労働に耐え得るものであること。
(3) 思想堅実で犯罪その他反社会的行為をしたことのないこと。
(4) 性質実直で他と調和性に富み特に左記性格者でないこと。
イ、盗癖及び暴行癖のあること。
ロ、酒色におぼれ易いこと。
ハ、隣人友人より忌憚されるようなもの。
二、誇大妄想にふけり徒らに口論を好むもの。
ホ、意志薄弱で実行力のないもの。
へ、判断力が劣り行動不敏活なもの。
(5) ブラジルに永住の目的で渡航すること。
(6) 船中並びに上陸後当座の小遣以外の携行金は必要はない。
五、義務
(1) 移民は渡伯後コチア産業組合の指示する農塲において組合員である雇主の命ずる労働に最低四ヵ年就働しなければならない。
(2) 移民は雇主との間に締結した契約期間中に退去する場合には雇主の被る損害を弁償しなければならない。
(3) 渡航費は雇傭移民の貸付条件に従い貸し付けることとし、年利五分五厘一年据置五ヵ年均等年賦により償還するものとする。
六、就業条件
(1) 給料は移民の配置される地方の一般農業雇傭賃銀に準じて支払われる
(2) 住居は雇主(組合員)が無料で与える
(3) 雇主は移民に対し公休日叉は降雨日を除く外就働すべき作業を与え、若し雇主の都合により労働が中止された時は賃銀を支払う。
(4) 移民が給料制(日給又は月給制)で就働する塲合作業中に負傷し又は作業のため健康を害したときは雇主の負擔で治療し且つ休養中の賃銀を支払われる。
(5) ブラジルの上陸港より移民の配置先に至る輸送及び宿泊に要する費用は組合の負担とする。
七、募集及び推薦の方法
(1) この移民は一般南米行計画移民と同様に府県海外協会(又は府県)が募集を行い、適格者を日本海外協会連合会(以下連合会という)に推薦するものとするが特に現地斡旋機関たるコチア産業組合の要請により適格者の人物選定は、市町村農業協同組合(以下市町村農協という)が行うことになつたので志願者は所定の志願書類を添えて所在の市町村農協に申込を行うこと。
(2) 市町村農協は移民志願者について資格条件、家族の状況等を充分調査の上府県農協中央会を経由し府県海外協会(又は府県)に推薦すること
(3) 府県海外協会(又は府県)は右の推薦に基き府県農協中央会と協議の上地域内の志願者につき面接の上健康状態その他人物等について考査を行い適格者を連合会に推薦するものとし左記書類を所定の期日迄に連合会に提出すること。
イ、選考調書(写真添付) 二通
ロ、戸籍謄本 二通
ハ、健康診断書 三通
ニ、市町村長の現に農業に従事しあることの証明書 三通(様式別添)
ホ、市町村農協組合長推薦書 一通(様式別添)
へ、身元保証書 三通(様式別添)
ト、予備質問書 二通(様式別添)
八、推薦書類提出期日
昭和三十年五月末日までに連合会に必着のこと。
九、最終決定
府県海外協会(又は府県)の推薦せる適格者についての最終的決定は外務、農林両省の指示のもとに連合会がコチア産業組合移民農協対策委員会と協議の上決定する。但し、合格決定後といえども事実に相違或は不適格と看做されるものについては合格を取消すことあり。
一〇、教養及び講習
最終的に合格が決定した者に対しては、別に定める要領により連合会が行う教養及び講習をうけること。
一一、其の他
(1) 学校卒業後間のないものは成るべく学校長の推薦書をも取付けて置くこと。
(2) 今後引続き第二次募集を行う予定であるが、その時期等についてはおつて通知する。
添付書類
(1) 身許保証書 様式(一)
(2) 市町村長の農業者証明書 様式(二)
(3) 市町村農協組合長推薦書 様式(
(4) 予備質問書様式 様式(
(様式一)
身許保証書
今回コチア産業組合導入計画により 某が、ブラジル国へ移住するに当りその身許が確実であることを保証するとともに、本人が上陸後、四ヵ年間理由なくして契約を履行せす、農業労働を拒否し、或は犯罪並に伯国国家に好ましからざる者として処分せられるが如き行為のため、雇主並にコチア産業組合に対し迷惑を及した時は本人に代りその損害を賠償するものであります。
尚、右損害賠償は現地日本領事館の認証があつた場含、当時の為替換算により相当額の日本貨をもつて、日本海外協会連合会を通じ遅滞なく支払うものであります。
一九五 年 月 日
何 某
保証人
同
コチア産業組合 御中
(この保証書は四通作り、一通は推薦農業協同組合、一通は日本海外協会連合会、一通はコチア産業組合移民農協対策委員会、一通はコチア産業組合に保管されるものとす)
(様式二)
証明書
(現住所)
(氏 名)
右の者は義務教育を卒え、現在もつぱら農業に従事し、且つ農業労働の経験を有することを証明致します。
昭和三十年 月 日
市町村長名 (印)
殿
(コチア産業組合宛に一通他に写二通)
(様式三)
予備質問書
移民応募者は、左記の事項に封し、自己を偽ることなく明確に応答、記入すること。
◎ 貴方はブラジルヘ行つて農業に専念できますか。
△ 答
◎ ブラジルの農業は日本よりもきつい労働かも知れないが、アチラの日本人やブラジル人に負けない丈の仕事が「体力的」にできる自信がありますか。
△ 答
◎ ブラジル農村の食生活は、米、豆、トーモロコシ、マンヂオカ粉、パン等を主食とし肉はあるが鮮魚は少ないという生活ですがそれでよいと思いますか。
△ 答
◎ブラジルは土地が広いので隣りが遠く、又町も遠いのでめつたに町に出ることもなければ隣同志の交際も日本のようにはできないし、映画や芝居等を観るとか娯楽面も尠いのですがしんぼうできますか。
△ 答
◎ ブラジルの農家は未だ電燈のない家が多く、文化程度も低いかも知れないが、我慢しますか。
△ 答
◎ 異国へ出ると誰もが郷里が恋しくなってホームシツクにかかるものですが貴方はそれを克服しますか。
△ 答
◎ 異国へ移住した当座は言葉が通ぜす事情も不案内で色々不便をするのですが、それを克服できますか。
△ 答
◎ 結婚する迄、性問題を我慢しておらなければならないと思うがしんぼうしますか。
△ 答
◎ 契約期間中は余分に金儲け等はできず、給料や報酬を節約して借りた渡航費を払わなければならないが、その覚悟がありますか。
△ 答
◎ 上陸後四年間はどんなことがあつても農村で働かねばならないが、しんぼうして働きますか。
△ 答
◎ ブラジルは永住する覚悟で焦らず働かねば成功ができない処ですが、その決心がありますか。
△ 答
◎ 父母、又は保護者が貴方の移住に賛成ですか。
△ 答
◎ 貴方の家はどんな作物を作つておりますか。
△ 答
◎ 貴方はどんな仕事「作業」が得意ですか。
△ 答
◎ 貴方は自動車やトラツトールを使つたことがありますか。
△ 答
◎ 貴方はどんな趣味をもっておりますか。
△ 答
右の記載事項に相違ないことを誓約致します。
一九五 年 月 目
県 郡 村
応募者
生年月日 年 月 日
(この応答は三通を作り、一通は推薦農業協同組合、二通はコチア産業組合に保管されるものとす)
(様式四)
推薦書
(現住所)
(氏名)
右の者は次に列挙する諸条項により厳正に審査の結果、コチア産業組合移民適格者と認め推薦致します。
一、現住所農業に従事し、且つ熱心なるもの。
二、二、三男であって、現在扶養の義務を負わないもの。
三、渡航について、父母又は保護者が反対しないもの。
四、二人以上の確実な身元保証人をたて得るもの。
五、性質実直で他と調和性のあるもの。
六、左記の性格を有しないもの。
イ、盗癖及暴行癖のあるもの。
ロ、酒色におぼれ易いもの。
ハ、隣人友人等より忌憚されるようなもの。
ニ、誇大妄想にふけり徒らに口論を好むもの。
ホ、意志薄弱で実行力のないもの。
へ、判断力が劣り行動不敏活なもの。
一九五 年 月 日
(農業協同組合長名)
(印)
コチア産業組合 御中